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天使見習いフロシュエル物語  作者: 龍華ぷろじぇくと
四日目・ノーマルルートA
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二十四日目4

「あんたにゃこれから試練が降りかかる」


 手を握られた瞬間、覚が告げたのはそんな言葉だった。


「試練、ですか」


「まぁ小影ちゃんによる試練だがな。いいか、疑うことを覚えなさい、信じることを覚えなさい。絶望の中にこそ希望がある。それを決して忘れぬように。あとな、その必殺技名はねぇわ」


「はうっ!?」


 ひそかに考えていた新技の名前を知られたようだ。思わず顔が赤くなる。


「どんな廚二病ネームだよ。そりゃねぇよ。流石にそれ真顔でいいだしたら周囲引くぞ。顔が可愛くても残念属性だといい男はモノに出来ねぇぞ」


「いえ、男性を求めてはいないのですが」


「何しろほろ……」


「わあああああああああああああああああっ」


 慌てて大声を出すフロシュエル。

 意地の悪そうな顔でくっくと笑った覚は後ろで待っていた待ち人へと視線を向ける。


「おーし次の奴、待たせたな。ほら、嬢ちゃんがんばりな」


 覚にそんなことを告げられ送り出される。

 結局何のために彼と出会い心を読まれたのか意味が分からない。

 何か理由があったんだろうか?


「あの、小影さん、今のはどういう理由……小影さん?」


 気が付けば、小影が見当たらない。


「お、そこの可愛い子どったのー?」


 きょろきょろしていると、軽薄そうな男が近づいてくる。

 仲間だろうか、三人組みでスキンヘッドにサングラスの男と少し太り気味のそばかす塗れの男が一緒に居た。

 一瞬びくりと身を竦ませるが、三人は妙に親しげに真摯に心配する様子を見せて来た。


「もしかして迷子? 誰かと一緒に来たの?」


「え、ええと、はい、知り合いと……」


「それどういう容姿?」


「えっと、赤い髪で……」


 小影の容姿を思いつく限り上げていく。多少本人が聞けば不愉快になりそうな言葉も混じっていたが男達はその容姿を聞くなりニヤリと笑みを浮かべた。


「それ、俺ら知ってるかも」


「え? ほ、本当ですか!?」


「おー、なんか向こうに歩いてくの見たぜー」


「俺らが案内してやるよ」


「こっちだ着いて来な」


 フロシュエルが男に付いて歩きだす。するとスキンヘッドと小太りがフロシュエルの左右に陣取り歩きだした。


「君、名前は?」


「え? ふ、フロシュエルといいます。皆さんはフローシュと呼んで頂いてまして……」


「へーフローシュちゃんか、外国人かな?」


「髪サラサラだねー、俺好みだよ」


 私はちょっと遠慮したいです。

 無遠慮に近づいて来た小太りな男に苦笑いする。

 鼻息が荒いので少々近づきがたいのだ。


 やがて四人は人気のない場所へと向かって行く。

 こんな所に小影さんが? 一瞬疑問が脳裏に過ぎるが、小影なら行きかねないので危機感にまでは至らない。

 そして、行き止まりに辿りつく。

 当然、小影の姿は欠片も無かった。


「あの、誰も居ませんが」


「みたいだな。当然だけど」


「そりゃそーだろ。そのつもりだし」


「え?」


 突然サングラスの男に手で口を塞がれる。

 驚くフロシュエルを小太りの男が足払いで倒し、軽そうなチャラ男がニヤついた顔で近づいて来た。

 何かを言おうとするが口が塞がれているフロシュエルには何も告げられない。


「ぶぁっかかよ。こんな簡単な手に引っ掛かるとか今時いねぇよ。ここじゃ泣こうが喚こうが誰も来ねぇからなぁ、俺らと楽しもうぜぇフローシュちゃぁん」


 ヤバい。全身が危機感に緊張する。

 両手は既に二人に拘束されており、足はチャラ男が両手で拘束してしまった。

 逃げ場は無く、移動も不可能。スキルを唱える口も塞がれている。


 これが人間、コレが罪悪。

 かつて無い状況にフロシュエルはパニックになる。


選択肢L:

   → 落ち付け私

     全力排除しなきゃ


 正直な話、相手はたかが人間だ。その気になればチート天使であるフロシュエルにとっては何のことは無い脅威だ。

 だから全力で排除しなければ、そう思ってふと、我に返る。

 全力で排除するのは良いが、それで相手を殺してしまっては堕天の極み。

 天使としてやるべきは……


 肉体強化を発動させる。

 両手に力を入れて男二人の頭をぶつけ、上半身が地面に着いた瞬間、そこを支点に両足を持ち上げチャラ男を持ち上げる。


「お、おお?」


「天罰ですっ」


 男二人が顔を突き合わせている場所向けて、チャラ男の頭を叩き付けた。

 拘束が緩んだので即座に脱出する。

 痛みによろめく男達三人に向け、断末魔作成拳を……


「はーいそこまで」


 放つ直前で背後から小影の声が聞こえたので寸止めした。


「ちょっとだ……」


 寸止めのつもりだったけど秘孔を半分ほど突いてしまったようだ。小太りの男が妙に色っぽい声で意味不明な断末魔を上げかけていた。

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