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天使見習いフロシュエル物語  作者: 龍華ぷろじぇくと
四日目・ノーマルルートA
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二十四日目1

「フローシュ起きなー」


 不意に声が聞こえて意識が覚醒した。

 寝ぼけ眼で「ほぁっ」と起き上がる。

 涎がぼたりと服に落下した。


「うっわ、寝相悪っ」


「あへぇ?」


 何やら隣から声が聞こえたので振り向く。ベッド脇で小影が呆れた顔をしていた。


「お、おぅ? 小影すわん?」


「テリタマ食べに行くわよ。ほら、起きた起きた」


 てりたま? 寝ぼけた頭で必死に考える。

 そう言えば昨日そんな事を言われていたような気がする。


「ほら、起きて顔洗って来る」


 促されるままにベッドから降りてふらふらと歩く。

 階段気をつけなさいよー。と言われふぁいと返事をし、ふらふらよたよた、ずるっ、ごろごろごろどさっ。


「ぎゃふんっ!?」


「フローシュ!?」


 回復を咄嗟に行う。

 折れた頸椎が即座に治る。

 今のはヤバかった。そして衝撃で完全に眼が覚めた。


「ちょ、生きてる!?」


「今の死んだと思いました……回復使えて良かったです」


「おバカ! こんな階段落ちで死なないでよ寝覚めが悪いっ」


「ええーっ!? 少しは私の心配してくださいよ!?」


「フローシュの心配より葬式で使われる金の方が心配だっつーの。絶対死ぬな私が損する」


「ひどっ!?」


 起き上がり違和感の有無を確認する。

 もともと天使なので受肉した身体が死んでもフロシュエル自体に致命的なダメージにはならないのだが、折角の肉体が使えなくなるのは大問題だ。


「どう?」


「問題なしです。しかし、人間って怖いですね。階段から落ちただけで死ぬ可能性もあるんですし」


「そりゃそうよ。人間の体なんて精密機械みたいなものだもの、ちょっとの衝撃ですぐに死ぬわよ」


「うわーお」


「フローシュも気を付けてよね。魔力障壁とか身体強化切れた状態だと人間すぐ死んじゃうから」


「肝に銘じておきます。身体強化は常に掛けるようにしとこっと」


「それがいいでしょうね」


 顔を洗って準備完了。朝ご飯は抜きらしい。

 ブエル達も居ないので小影と二人家を出る。


「今日は学校ないんですか?」


「ええ。その辺りは気にしなくていいわ。折角だから今日はフローシュの修行見学でもしようかな」


「そうですか? えっと今日の予定は朝のうちにしたたかさの訓練、昼からはピクシニーさんたちと訓練になってます」


「したたかさ? なんじゃそりゃ」


 街中を小影と二人で歩く。

 随分とこの街並みにも慣れて来た。

 フロシュエルとしても街中は未知の不安な場所ではなく、日常的な落ち付きのある場所として認識が変わりつつあった。


「平和って、いいですね」


「いきなりどうしたフローシュ。耄碌するには早すぎない?」


「耄碌っ!? いえ、地球って平和だなぁって思いまして」


「まぁこの近辺は私とか正義の味方みたいな活動してるの多いからねー。日本はまだ安全なほうでしょうね」


「そうなんですか」


「ええ。他の国だとまだ紛争中の所とかあるし、日々の食事に困ってる国だってあるもの、その点日本は恵まれすぎね。コンビニなんて毎日廃棄弁当捨てまくってるし、その分だけでも貧しい国にあげればいいのにね」


「輸送費大変じゃないですかね?」


「まぁ、そこまでは私責任持てないし? なんなら日本の孤島にでも難民島造って廃棄弁当配りまくればいいんじゃない。年間何人救われることか」


「うわー、適当言っちゃってますね」


「私の金が問題にならないなら適当でいいのよ」


 どうでもいい世間話に花を咲かせながらやってきたのは、ハンバーガーショップだった。

 初めて入る場所に興味深々のフロシュエルは店内を見回し、それに苦笑しながら小影が率先して店内へと入る。


 小影が入って行ったのでフロシュエルも慌てて後を追った。

 小影はカウンターに向かうと、慣れた様子で商品を頼んでいく。フロシュエルも商品を眺めていたが、彼女が何かを頼む前に小影は会計を始めてしまった。

 そのまましばし、引換券を持ったまま二人で待機する。


 初めての場所なのでドキドキしているフロシュエル。

 ワクワクしながら待っていると番号が呼ばれ、小影がトレーに載せられたものを回収、そのまま店内のテーブルへと向かう。

 フロシュエルは小影の後を付いて行き、開いている席に座る。


「ほいよフローシュ」


「おお、コレがテリタマ?」


「そうテリタマ。私はチーズの方が好きだからこっちだけどねー」


「ほへー、あ、包装紙を半分だけ開いて食べるんですか。ほー、考えられてますね」


「食べ方は自由だけどこっちの方が汁とか落ちないからね。ほら、そのバーガー結構汁でるからさ、やり方見せて食べてあげたのよ」


 わざとやったと告げられてフロシュエルは感謝を覚える。わざわざフロシュエルが食べやすい食べ方を見せてくれたようだ。

 フロシュエルはテリタマにかぶりつきながらふふと笑みを零すのだった。

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