二十二日目11
「で? この鍵どこのですかね?」
手に入った鍵を目の前に持って来て、フロシュエルは小首を傾げる。
手に入れたはいいのだが、使用場所が分からない。
「一先ず見てない部屋を見て回るのがいいだろう」
「ですかね、やっぱり」
また変な部屋があるのかも、とため息交じりに部屋を出る。
次の部屋を開いてみる。目が会った。
白骨化した全身骨の人骨さんが1、2、3。
カタカタカタと身体を鳴らし、フロシュエルに向かい歩きだす。
バタン。当然ドアを閉じた。
ドア越しにがしゃがしゃと音が聞こえるが完全無視だ。
「どうした? 何が居た?」
「きっとここには何も無かったんです。真ん中のドア開きに行きましょう!」
おそらくそこだと当りを付けて、フロシュエルは一度エントランスへと向かうのだった。
ガチャガチャ……
鍵を入れて回す。開かない。
鍵を入れて回す。開かない。
鍵を入れて回……
「諦めろ天使見習い。そこの鍵ではないらしい」
「いやぁっ。もはやあの部屋にしかないじゃないですか鍵ーっ」
頭抱えるフロシュエル、骸骨との邂逅は確定したようだった。
渋るフロシュエルを摘まみ、ブエルは再び先程の部屋へと向かう。
泣きそうになりながらフロシュエルは部屋のドアを開く。
再び、がらんどうの瞳と眼が合った。
気付いた骸骨たちがカタカタカタと動き出す。
なぜベッドに座って本を読んでいる奴が居るのか、木製バット振って暇潰してる奴が居るのか、ゴルフクラブ持ってパター練習してる奴が居るのか、フロシュエルには分からなかったが、覚悟が出来ていただけに既に魔法の準備は万端だった。
「ホーリーアロー!」
三つに別れたホーリーアローがガイコツ三体を打ち抜く。
ゴルフクラブと木製バットを持った骸骨はそのまま撃ち抜かれ、本を読んでいた個体は腰を浮かしかけた瞬間粉砕された。
「問答無用か」
「当然です。ホラーなんてぶち抜き確定です」
「野中とやらの娘でなくて良かったな」
「はっ!?」
今更気付いたフロシュエル。
実はガイコツに擬態して娘さんがさっきのミミックや人形みたいに骸骨みたいに振る舞っていたかもしれなかったことに今更ながらに気付く。
もしも間違って二人を撃ち殺していれば間違いなく堕天案件である。
「はわわわわわわ……」
「幸い自動で動く骨だったようだ。ほれ、コレが鍵らしいな」
「わ、私はなんてことををを……」
未だに焦っているフロシュエル。鍵を受け取る気配がないので、ブエルは鍵を咥えて部屋を出ていく。
自分一人で先に扉を開けることにしたようで、エントランスに出ると、二階中央の扉を鍵で開く。
折角なのでフロシュエルを放置して先を見て来ることにしたようだ。しかし……
「ぐわあああああああああああああああ――――っ!!?」
「はっ!?」
謎の悲鳴が轟き、フロシュエルは我に返った。
慌てて周囲を見回すが、ブエルの姿が見当たらない。
「あれ? ブエルさん? ブエルさーん?」
部屋を出て通路を歩く。右側の通路を進みエントランス右の扉から出てくると、丁度真ん中のドアが開かれていた。
どうやらブエルが先に入ったらしいと気付き、恐る恐るフロシュエルも真ん中の部屋へと向かう。
「あれ? 一階に降りる階段?」
どうやら一度降りるらしい。
フロシュエルは周囲を警戒しながら階段を降りる。
「えーっとブエルさーん?」
こわごわ通路を調べれば、骸骨が数体歩哨のように通路を歩いているのが見えた。
「うわーお、でも個体が無事ってことはブエルさんそっち行ってないですよね。では……」
目の前にドアが一つ。
半開きのドアはどう見ても誰かが閉め忘れたとしか思えない。
つまり、そこにブエルが突っ込み、なんか絶叫したと思われる。
そーっとドアを開く。
横合いからカタカタと骸骨が気付いて寄ってくる気配がしたのでホーリーアローをノールックで放って粉砕しておく。
ドアの奥は普通の部屋だ。
何も無いし誰もいない。
「変ですね? ブエルさんも居ない?」
戸惑いながらも部屋に入る。
その刹那。
バタンッ
「ひゃ!?」
後ろのドアが閉じる。
この屋敷の入り口と同じように自動で閉じて、動かなくなった。
嫌な予感がひしひしと感じる。
ギリギリギリと何か歯車の回る音がする。
あ、これ、マズい。
思った時には遅かった。
天井が音を立ててゆっくりと下がってくる。
「ぎゃ、ぎゃあああああああああああああああああすっ」
ぷちり。となる前に床が全て消え去る。
浮遊などしようとすら思わなかった。浮遊したところで上から押し込まれるのだから意味は無いのだが。
結果、そのまま真下の流れるプールを下って屋敷裏の池に向かってダイブイン。
「ごぼぁ!? ま、またやられた!?」
池から顔を出して水を噴き出したフロシュエルは、岸辺に上がっていたブエルを見付けたのだった。