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天使見習いフロシュエル物語  作者: 龍華ぷろじぇくと
四日目・ノーマルルートA
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二十二日目2

「バロックさんからはもう返して貰ったのです」


 ふふんと胸を張りながら、告げるフロシュエル。

 バロックさんのアパートには寄らずに井手口さんの家へと向かっていた。

 井手口さんの家、そこの周辺だけがなぜか魔窟のような圧迫感がある気がする。


「うぅ、なぜかここは空気が重い気がします」


「行くのだろう。さっさと行くぞ」


 しかし井手口の奥さんを知らないブエルが先行してしまう。

 大きく息を吸い込みやる気を無理矢理振るい立たせたフロシュエルは彼の後をついて歩き出す。

 インターホンを一押し。


 魔法による防御を全力展開。

 衝撃に耐えるためにしっかと両足に力を入れる。

 はいはい、待ってて下さいな。と奥さんの声。

 残念ながら夫ではなく奥さんが出て来てしまったようだ。

 フロシュエルは拳を握り覚悟を決める。


「はいはい、お待た……ドロボーね……!?」


 現れた奥さんが拳を握りフロシュエルにボディーブローを放とうとした瞬間だった。

 フロシュエルの背後にいたブエルを見つける。


「あら嫌だ」


 フロシュエルとブエルを見比べ。何かを察した奥さんはまぁまぁまぁと謎のミーハーオバサン化してしまった。


「ふむ。天……フローシュよ。口上を述べるべきかと思うが?」


「え? あ、はい。あの、にこにこにっこり金融の小影さんの代理で来ました。夫さんの借金二万円の御返金を……」


「あんたァ! また借金したのかいッ」


 フロシュエルの言葉が終わるより早く、奥さんは家に引っ込むと、夫の元へと急行。

 そして謎の打撃音。


「待って、言ったじゃないか。この前小影さんにお金借りたって」


「……あぁ、まだ返してなかったのかい」


「お前が追い返すか……いや、なんでもないよ、うん」


「そら、さっさと返して来な!」


 そして首根っこ引っ掴まれた夫さんが目の前にやってくる。

 目元に青痣が作られてるのは見なかったことにした方がいいらしい。


「はい、んじゃこれ、借金だった二万円です」


「あ、はい。ありがとうございます」


 返された二万円を思わず受け取る。

 するとすぐに引っ込む夫さん。どうやら襟首掴まれていたままだったようで、用事が済んだ瞬間妻により強制退場させられたようだ。


「ご、ごめんよ母ちゃーんっ」


「煩いよッ」


 打撃音が何度か響く。

 フロシュエルはただただその場で震えるしか出来なかった。


「そろそろ、次に行くか」


「……はい」


 あまりにも簡単に手に入れてしまった課題の二万円を握りしめたまま、フロシュエルは井手口家を後にする。

 道を歩きながらなんとか我を取り戻しお金を仕舞う。

 そしてブエルに尋ねることにした。


「あの、ブエルさん」


「ふむ? なんだ?」


「さっきのはどうなっていたのでしょうか? 私未だによくわからないのですが」


「うむ。推定でしかないのだが、おそらく私とお前の関係を邪推したのだろう」


「邪推……ですか」


「うむ。一応お前は女性体。我は男性体だからな」


 衝撃の事実。

 ブエルはこの体系で男性体だと言い張るらしい。

 身体と足しかないのに男性体というよりは無生物ではないかと思うのだが。

 フロシュエルは思わずブエルを観察する。顔はともかく身体付きはどう見ても男とは言えないと思う。


「つまり、男のいる女が自分の夫と浮気する訳が無い。だからいきなり攻撃してこなかったという訳だ」


「な、成る程。え? それってつまり、最初から私以外か男性の付き添いで借金取り取り立てに向かってれば……」


「うむ。問題無く返して貰えただろうな」


「な、なんという……」


 思わず四つん這いになりたかったフロシュエルだが、公園前の道でそんな事をする訳にも行かず、深いため息だけを残す。


「今回の試験では実力行使を行うか、条件に見合った人物を連れて来るかすればよかった。ということらしいな」


「それが男性……ですか」


 これが女性同士で来ていたなら、おそらく大戦争勃発。また増えたか雌猫ーとか言いながら殴りかかって来ていただろう。

 ブエルが一人参加するだけで返してもらえるなど、想定外過ぎてフロシュエルの思考は未だに追い付いて来てくれない。


「とにかく。今回は運が良かった。そしてこれから先、必要条件を手に入れなければいけないこともあると分かっただけマシではないか」


「そりゃ、そうですけどね……はぁ。まぁ実感は湧きませんけど二つ目クリア、ですね」


 これで残りの試練は三つ。

 小出さん、田辺さん、そして野中さん。

 ついでに清水さんの家に居るけん太をぶっ倒して靴を取り返さないとならないのだ。


「まずは……田辺さんですね」


「舌戦になればいいがな。頑張ってみせろ」


「あたりまえです! 見ていてくださいブエルさん。目に物見せてやりますよ!」

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