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天使見習いフロシュエル物語  作者: 龍華ぷろじぇくと
四日目・ノーマルルートA
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二十五日目4

 部屋からゆっくりと脱出する。

 人影は見当たらない。

 どうやら一度見逃されたら問題無くなるトラップだったようだ。

 正直、自分一人だったら確実に発見されていただろう。

 今回リフレクトキングスライムが居てくれたからこそ見付からずに済んだのだ。


 右側は階段側から一、三。左側は階段側から五の扉が残っている。

 何処から調べようか? 何処を調べようか?

 そう思っていると、階下からハニエルがやってくる。

 悲鳴が聞こえたことからブエルはまた勢い余って階段から天井落下トラップ部屋へと突っ込んだようだ。


「あらフローシュ、あんたまだ居たの?」


 ブエルの悲鳴が聞こえたせいか、ハニエルが立ち止まる。


「はい。タイムアタックはしてませんのでゆっくり探索してます」


「そう。だったらいいこと教えてあげるわ。右側の一番目は宝箱が一つだけよ。ミミックで一度やられたから大事を取って開けては無いわ。それから三つ目のドアは今攻略中。少しでもミスったらダストシュートなのよ。めんどくさい」


「はぁ」


「とりあえず、そろそろ別のドア調べようかしらね」


 と、さっきフロシュエルが入った五番目の部屋へと入っていく。

 あっと気付いた時には既に扉の中に入った後だった。

 すると、左の一番前の部屋から真っ黒な人型生物が現れる。


「チッスフローシュさん」


「あ、やっぱり野中妹さん」


「いや、妹さんって、それ名前じゃないからね。まぁいいや。とりあえず、次は絶対に見付けるんだからっ」


 一瞬焦ったフロシュエルだったが、彼女が脅かす対象は今回ハニエルのようだ。

 先程フロシュエルが体験したことを、今度はハニエルが体験する羽目になったらしい。

 ガチャガチャとドアノブ鳴らす音に室内から悲鳴が轟く。


 ドバンっと乱暴にドアを蹴り破った野中妹が、タイムアタックし続けるハニエルに恨みをぶつけるようにゆっくり、室内に入っていく。

 うん。まぁ、いいや、見なかったこと、聞かなかったことにしよう。

 右側の一番目に入ったフロシュエル。目の前に鎮座している宝箱の元へと向かった瞬間、ハニエルの絶叫が木魂した。


 さて、スラさん、天井に引っ掴まって私の腰に縄みたいに巻きついてください。と指示を与え、ゆっくりと宝箱を開く。

 もしも野中姉が現れるようだったなら、即座に引き上げてもらい、逃げるつもりだったのだが、残念ながら、いや、むしろなんの問題も無くが正しいのだが。

 宝箱の中にあったのは鍵が一つだけだった。


「ある意味これは悪辣ですね」


 なんで? とスライムから疑問が来る。


「だって別の場所でミミックを見せられているんですよ。何かの罠があってしかるべきと思っている宝箱が入口間横の部屋に入っているんです。見付けても後回しにするのが普通でしょう。他の部屋になくて仕方なく調べる、みたいな?」


 そうなのだ。実際フロシュエルだけでこの宝箱を見付けてしまったら、開けるのは一旦止めにして別の部屋を調べていただろう。トラップだらけの部屋ばかりだ。おそらく事実に気付くまで4日くらいの日数が掛かるだろう。正解の部屋はこの宝箱部屋だってことに。


 目的地に辿りつくなら出来るだけ日数は少ない方が良い、その邪魔をするために時間一杯まで粘るための工夫が様々に施されているようだ。

 鍵を手に入れフロシュエルは部屋を出る。

 丁度黒い人型が五つ目のドアから出て来た所だった。


「お、鍵手に入れてる」


「ハニエル様どうなりました?」


「今頃水の中でしょ。ちゃんとダストシュートに放り込んだから大丈夫よ」


 気絶してたらそのまま溺死しかねないのだけど、その辺りは大丈夫なのだろうか?

 まぁハニエルだし死ぬことは無いと思うけど。


「んじゃねー。頑張って。あ、私の居るここが管制室だからここは絶対入れないよ」


 と、立ち去る野中妹。

 彼女の後姿を見送って、フロシュエルはドアに鍵を入れて行く。

 ガチャリ、開かれた扉は左側二番目のドアだった。


 フゥッと深呼吸を行いドアを開く。

 即座にドアを閉めた。

 ドア越しに背中を預け、唐突に高鳴る心臓が収まるまで待つ。

 全身から嫌な汗が噴き出た。


 あれは無い。

 正直一瞬見た瞬間、無理。と即座に諦めたのである。

 目の前に現れたのは巨大な骨だった。

 ただの骨格標本であればよかった。動いていなければ。


 その姿、床から天井まで。横幅、視界一杯。

 そんな大きさの恐竜骨格が滑らかな動きで部屋に居た。

 闘う以前に迫力に呑まれて動くことすら出来そうにない。というか室内にあんなのが居る時点でおかしいとしか思えない。


「な、なんでしょうねー、あ、あれ?」


 震える足を胡麻化すように何でもない風を装った声を出してみる。

 上ずっていたため彼女が動揺しているのがスライムにはよくわかった。

 しかし、それは小首を傾げざるをえない。

 何しろフロシュエルは、魔王すらも唸らせる実力者。なぜ魔力も無い骨のドラゴン程度に怯えねばならぬのか、と。

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