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天使見習いフロシュエル物語  作者: 龍華ぷろじぇくと
四日目・ノーマルルートA
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十九日目4

「に、にぎゃーっ!?」


「あっ」


 振るった鎌が丁度プリズムリフレクションの合間を抜けてしまったらしい。

 慌てて寸止めしようとした龍華だが、プリズムリフレクションを破壊するつもりで振るわれた一撃だったため間に合わず、勢いを止めた時にはフロシュエルの額に刃先が刺さった後だった。


 バツの悪そうな顔ですまん。と告げる龍華。

 しかしプリズムリフレクションに慢心したフロシュエルも悪いと言えば悪い。彼女が油断さえしなければ今の一撃も避けられた筈だ。

 しかも危機を既に察知した後なのである。


「さ、刺さって、刺さってる!? なんでー、プリズムリフレクションまだ稼働中なのにーっ」


「ふむ……流石にこんな確率は殆どないようだが、おそらくな、プリズムリフレクションは無数の小型盾を周囲に漂わせるのだろう? その全ての盾の動きで出来た空白地帯に運良く鎌が通ったのだろう。まぁ、生きてるうちに気付けて良かったじゃないか」


「それはそうですけどーっ。てか師匠、抜いて、鎌抜いてくださいっ」


「おお、すまん」


 龍華も動転していたようで、フロシュエルの頭から刃先を抜き去ることすら忘れていたようだ。

 慌てて引き抜く。

 栓がなくなったため、フロシュエルの額からぴゅ~っと血が噴き出した。


「い、いやーっ!?」


「あ、あー、その……そうだ、回復魔法だフロシュエル!」


「へ? あ、そ、そうでした。回復回復、えっとえっとヒールライアッ」


 高威力の回復魔法をありったけの魔力を使って放つ。

 直ぐに塞がる小さな傷に安堵して、直ぐに気付いた。

 今のはただのヒールでよかった。ヒールライアを使うまでもなかったのだ。


「うぅ、まだ平常心が保てません」


「動揺はいつでも起こりうるからな。いかに立て直すかが重要だ。それで、どうだ? プリズムリフレクションの欠陥が見つかった訳だが?」


「そうですね。まず滅多なことでは通らないとは思いますが、これは不安ですね。最悪はリフレクトシールドを使って弾くのと併用するべきでしょうけど」


「隙間なく敷きつめながら回転させてはどうだ?」


「隙間なく、ですか?」


「ハニカム構造にすればいいと思うが」


「ハニカム……ってなんですか?」


 今の闘いの問題点と改良点を話し合うフロシュエルと龍華。

 ハニカム構造を知らないフロシュエルに説明に困ったように龍華がむぅっと唸る。


「蜂の巣の構造の事だ。私も詳しくはなくてな」


「ならば説明しよう!」


 唐突に、男の声が聞こえた。

 振り向いた二人が見たのは、無遠慮にトレーニングルームに入ってきたドクター城内とクロリだった。


「あれ? お二人も来られたのですか?」


「戦闘が一段落したようだったからな。折角なので見に来た」


「あと、丁度良い相手が来たのでな。折角ならと……ああいや、まぁそれは後だ」


 ハニカム構造に付いてだったな。とドクター城内が話しだす。


「蜂の巣の構造ってそうなってるんですか。へー」


「銀河も同じ構図をしていてな、密度はかなり高められる上に互いに互いを補う。敵の攻撃への防壁としてはかなり強固となるだろう」


「どうせなら球形にしてはどうだ。六角盾を使ってな」


「球形、ですか? 全身を覆う感じではなく?」


 今のプリズムリフレクションは身体の周囲を適当に高速回転させているだけだ。なので確率は低いが全ての盾の隙間を縫えばフロシュエルに攻撃が届いてしまうだろう。

 今のままでも充分な防御力ではあるが、完全に跳ね返せるようにはしておいて問題はないだろう。


 自分の回りを球形に覆うことで完全防御を行う。

 ただ、空気まで遮断してしまうと窒息して死にかねない。

 完全防御はなかなかに難しそうである。


「うーん、ちょっと改良は要思案ですね」


 防御面は一応今のままで、後々余裕がある時に考えていくしかないだろう。

 今は結構忙しい。強かさの授業に龍華たちとの修行。試験の試験もまだ一つしかクリア出来てない。

 やるべきことは多く、時間制限もある。限られた時間で限られた成長を行わなければならないのだ。


「考えるのはいつでもできる。いろいろと考えてみると良い、新たな発想は思索の果てにでてくるものだ」


「そうですね。私がんばって考えてみます」


 フロシュエルの言葉に頷く龍華。

 気付けば既にフロシュエルのストレスは無くなっていたが、フロシュエル自体それに気づくことはなく、元気に防壁改造を思索し始めるのだった。


「ふむ。それではそろそろいい時間だ。今日は帰るか?」


「むぅ、我が魔力の授業が行えておらんぞ?」


「あ、そういえば……」


「家に帰ってからでよかろう?」


「ふむ。まぁそれでよいか」


「あの……私の意思は?」


 思わず尋ねたフロシュエルだったが、誰からも返答はなかった。

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