第十六話 神といつかの巫女・後
更新遅すぎてすいません。
二度としないことはできませんが、気を付けます(
自重しろと言われても仕方ない。
すいませんでした。
「ギャフン!」
数秒の出来事だった。
謎の青年に捕まって、天輝美さんが隠れてた建物の床下から外へ、そして空中へ、そして屋根、地、そして、建物の中へと、これ抱き抱えられたまま数秒で行われたのでした。
「ん、すまない」
「・・・」
綺麗に落ちた天輝美さんを華麗に立たせます。
「大丈夫か?」
「大丈夫…」
かっこ良さそうないつもの真顔で言われるが、転ばしたのはアンタだろ?的な眼で青年を見る天輝美さん。
「伝世?」
「今帰った」
「早かった、あ・・・早かったですね(呆」
「・・・」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫です…」
頬をさすりながら言う。掠り傷が数ヵ所あった。
「今、手当てをしましょうか」
「いえ、大丈夫です」
「傷だらけ・・・じゃない・・・」
「ほんと、大丈夫です」
「みたいだな」
天輝美の顎の傷は跡も残ることなく、綺麗な肌へ戻った。その様子を見ていた伝世が言うが、お前が言うな、と軽く睨むのであった。
って、あれ?驚かないよ?この人たち。
「はぁ。えと、用事があるん・・・だよね?」
とりあえず、用件を聞こうと問う。
「え?あ、はい。ではこちらへ入ってください」
「りょーかい」
テキトーに返事をして女性についていく。
「伝世も」
「わかった」
伝世も女性が入って行った部屋に移動した。
部屋に入った。
不思議な部屋だ。
何処かで見たことのある景色だ。綺麗な石や葉で飾られた鏡があり、何かの木に鈴をつけたモノが立ててある。
金の印鑑もあった。
周りを見回してみるが、窓と言えるところが一ヶ所しかなかった。しかも、ただ、壁に穴が空いているだけのよう。
「・・・卑弥呼」
ふと声が漏れる。
「そうです。自己紹介が遅れました。私の名は卑弥呼。邪馬台国の王女をやっています」
立ったまま軽くお辞儀する。
「こちらは伝世。私の遣いです」
「よろしく頼む」
軽く睨む。
「よろしく。・・・で、卑弥呼さんはやっぱり、私のこと知ってるんだよね?」
「・・・はい。・・・龍神様、ですよね」
「龍神?」
どうやら、伝世は龍神の存在を知らないようだ。卑弥呼が簡単に説明すると、わかったようでお辞儀をした。
だが、この時代でも龍神の伝が少ないようだ。名前も無く、ただ、龍の姿をした世界の創造神となっている。これだから、天輝美が龍神なのかがわからない者が多いのだろう。わかる者は、神力がわかる者や、龍神を信じる者ぐらいだろう。
「ま、私は龍神だけど、友のように接してくれと嬉しいね」
口調が変わった気がするが、気にしない。
天輝美は友のように接して欲しいと言ったが、実際、そんな簡単にはできない。人など、しかも初対面の者が気軽に神と接する事はあり得ないことだ。この時代、神は天、人はまだ、地だ。
と、なんだかんだ言ったが、結局、天輝美とは友までは行かないが、仲間としての位で接することになった卑弥呼だった。
ちなみに、伝世は特に変わりを見せなかった。
◇
「何やってるんですか」
「匂いをk知神の羽織を畳んでいる」
あきらかに匂いを嗅いでいました。変態ですね。
「アマキミ様は何処へ行ったんだ?」
「ん?邪馬台国」
「・・・確か、争い好きの・・・」
「まぁ、間違ってはない」
「何故其処へ?」
「いや、女王に会わせてやりたくて」
「女王?」
「うん。あと三十年くらいで、卑弥呼って人が女王になるんだ」
「・・・」
「まぁ、三十年後。天輝美も来ると思うから」
「アマキミ様が?」
「イエス」
「信じれん。だが、待つとするよ」
「うん。すまないね」
「ふん。アマキミ様に会うためだ」
なんか、真剣だね。諏訪子。
◇
