表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天使見習いフロシュエル物語  作者: 龍華ぷろじぇくと
四日目・ノーマルルートA
100/177

100話突破特別編・フロシュエルの第一期天使試験

 金髪の少女はよし。と気合いを入れた。

 彼女の周囲には無数の天使たち。

 彼女も翼をしまい、周囲の人に当らないようにしており、皆が皆やる気に満ちた顔をしているのを眺めていた。


 本日は、天使見習いから天使へと昇格するための天使試験があるのである。

 金髪の少女天使見習いフロシュエルにとっては第一回目の天使試験。

 初めて挑む試験に、フロシュエルは思わず気合いを入れる。


「はじめまして皆さん。私は大天使長をやらせていただいているガブリエルと申します。本日皆の実力を調べ、天使に相応しき者を選定する役目を持った検査官をしております。今年も多くの天使見習いが来て下さり、嬉しく思いますわ」


 綺麗な女性天使がにこやかにほほ笑む。

 しかし、彼女は天使、裁定となれば迷わず的確な結果を告げるだろう。


「ではまず知能検査から行きましょう。既に用意されているので皆もう分かってると思うけど、直ぐ横にある迷路を攻略して貰うわ。入口から出口に辿り着く時間が平均的な天使見習いの攻略時間より早ければ合格。計測係は既に待機しているから、名前を呼ばれたモノから中に入ってゴールを目指してくださいな。ではジムラエル」


 名前を呼ばれた天使見習いたちが、一人、また一人と迷路に入って行く。

 基本は入った者が出た後で呼ばれるが、5分経っても出て来なければ次の天使見習いの名前が呼ばれて行く。


「次、フロシュエル」


「はいっ!」


 名前が呼ばれ、弾かれたように前に出るフロシュエル。あまりに慌てたせいで迷路入口に入った瞬間こけてしまう。

 驚いたのはガブリエルだ。何も無いところでこけたフロシュエルに空いた口が塞がらなかったらしい。

 フロシュエルは慌てて立ち上がり、恥ずかしそうにしながら迷路へと消えていった。


 そして数時間後。袋小路に行きついたフロシュエルは泣いていた。

 すでに何度とない行き止まりで、自分がどこを歩いているのかすらわからなくなり、戻る道も行く道もよく分からなくなってしまったのだ。

 時々やってくる後続の天使見習いは、フロシュエルと行き止まりを見付けて、あ、こっちは間違いか。と慌てて引き返して行く。


 真っ赤な目で迷路を彷徨う。

 何人かの天使がすれ違ったり後ろからやってきたりする。

 それも、さらにしばらく迷路を彷徨っていると途絶えてしまった。


「ああ。ここに居ましたか」


 不意に、上空から声が聞こえた。

 呆れた顔のガブリエルがフロシュエルの前へと舞い降りる。


「あ。えっと、その。も、もうそろそろゴールできると思いますのでその……」


「あなたが入ってから既に15時間は経ってます。ギブアップ。いえ、TKOですね。セコンドとしてタオルを投げさせていただきます」


「あぅ……」


 ガブリエルに連れられて、上空から迷路を脱出する。

 待ちぼうけしていた天使見習いたちの元へやってきたガブリエルは、次に神技の試験に取りかかった。

 方法は簡単だ。

 計測器へとホーリーアローを打ち込むだけ。出来る天使はホーリーアローの上位魔法であるダーヂエグザイルを使ったり、他の属性聖技などで自分の実力をアピールしたりする。


 名前がどんどん呼ばれる中、フロシュエルの番が来た。

 彼女も計測器向け、ホーリーアローを唱える。

 周囲の天使見習いが息を飲む。


 なぜならば、彼女の打ち放ったホーリーアローはあまりにも細く弱弱しく、計測器にすら届かずへろりと地面に落下したからだ。

 それは子供が木の枝を投げつけたのと大して変わらない状況だった。


「あ、あれ? あれ? えーっと、ホーリーアロー!」


 二度目の光の矢。本来はご法度というか、計測されないものなのだが、ガブリエルはあまりに可哀想だったので見て見ぬ振りをしてみた。どうせ結果は変わらないという確信があったとも言える。

 案の定、フロシュエルの放った一撃はへろへろと地面に落下して弾けて消えた。


「では次は戦闘力を見させていただきます。こちらのドミニオンと闘ってください」


 天使階級でいえば下級天使内では最強であるドミニオンの天使との一体一の対戦。天使見習いたちは死力を尽くして闘うが、引き分けに持ち込めるのが二、三体、力及ばずも善戦するのが百体ほど、全く敵わず敗北する者数千万。

 そしてフロシュエルの闘いは……


「い、行きまーすっ!」


 とととととっ。と走るフロシュエルはドミニオンに攻撃を当てるより先にこけて自滅した。

 あいたっ。と倒れたフロシュエルにドミニオンが呆れた顔で剣を突き付ける。


「それまでです」


 溜息を吐くガブリエル。なぜこんな天使見習いがいるのかと呆れかえっているようだ。


「最後に潜在力ですが。フロシュエル=ラハヤーハ」


「は、はい!」


「あなたは受けなくて構いません」


「へ?」


「潜在力を見るまでもない。知識、神技力、戦闘力どれも合格に程遠いあなたは既に不合格が確定しています。三年後までに必死に力を付け、次の試験に臨みなさい」


 痛烈な結果報告にフロシュエルは愕然とする。

 とぼとぼと力無く試験会場を立ち去る少女を一瞥し、ガブリエルは他の天使見習いたちの試験を再開するのだった。

 第一回目の天使昇格試験。フロシュエルの結果は惨敗に終わったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