???日目4
戦場に立つのはフロシュエルとガブリエル。
他のメンバーは離れた場所で二人を見つめていた。
ハニエルだけはニタニタと笑みを浮かべている。これから起こることを半ば予想済みなのである。
「では、始めッ」
ミカエルの声で開幕一番ガブリエルが光の矢を放つ。
「速攻ですか!?」
驚くフロシュエルにガブリエルは真剣な眼で告げた。
「初撃は防ぐか避けるか、それくらいできなければ天使として不要です」
あれ? そんな厳しかったっけ? ハニエルが小首を傾げながらミカエル達に視線を送る。ミカエルもウリエルもラファエルも小首を傾げる。
ガブリエルさんさっさと倒すことにしたらしい。
ただ、残念ながら既に展開されていた透明化プリズムリフレクションにより難なく弾かれる。
「なっ!?」
「それじゃ、こちらも参ります、ホーリーアロースプレッド」
出現と同時に拡散するホーリーアロー。
プリズムリフレクションに驚いていたガブリエルは更なる想定外に思考を停止させる。
それでも大天使長として、なんとか飛翔して回避。
が、その一瞬でフロシュエルの姿を見失った。
「消えた? いえ……そこか!」
光の矢を虚空に向け打ち込む。
誰も居ないように見えたが空気が揺らいで光の矢が跳ね返ってきた。
「光学迷彩なんて何処で覚えたのだかッ」
「これは風魔法と光魔法の合わせ技です。行きます! 七色拡拳!」
光の盾でぎりぎり受け止める。
接敵したフロシュエルの一撃が光の盾に激突。七色の光を迸らせる。
「これは!? 各属性神聖技を乗せている!?」
衝撃に逆らうことなく吹き飛ぶガブリエル。
態勢を立て直し。必殺の一撃を打ち放つ。
「クレッシェントムー……!?」
「インフレーションホーリーアロー」
しかし、間髪入れないフロシュエルの矢が彼女に向け放たれていることに気付いた。
慌てて必殺をキャンセルする。
ただのホーリーアローならともかく、インフレーションという言葉がガブリエルを慎重にさせたのだ。
案の定。放たれた時よりも強化されたホーリーアローが間横を通り過ぎる。
光の矢を連射しながらフロシュエルをけん制する。
しかしフロシュエルはこれを目視で避けていく。
あるいは掠ることもあるがプリズムリフレクションが弾いてしまう。
これはさすがに硬過ぎる。
「深淵装甲」
ゾクリ、全身の毛が逆立つ感覚がガブリエルを襲った。
連射していた光の矢が突然フロシュエル一歩手前で消え去る。
「行きます! 深淵反射。アビスアロー!」
暗色の緑色に変化した光の矢がガブリエル本人へと返ってくる。
咄嗟に盾を展開したガブリエルに、ハニエルが叫ぶ。
「ガブリエルっ、それ貫通するから!」
「先に言ってくださいッ」
ぎりぎりで盾を残して回避するガブリエル。
残った光の盾がやすやす貫かれ、深淵矢が通過していく。
「って、ハニエル様、言っちゃったら避けられるに決まってるじゃないですか!?」
フロシュエルが抗議するがハニエルは無視する。
そもそも伝えておかないと今ので天使長殺しをフロシュエルが行いかねなかったのだから、正しい事をしたことに代わりはない。
そんな命に危機に陥っていたことに気付いていないガブリエルは態勢を整えるために地面に着地する。
「待ってましたその瞬間! マッドフィールド」
「なっ!?」
地上化していた天界の大地が泥沼化する。
雲の中に足が入り込む感覚に驚くガブリエル。
その驚きの間に、フロシュエルは仕込みを済ませていた。
「音速落下の……」
フロシュエルの言葉にはっと顔を上げる。
その視界の先に、空を埋め尽す程の光の矢。
「光の矢束!!」
「う、嘘でしょぉ――――っ!?」
ぐっと拳を握るフロシュエル。
それを合図に無数の光の矢がガブリエル向けて殺到する。
見習い天使では行うことなど不可能な一撃を見せられ、ガブリエルの絶叫が轟いた。
「「「いやいやいや、アレは無理」」」
ミカエル達が思わず告げる。
ハニエルに詰め寄る三人がどんな魔改造したのかと叫ぶ中、ガブリエルの居た場所で盛大な爆散が起こったのであった。
ただし、フロシュエルは敵の敗北が確定するまで警戒を解かずに次弾を装填している。
いつでも奇襲されても迎撃可能な状態で待機しているのだ。
ただ、ガブリエルは必死に現状から生き抜くことしか考えていなかったため一気に聖力を無駄遣い、全てが終わった中心で、膝をついて荒い息を吐いていた。
「し、死ぬかと、本気で死ぬかと思った……」
「次、行きますっ天使之制さ……」
「ギブアップッ! ギブアップですッ!!」
ガブリエルの心からの叫びが轟いた。