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天使見習いフロシュエル物語  作者: 龍華ぷろじぇくと
四日目・ノーマルルートA
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二十日目4

 洞窟内をゆっくりと進む。

 フロシュエルとピクシニーはフロシュエルの作りだした光の玉を頼りに暗い洞窟内を進む。

 洞窟の壁にはカエルやトカゲ、蝙蝠といった生物が存在しており、足元には時折ある水溜りにメダカくらいの小型の魚が泳いでいるのが見える。


「うっわー、めがたいかしてるよふろーしゅ」


「洞窟内なので眼とかいらないんでしょうね。そりゃ退化しちゃいますよ。その分感覚器は鋭そうですね」


「おもしろいねー。めがみえなくてもまわりがみえるんだ」


「そうですね。一応私も魔力感知とかはできますが、完全な暗闇だと相手が魔力持たない人間さんとかだとこういう機能ほしいなぁって思います」


 言って、気付く。せっかくだからそういう魔法も考えるべきだろうか?

 いや、もしもその時魔力も使えなければ?

 そう、完全は告げた筈だ。状況をシュミレートするのなら、常に最悪を考えそれに対処できる術を作りだせ、と。


 つまり、今想定しておくべきは、もしも暗闇に放り込まれたら。魔力も使えず相手の姿がわからなかったら?

 完全ならば言うだろう。感覚を研ぎ澄ませ、と。

 フロシュエルは心の声に従うように瞳を閉じ、周囲の感覚を確かめる。


「どったのふろーしゅ? きゅうにたちどまって……んん?」


 瞳を閉じた瞬間、周囲が全く分からなくなった。

 否、ピクシニーが飛んでいる気配だけはかろうじてわかる。

 その感覚だけは完全や龍華との戦いで少しは分かるようになっている。

 流石に魔力なしではこの程度の感覚しかわからないので、龍華のやっていた瞑想、帰ってからやってみようかなと思わず思うフロシュエルだった。


「んー、やっぱり瞳を閉じただけでは感覚を研ぎ澄ますのは難しいですねぇ……あれ?」


 眼を開くと、なぜかピクシニーが消えていた。

 何処に行ったのか周囲を探るが誰も居ない。


「ちょ、まさか置いて行かれた!? い、いえ、ピクシニーさんに限ってそんなことは。っは、そうです。魔力感知切ってました」


 魔力での感知能力を復帰させると、ピクシニーの魔力反応は洞窟の先にあった。

 どうやら本当に置いて行かれたようだ。

 いや、置いて行かれたにしては距離が離れ過ぎている。ワザと放置して全力飛行でもしない限りこの距離はおかしい。


「ふふ、こうして疑問が考えられるようになれたのも皆さんのおかげだよなぁー。ピクシニーさんがどうして先行しちゃったのか、自分の意思かそれとも他者の介入か。いろんなパターンを想定して最悪の事象に対応できる術を考える」


 仲間に起こった謎。一人取り残された洞窟。なぜだろう? 恐ろしい筈なのに、心細い筈なのに、フロシュエルの思考に湧きおこるのは、不思議な昂揚感。

 自分は今冒険している。そんな気持ちが湧きおこる。


「よし、冒険、開始です!」


 身体強化で加速する。

 フロシュエルが超高速で移動を始めたのに気付いたのか、ピクシニーの魔力反応が急激にフロシュエルから遠ざかり始めた。

 これはいくらなんでもおかしい。

 おそらくピクシニーの意思とは関係なく何かしらの移動手段で洞窟の奥へと向かっているはずだ。


「どうやら、本当に最悪を想定した方が良さそうです」


 自信は? ある。

 今までの漠然とした自分ならたぶんやれる。といった自信じゃない。

 今までの修行により、裏打ちされた余程の事が無い限りは危険はない。そういう自信だ。

 といっても流石に危険を想定しない訳じゃない。


 今出来る防壁関連は最大展開しているし、危機察知もフル稼働だ。

 だから気付けた。

 近づいたピクシニーの魔力反応に付随する魔力反応がある。

 ピクシニーよりも低い魔力反応ではあるがそれなりに高い。中級妖魔の類だろうか?


 高速飛行するフロシュエルからは逃れられない速度のようで、必死に逃げているようだが、結局は追い付かれる結果となる。

 フロシュエルが見付けたのは、赤い肌の魔物。

 子供位の大きさで、カギ鼻の生物だ。

 全裸であるため見ちゃいけない部分をぶらぶらさせているのが眼のやり場に困る。しかし、そんなものに気を取られていては、むんずと捕まっているピクシニー解放など夢のまた夢である。


「止まってください! これは警告です! 止まらなければ撃ちますッ」


 叫ぶ声が洞窟に響く。

 当然魔物の耳にも届いていたようだが、相手は止まる気配が無い。

 ピクシニーの安全も気になる。最悪握りつぶされているかもしれないのだ。

 時間など掛けられない。


「ピクシニーさんの仇! ホーリーアロー!」


 魔力はそこまで込めることなく、ホーミング式ホーリーアローを撃ち放つ。

 気付いた魔物がぎりぎりで避けるものの、ホーリーアローは即座に動きを変えて魔物に襲いかかる。


「ウゲェッ!?」


「っしゃ、はなれたーっ。ラ・グラ!」


「ゲギャギャ!?」


「あ、ピクシニーさん生きてた」


「ちょっと、なにしんだことにしてるのっ!?」


 ピクシニーの電撃で倒れた魔物にフロシュエルが追い付く。

 痙攣する赤い生物はゴブリンに似ているが、どうも別モノのようだ。


「んー。ごぶりん? ぼーぐる? ぶっかぶー? なんかそれっぽいやつだね」


「とりあえず写メ取っちゃいましょう。あとでハニエル様達に見せよっと」


 フラッシュ焚いて魔物の姿を撮影するフロシュエルとピクシニーだった。

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