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ねこの思い出5「8匹猫にショックを受ける」

作者: 西宮尚

18歳8ヶ月で逝ってしまったねこの思い出をつづります。

そのねこは、最高にかわいい容姿と最悪な性格をしていました。


ある時、私は友人の家に行った。

友人の家には子猫がいると聞いたからだ。

私の家には、ひねくれた大人ねこ一匹しかいないので、純粋な子猫と思いっきり遊びたくなったのだ。


ポテトチップスとかチョコレートとかのお菓子を買って友人の家に向かった。

友人の家の周りには、何匹かの猫がうろうろしていた。

友人の部屋に通されて、飼っている猫を紹介された。

子猫は2匹いた。

が、大人の猫は6匹もいた。

最初はメス猫一匹だけだったけど、その猫が子供を産んで、その子供も子供を産んで、どんどん増えていった、とのことだった。

「避妊手術とかしないの?」

「別に。猫が増えても、居心地が悪くなるとどこかに行っちゃうから大丈夫よ。」

友人との価値観の違いに戸惑った。

猫は、ねこっかわいがりをするのが、一緒に生活する醍醐味だと思っていた。


それでも、子猫はかわいかった。

生後2ヶ月程度で、両手に乗るくらいの大きさだった。

こちょこちょと手を動かすと、目を大きくして、その動く先を追った。

私が求めていたのはこれだ。

ヒネネコは、目を丸く大きくすることもしない。

さめた目で一瞥くれて、フンっとそっぽを向くばかりであった。


でも、このようにかわいい猫とのふれあいも、ポテトチップス(コンソメ味)の袋を開けるまでだった。

コンソメの匂いを嗅いだ猫たちは、色めきたった。

窓から、続々と大人猫が部屋に入ってきた。

子猫は、私に抱かれていたが、逃げ出してポテトチップスの方に向かった。

8匹の猫が、全ての匂いに集まってきたのだ。

「猫って、ポテチを食べるの?」

「あ、これ、コンソメ味。食べるよ。」

「あげていい?」

猫がポテトチップスを食べるとは知らなかった。

「あげてもいいけど… 知らないよ。どうなっても。」


確かに、この猫たちの熱気には並々ならぬものを感じた。

でも、子猫がごはんを食べるかわいい仕草が見たい。

子猫の前に紙を敷いて、その上にポテトを置いた。

その時、体格の良い大きなオス猫が、シャーっと子猫を威嚇したのだ。

「こいつが一番強いからねー。」

友人は、当たり前のように言った。

そして、大猫は、萎縮した子猫たちから、ポテトを奪った。

メス猫は、大猫に媚を売り、すりよる。そして、大猫の目の届かない所で、ポテトを盗み食べる。

一匹のオス猫が、大猫にけんかをふっかけた。

その猫の威嚇に乗った大猫がポテトから離れると、他の猫たちがいっせいにポテトに群がった。

それに気付いた大猫がポテトのところに戻り、他の猫を蹴散らす。

でも、この騒ぎで、ポテトは広く散らばった。

大猫に威嚇されても、すぐに手が出せない場所のポテトに、他の猫も散らばった。

一番弱い立場の子猫ですら、他の猫にお腹を見せながら、必死に端にあるポテトを手で自分のところに引き寄せていた。


私は、この食べ方にショックを受けた。

うちのねこは、えさをねだる時は、後ろ向きに座ってしっぽで一度床を打つだけ。

2回同じ魚を出すと絶対に食べない。違う物を出せと不満を言う。

日が経って鮮度の落ちた魚は、てこでも食べない。

それなのに、ここの猫たちは、こんなに食べることに一生懸命だ。

私も、私の家族も、ねこを甘やかし過ぎていたのではないか?


「人間が食べる分、なくなっちゃうよー」

友人にそう言われたが、私はポテトをあげることをやめなかった。

それでも、猫たちの食欲は落ちず、最後まで争っていた。

そして、ポテトは、ほんの小さいひとかけらも残さずに食べ尽くされた。

食べるものがなくなると、あの熱狂はどこにいったのか、と思うほど、あっさりと猫たちは去っていった。


50年ぐらい前までは、日本人も、この8匹の猫のように生活していたのではないか?

生きることに貪欲で、生命にあふれている。

そして、うちのねこは、現在人に似ている。

なんか、考えさせられる出来事であった。


その後、子猫のうち一匹は、他の友人にもらわれていった。

私は、このことにショックを受けながらも、ねこには贅沢をさせることはやめられなかった。


-(n.n)-

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