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天使見習いフロシュエル物語  作者: 龍華ぷろじぇくと
四日目・ノーマルルートA
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二十一日目2

「という訳で、明日は試験に挑みます」


「ふむ。頑張れ」


「ちょいとあるてま、はんのうがざつ」


「私は龍華程反応を返せんのでね」


 公園で集まっていたのは下田完全とピクシニーだけだった。


「ところで龍華さんは?」


「小用が出来たとかでしばらく来れんらしい。一応学校には来ていたわ」


「え? 龍華師匠学校行ってたんですか? いつも手伝ってくれてたのに……いつ出席を?」


「ああ、違うの。今は夏休みだから学校自体はないんだけど、私達のクラスはちょっと特殊で補講に出席している人が多いのよ。その彼らに報告しに来ただけよ。私もそれを聞いてすぐにこちらに来たわ。もともと補講受ける必要が無かったし、この後は山籠りでもしようかしら」


「天使見習いよ、こやつは一体何を目指しているのだ?」


「さ、さぁ?」


「あら、私は普通の女の子を目指してるんだけど?」


「一般的な人間の雌は拳一突きで魔物を殺したりはせんと思うがな」


 ごもっともな意見だが、下田はそれを無視してフロシュエルを見る。


「さて、龍華は居ないけど私が居るわ。魔術訓練とかはブエルだっけ? ピクシニーとでやって貰えばいいから、午前中は貰うわね」


 と、さっそく拳を固めて構える完全。


「ではやろうかフローシュ。殺す気で来なさい」


「はいっ」


 龍華にはお墨付きを貰っている。今の自分なら、不意を付けば完全にだって勝てると。

 ただし、完全には本能による自動迎撃があるので迂闊に追い詰めれば即死攻撃が来るらしいので、そこだけは気を付けなければならない。


「行きます。風圧装甲エアロフレーム、プリズムリフレクション!」


「防壁か。どれ程のものか楽しみね」


 走りだす完全。

 ザシュッと地面に足を付け、肘打ち。

 プリズムリフレクションにより跳ね返されたダメージを受け、即座に離れる。


「なるほど、反射盾か。面白い事を考える」


「行きます。ホーリーアロースプレッド!」


「なんの、当らんよ」


 無数に別れた光の矢を、半歩動くだけで全て避ける完全。上半身だけは物凄く動いていたので、その場から動かないつもりだったのだろうが、半歩動いてしまった事にむぅっと完全が難しい顔になる。


「……ギアを一つ上げるか」


「うぁ、なんか聞きたくない言葉が」


「なんの評価の上方修正だ、気合いを入れろフローシュ」


 走りだす完全。ホーリーアロースプレッドを連発してみるも、その悉くを華麗に避けながら近づいてくる。

 本当にバケモノの動きである。


「インフレーションホーリーアロー!」


「なんだ? っ!」


 途中で速度を増した一撃に、慌てて避ける完全。

 体勢が崩れたところにホーリーアロースプレッドが襲いかかる。


「なかなかやる。しかし、捕えた!」


 一足飛びに鋭い蹴りを叩き込む。

 プリズムリフレクションにより跳ね返されるダメージが入る前に蹴りを止め、一撃必殺の抜き手を放つ。


「その程度ではダメージにな……っ!?」


 ゾクリと背中を何かが駆け抜けた。

 慌ててバックステップするフロシュエル。

 完全が舌打ちする。


「今の、仮面ダンサーアンがナイフ投げた時と同じ危機感がありました……」


「良い読みだ。よくぞ躱した」


「マッドフィールド!」


「っ!? 精霊魔法!?」


「ミストミラージュ」


「これはっ」


「ホーリーアローオルレンジ!」


「まずっ」


 それはマッドフィールドにより足を取られ、ミストミラージュにより視界を塞がれ、そこに新種のホーリーアロー。

 本能的に危機察知が働き、慌てて逃げようとうするがすでに足を固定されているため逃げられない。

 来る。そう思った次の瞬間、四方八方からホーリーアローが襲いかかる。

 ホーリーアローオルレンジ。それは略式であるだけでオールレンジ。つまり全周囲攻撃ということだ。

 視界と逃げる足を封じたあとでの全方向から無数のホーリーアロー攻撃。

 おそらく即興で思いついたのだろう。名前自体は後で変えるべきだろうが、完全相手には充分過ぎる大技だ。


「参ったな。これは流石に無理か……いや。師匠である私が諦める訳にはいかんよな?」


 絶体絶命の危機、新技を編み出したフロシュエルに対抗するには自分も新技を使うしかないだろう。

 相手の攻撃が全周囲で避けられないのならば、その全てを一点に集め避ければいい。


「こぉぉ……」


 気力を最大に発揮して、周囲の大気を振るわせる。

 人間にはおおよそ不可能な奇跡を起こす。

 それはまるで、月をうらやむすっぽんが月を落として成り変わるが如く。


「月下暗殺拳・秘奥……」


 腰だめに溜める。

 それはいつか見たマンガなどでよく使われる型。

 左手の掌を向け、右の掌をかざす。右の腰元にそれを構え、何かを集めるように意識を集中する。


 瞳を閉じて集中。集中。また集中。

 自分に迫る無数の光の矢に意識を向ける。

 行けるか? やれるか? 否。やるのだ。

 カッと瞳を開く。渦巻く風が無数の光の矢を巻き込む。


「月地、下剋上っ!!」


 完全は集めた光の矢を思い切り打ち返した。

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