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天使見習いフロシュエル物語  作者: 龍華ぷろじぇくと
四日目・ノーマルルートA
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二十三日目5

 ロストによる召喚。

 魔法陣が校庭に現れ、その悪魔がせり出てくる。

 現れたのは……三つ首の竜だった。


「ぎゃあぁドラゴン!?」


「バラウールだ。雲、霞、地下水を支配する邪竜さ」


 バサリ、現代に舞い上がったドラゴンが空よりフロシュエルを睥睨する。


「さぁ、後悔しろフロー……!」


「ほあたぁ!」


 驚いたフロシュエルだったが、ロストの前口上中に飛び上がり、巨大な邪竜の身体へと手刀を叩き込む。


「か、かあさーんっ!!」


 バラウールから謎の青年っぽい声が漏れ、巨体が地上へと落下する。


「おー……」


 小影が楽しげに笑う中、強力な邪竜が地面に倒れ伏し消滅した。


「シュ君……って、えぇ~」


 ロストが台詞を言い終えた時には既にバラウールの姿は無くなり、空中に留まる天使見習いが何か言いました? と言った顔でロストを振り向いた所だった。


「くっ! ならば!」


 再び召喚するロスト。

 今度は凶悪な容姿の黒き鳥が出現する。


「こいつはピューイハト。七回鳴くと人が死ぬという凶悪な」


「ちょいなっ」


「そこはらめぇっ」


 ピューイハトは断末魔と共に消滅した。

 当然、フロシュエルの断末魔作成拳の一撃である。


「お、おいおいおいっ」


「ぷふっ。ロストさんや、フロシュエルは苦戦すらしてないぞー」


「外野は黙ってようか?」


 小影の言葉にイラッとしながらフロシュエルを睨む。

 新たな召喚。

 次に現れたのは……


「ゾンビ? いえ……キョンシー?」


 それは中国の動く死体の噂にしていた。

 ただ、その姿は青白い精気無き遺体ではなく、ぼろぼろに朽ち果て物凄い臭気を放つ腐りかけたバケモノだった。

 着ている服は道士服とでもいうべきか。

 よくマンガや映画などでキョンシーが着ている服装だ。


 飛び跳ねることはなく、グルルと唸りながらゆっくりと歩いて来る。

 相手が空を飛ばないので、フロシュエルも地面に降りて拳を握り、構える。

 ビシリ、拳法の型だろうか? 相手もまた左の拳を突きだすように腰を降ろして構える。


「彼の名はタキシム。先に言っておくけど悪魔的なものではなく怨念で動いているため、悪魔払いは効果がないよ。つまり聖属性で彼を消滅させるのは不可能だ」


 神聖魔法は普通に効くと思いますけど、思いはしたがあえて告げないフロシュエル。

 相手が腐った身体なので断末魔作成拳の試し打ちも出来そうにない。


「生前は強力な憲法家だったみたいだからね。余程の恨みを持ってるみたいだし、殺されないよう気を付けて」


「いや、殺されないようにって、危なくなったら止めなさいよ」


「いや、小影さん。呼び出したはいいんだけどさ、タキシムってほんとしつこいんだよ。恨みを晴らすまで止まらないから僕でも結構苦労する。闘いたくない相手だよ」


「うわー、やな奴ねぇ」


 どうしよう、魔統王の話を聞いていたフロシュエルは目の前のタキシムが小影と被ってしまった。

 金を返すためならば地を這ってでも追い付き諦め悪くしつこく付きまとう。うん、小影さんが死んだらタキシムになりそうな気がする。

 思わずそんな考えが浮かんだフロシュエルは気を引き締める。

 小影を相手に闘うつもりで、全力を尽くそう。


「ホーリーアローッ」


 ツイスト付きのホーリーアローで威力を高め、打ちだす。

 が、当る直前、半歩横に避けてタキシムは軽々避けてしまった。


「ホーリーアロースプレッド!」


 牽制のつもりではあるが、タキシムは無数の光を軽々躱しながら近づいてくる。

 まるで華麗にステップをするように、光の中を優雅に近づいてくる。

 強い、速い、なによりも、フロシュエルの攻撃を見切っている。


 ある一定まで来た時だった。一瞬で姿が消える。

 え? 驚いた時にはフロシュエルの目の前にタキシムの顔があった。

 醜悪な顔に焦るフロシュエル。

 タキシムの一撃がフロシュエルの障壁に叩き込まれる。


 無防備に受けたフロシュエルは無数に張っていた障壁や反射盾の御蔭でダメージこそなかったが、今の一撃で障壁の殆どが粉砕されていた。

 反射盾も無理矢理こじ開けられたような穴が開いてしまっている。


「な、なんですか今の!? 反射盾が反応しない!?」


「違うわよ。アイツ貫通属性持ちよフローシュ!」


 貫通属性ってなんだ!?

 フロシュエルが驚く間も、一撃離脱したタキシムは自身の一撃が相手に致命傷を与えなかったことを不思議そうにして、自分の手を見て感触を確認している。


 ギンっとフロシュエルにくぼんだ相貌を見せつけ睨む。

 次は、貫く。

 そう言われた気がした。


 相手はおそらく本気だ。

 下手に受ければ次こそ障壁を貫かれてダメージとなるだろう。

 気が抜けない敵だ。

 完全を相手にしていると思った方がいいかもしれない。


 気合いを入れ直し、フロシュエルは再び戦闘態勢へと移行した。

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