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天使見習いフロシュエル物語  作者: 龍華ぷろじぇくと
四日目・ノーマルルートA
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二十二日目1

「んはぁー、なんかいつもより眠った気がしますね」


 背伸びをしたフロシュエルが起き上がる。

 正直な話、魔力欠乏で気絶した後、ブエルに運ばれ小影の家に戻ってきた彼女はそのまま意識目覚めぬままに今まで眠っていたのだ。

 御蔭で魔力はほぼ回復しており、多めに休んだ御蔭か疲れも無い。

 まだ眠り足りない気はしないでもないが、快晴の空から差し込む光が彼女に二度寝を許さない。


「ふふ、さっさと外に出て来いと言っているみたいですね。今日は色々やってみましょうか」


 本日は試験の試験を行うつもりだ。

 今のところ返して貰ったのはバロックさんだけだ。

 小出さんは家から出て来ないし、井手口さんは奥さんが危険。

 田辺さんからは既に返したと突っぱねられているし、けん太は靴を返してくれない。

 野中さんの家は幽霊屋敷に偽装されたギミック屋敷。指定位置までなんとか辿り着かなければならないのだ。


「そろそろ本格的に攻略していかないと、二か月は短いですからね」


「短いというか、もう二十日過ぎてるから後四十日くらいよね」


 三分の一の日数が過ぎてしまったようだ。

 ダイニングルームにやってきたフロシュエルに告げた小影は、食事を終えると同時に学校へと向かって行った。


「行ってらっしゃい小影さん。私、そろそろ本格攻略行っちゃいますよ!」


 既に居なくなった小影に告げる。

 するとブエルが入れ違いにやって来て席に付く。

 器用に足で湯呑を持ってお茶飲み始めた。


「今日は予定通り付いて行くぞ」


「はい。まぁ大したことにはなりませんが、頑張ってみます」


「貴様がどんな試験を受けているのか、しっかりと見てやるさ天使見習い。だが、実力面だけならば既に天使としての力はクリアしているように思うが?」


 でも、小影からの宿題はクリアできていないのが現状だ。今までお世話になっているのに、力を付けたから試験の試験なんてやらずにさっさと試験会場向かいます。では未だ力になってくれようとしている協力者たちに申し訳が無い。


 そもそもフロシュエルが試験に受かるようにこの試験を設けてくれているのだ、無視して試験に落ちたりなんかしたら目も当てられない。

 せっかくだし全てを成功させてから大手を振って試験を受けてしまいたい。


「では行って来ます!」


 居間でテレビを見ていたハニエルに一言告げて外に出る。

 ハニエルは肘付いて寝っ転がってテレビを見ており、こちらに振り返ることなく左手を上げて振ってきた。

 喰っちゃ寝し過ぎだろう? とブエルが呆れていたが、ハニエルは気にした様子は無いようだった。


「まずは小出さんですね」


「ふむ。そこはどういった試練なのだ?」


「小出さんは家に引き籠って出てきませんので、敷地内に入ることなく相手からお金を返して貰う方法を考えなければなりません。日本の法律では勝手に敷地に入ると罪になるそうですから」


「ふん。天使は制約があって面倒だな。我ならば速攻部屋に乗り込んで引きずり出して、いや、そこまでする必要無くその場で返してもらえば良いのか」


 それが一番簡単なのはフロシュエルだって理解している。

 でも求められているのはそういうことではないのである。

 なので、まずは思いついた、というか小影の行動に習って携帯電話で連絡してみる。


 家の前で電話をしてみるが、一向に電話に出る気配は無い。

 留守にしているのだろうか? しかし携帯電話ならば手元に持っているはずである。

 そもそも家に気配があるので出ないとおかしい。おそらく気付いていてあえて出て来ないのだろう。


「出ませんねぇ」


「居留守なうえに電話すらでんのか、これ、強制突入以外でどうするつもりだ?」


「ふっふっふ。小影さんからいろいろグッズを貰って置いたのですよ」


 にやりと意地の悪い顔をしてフロシュエルは拡声器を手に持った。


「あーあー、ただいまマイクのテスト中ーっ」


「ふむ。近所迷惑ではないか?」


 むろんそれが狙いである。


「こんにちわー小出さん。にこにこにっこり金融でーす。御貸ししている二万円、そろそろ返してくださーい」


 周囲に響き渡るのも気にせずフロシュエルは喋り続ける。

 余り盛大にやると騒音妨害とかで警察が動くが、流石にそこまでするつもりではない。


「本日は返して頂けないようなのでまた後日回収に伺いまーす」


 よし。と拡声器の電源を切る。


「ん、もういいのか?」


「はい。あまり時間を掛けるよりも毎日の日課にしておくのがいいのです」


 兵糧攻めとは少々違うが、毎日こんなことを大声で言われてはたまったものではないだろう。周囲の人にもお金を借りて返していないことが知られる上に、続けば続くほど居心地も悪くなってくる。

 電話で話が付けば問題は無かったが、それでだめなら徹底的に。それが小影クオリティ。

 フロシュエルはある意味的確にその手法を行っていたのである。


「堕天は……せんようにな」


 満足げに息を吐くフロシュエルに、ブエルは溜息を吐くのだった。

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