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天使見習いフロシュエル物語  作者: 龍華ぷろじぇくと
一日目・共通ルート
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二日目2

本日二話目

 小出さんの家につくと、すぐさまチャイムを押す。

 無機質なチャイムの音が辺りに響いた。

 このチャイム音はなんだか落ち着かない気分にさせるなぁ。とフロシュエルは思う。


 昨日も家でくつろいでいると何度か鳴ったのだ。

 小影に対する用事らしいのだけど、聞こえるたびに思わず身体がビクッとなった。

 自分ではないのに行かなきゃいけないんじゃないかと思ってしまう。


 …………


 どうやら昨日同様に家にはいないようだった。

 しばらく待ったが全く出て来る気配が無い。

 この時間は家に居ないのだろうか? だったら時間をずらして行くしかない。

 さすがに二ヶ月間ずっと留守。なんてことは無く帰ってくるはずだ。


 もしくは朝方は仕事に出ているのかもしれない。

 だったら時間をずらさないと出会えないだろう。

 一度帰って夜にでももう一度来るべきだろうか?


「うーん、昼間はいないんですかね?」


 と、すぐさま次のバロックさんの家に向かおうとして、ふと思い至る。

 これは試験。フロシュエルが来ると伝えられているはずの小出さんが毎回留守なんてこと、本当にあるだろうか?

 疑惑とでも言うべきか、一度思ってしまうと、何か裏があるんじゃないかと気になってしまう。


 今まで疑うということをしてこなかったフロシュエルだが、自然と、何故か疑っていた。

 そして、自分が小出さんを疑っていることに気付く。

 天使としてあるまじき行為。人を疑うなど堕天に繋がる行為ではないか!?

 そう思いながらも、自然と納得できるものもまた、あった。


 これは試験。むしろ全てを疑ってかかった方がいいのかもしれない。

 ただ時間をずらして会えるだけならちょっと気付けばすぐできる。

 この試験が、本当にそんな簡単でいいのだろうか?


 だから、フロシュエルは小出さん家に振り返った。

 とりあえずもう一度チャイムを押してみようと思っての行動だったのだが、振り向いた先にいたのは、丁度小出さん宅の玄関から出掛けようとしていた男の人だった。


 今はほとんど見かけないリーゼントに立派なひげを持つ三十代くらいの男性。

 フロシュエルと目が合うと、慌てるように家に戻っていった。

 慌ててフロシュエルも駆けよるが、玄関は鍵がかけられ、インターホンをいくら押しても出てくる気配はなかった。


「やっぱり、やっぱりここの人も試験なんですかっ。ただ正面から行っただけじゃ返してもらえないんですねっ」


 しばらく粘ったものの、でてくる気配のない小出さんに、フロシュエルは敗北した。

 彼を家から出す方法を、全く思いつかなかったのである。

 今はまだ、彼からはお金を返してもらえないと、一先ず次のバロックさんの元へと向かうことにしたのだった。


 バロックさんはアパート紅葉左下の部屋。

 このため左にはもう部屋がなく、窓が設置された側面は逃走経路として役立っている。

 つまり、この人からお金を返してもらうには、彼を追いかけ、捕まえなければならないのだ。

 やるべきこと、そしてこのバロックさんの借金で問われている試験内容は理解できた。

 成る程、こうして考えると試験の試験で問われていることがなんとなく理解できて来たフロシュエルだった。

 チャイムを押して、出てくるのを待つ。


「どちらさ……」


 出て来たバロックさんは、フロシュエルを見た瞬間、バタンとドアを閉めてしまう。

 それを合図とフロシュエルは左側の窓へと向かう。

 いつ出てきても良いようにと窓の真横で待ち構えた。


 室内では争うような音が聞こえ、しばらく。

 突然音がやんだ。

 …………


 出て来ない。

 昨日脱出して来たはずのこの窓から、バロックさんが出て来る気配はなかった。

 中を覗こうにも曇りガラスは内部を見せてくれそうにない。

 

「あ、あれぇ?」


 何かがおかしかった。玄関から出て行った様子も無ければ窓から出てくる気配もない。

 不審に思って周囲を探ってみると……


「あ……」


 なんと、裏口を発見。

 玄関とは反対側に、開け放たれた裏口が存在していた。

 まさかの勝手口の存在に、フロシュエルはただただ呆然と見入るしかなかった。


「また……逃げられた……」


 予想を上回られた事実に半泣きになりながら、明日こそはと、気持ちを落ち着けるフロシュエルだった。

 アパート紅葉を背にして、とぼとぼと歩きだす。

 胸中は既に打ちのめされていた。


 簡単な試験だと思ったのだ。

 全部は無理でも三人位からは充分取り立て出来て、あとは小影との交渉で二次試験は受けさせて貰えるだろうと。簡単に考えていた。

 でも、この試験の試験はそんな甘えたフロシュエルの考えを悉く打ち砕いて行く。

 それでも、これが最後の試験への足がかりなのだ。まだ、諦めるには早すぎた。

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