プロローグ
本日は三話分の更新を予定してます。
おそらくその部分がプロローグになるかと。
後々の更新は作者の休日に行われます。
一週間以上更新されない場合は休日は仕事に暗殺されたと思って下さいw
天使試験。
それは天使候補として生まれた天使見習いたちが数年に一度受け、合格すれば能力値に応じた役職に希望して就くことが出来る。
見習い天使たちは一生に二度受けることができ、一度の試験で一次、二次の試験を受けることになる。
一次試験でランダムに選ばれた大天使による潜在力、知識、神技力、戦闘力を調べられる。
この四つの試験の総合で大天使が合格だと太鼓判を押せば、次に大二次試験、四大天使長による本格的な試験となるのである。
ここで試されるのは知識、神技力、戦闘力。
一次試験から二次試験までは二か月程の時間を開けるため、この間に実力を付けなければ、二次試験で落選することとなるのである。
そして二つの試験を合格した者だけが、天使となる事を許される。
では、あぶれた天使見習いは?
二度目の試験で失敗し、もう天使に上がる見込みの無くなった、天使ではない存在は?
ラファエルによる抹消が待っていた。
実力のない役立たずは消滅し世界の均衡を保つ贄となる。
少女は今、その二度目の試験を受けようとしていた。
これは、そんなフロシュエルという名の天使見習いの物語である。
「はぁい、次の子入って~」
可愛らしい顔で妖艶な体を持つ大天使、ハニエルの声に、一人、また一人と天使見習い達が入口をくぐる。
巨大迷路のようなその場所に、一定間隔で入って行く天使候補たちは、その大半が時間をかけつつも迷路から脱出していた。
知識を調べる試験である。
「はい、終わり~」
舌ったらずな声で、今回の試験候補者たち全員を迷路に入れたハニエルは、迷路出口で時間を計っているお付きの天使、ファニキエルのもとへとやってくる。
「どう~? ファニキエルちゃん?」
「そうですね。五人ほど、優秀な者がいるようです。人間世界で1分以内に脱出してきました」
「まぁ、実験用マウスのための迷路みたいな作りだしねぇ。少し頭が回れば直ぐに脱出できるわよねぇ。空飛べば楽に脱出路わかるしぃ」
「そんな反則まがいの事やったのは数えるほどしかいないでしょう。ハニエル様とかハニエル様とかハニエル様とか」
「えへへ。褒められたぁ」
「褒めてませんよ。はぁ……」
ハニエルと会話したり溜息を吐いたりしながらも、手を忙しなく動かし記録を付けて行くファニキエル。
ようやく全員が出て来た、とハニエルに報告しようと記録用紙を見直して……ふと気付く。
「ハニエル様……」
「なぁに?」
「一人、最初の方に入った天使見習いがまだ出て来てないようですが?」
「……え?」
最初の方? と考える。
ハニエルがこの試験を始めたのは10時間は前だったはずだ。
「ちょっと皆ぁ~、フロシュエルさんっている~?」
天使見習いに声を掛けるも、皆戸惑い周囲を見渡すのみだ。
ここには居ないらしい。
「帰ったとか?」
「それは無いでしょう。今回二度目の試験です。ここでドタキャンすれば消滅は免れませんよ」
「だったら……」
二人して迷路に目を向ける。
迷路は至極簡単な物である。
実験用のマウス用なので何度か壁にぶつかっていればそのうち自然とゴールに辿りつけるモノだ。
どれ程の時間がかかろうとも、5分とかからず出て来れるはずである。
「や、やったぁ! やっと出られましたぁ!!」
そんな事を二人が思った次の瞬間、金髪の少女は赤く腫らして涙の後をつけた目をしながら、ようやく姿を露わした。……入口から。
「おお、私が一番乗りだったですか!? えへへ。今回の試験はなんだか行けそうな気がしたんですよねぇ、えへへ」
一人照れ笑いしながら告げる少女を遠目に、ハニエルとファニキエルは互いに見つめ合った。
アレ、どうする?
……お任せしますハニエル様。
彼女の一次試験は、既に低空座礁してからの出発だった。