今、天輝美のいる時代は、諏訪子たちのいた時代から三十一年先の未来。西暦二五三年六月頃。卑弥呼たちと出会ってから一ヶ月が経った。
「今回は、あの村を、私たちの国に入れます」
邪馬台国から三千七百 米ほど離れた位置にあると思われる村を攻め、国の一部にする、という策を建てた。村の人口は八十ほどと見て、その村人と、一万平方米あるだろう土地を手に入れ、国を大きくすることが目標だ。兵士を五十人ずつ、左右から村に攻めさせ、長を倒す。たったそれだけの簡単な事だ。
「第一群は北東へ!第二群は東へ!」
兵士のリーダーとなった男が指示を出し、それを聞いた群はそれぞれの場へ移動した。
「出撃!!」
その声が森に響いた。群は二つに別れ、それぞれの方角から村へ進み始めた。
十時間程かかって村付近に着いた。
夜中だったが、攻める事にした。
「残酷だね」
卑弥呼らが率いた群は、作戦通り挟み打ちで村に仕掛けた。夜間のためでもあを、村の者はすぐに反撃できず、次々とやられ、長を討たれた。
この間、天輝美と卑弥呼は村の建物の屋根に腰を掛け、見物をしていた。
「貴女、神様でしょう。見捨てるのですか?」
「・・・そうだね。見捨てる。神だから、と、誰もがなんでもするわけじゃない。しかも、私は信仰されずとも生きることは出来る。まぁ、信仰されないと困るけどね」
「そう、ですか」
卑弥呼は、神と地球上の生物が差別されるのは仕方がない、と自分に言い聞かせた。だが、心の底でうごめく何かが、とても気持ち悪かった。
天輝美は、自分が変わってしまった事は知っており、自分を呪った事がある。だが、身体は再生し、心は死せず濁るだけだった。
「不老不死は身を不滅にするけど、心は腐滅されるんだ」
二日経った。
人口は増やすあまり増えなかったが、村を国の一部にし、一万平方米を領地にすることができた。
◇
天輝美が姿を消してから五十年ぐらいが経った。卑弥呼という未来を見ることのできる女性が王になり、国を大きく、強くしているらしい。
まぁ、その話を聞いたのはもう二十年近くも前だが。
三年程前、その国に、いつも卑弥呼の傍にいる少女がいるという噂を聞いた。その少女は、少女の姿をした神らしい、という噂も聞いた。
きっと、というか、絶対に、天輝美だろう。
何がしたいのかわからないが、とりあえず、そっとしておくことにした。
翌年、女王が変わったという噂が耳に入った。
◇
西暦二七三年、八月。
今日はやけに静かだ。
まるで、嵐がやってくる前の様だ。
「何をしてるの?」
「ん?何も?」
「そう」
「うん」
「・・・」
「・・・」
先月、やっと自分の部屋を作ってもらった。ちなみに卑弥呼が普段使う部屋の隣だ。
部屋に入ってきた卑弥呼は、天輝美の対面に座った。何処か、暗い顔をしているように思えた。
「・・・何か、悪い未来でも?」
「・・・」
「いや、言いたくないなら言わなくてもいいけど」
「・・・アマキミ様の言う通りです」
「・・・」
「実は、何者かが攻めてくるという未来が見えたのです」
「何処の国?」
「いえ、人間ではありませんでした」
「・・・妖?」
「だと思います。それも、五百は越えると…」
「五百なら楽に」
「____」
「どうして…」
三日後、五百の妖怪が攻めてきた。妖怪同士で争いを起こし、この五百が勝利してきた妖。そして、傷を癒すため、人を喰い、怖れを集めに来たのだ。傷は、妖怪のためほぼ無に等しかった。その中に五体、知識と人間の言葉、能力を持ったものもいた。
「伝世さん!」
「グゥッ、卑弥呼を、守れェエ!!」
「うっ・・・はい!必ず!守り抜いて見せます!!」
「あぁ、頼ん…ダ……」
「ン、シンダ」
「コイツ、イチバンツヨイヤツ。オレタチニトッテハ、ヨワカッタ」
「いや、まだおるぞ?」
「アァ、アイツヲコロシタヤツカ」
「そうだ」
「大丈夫!?」
「えぇ」
「ミツケタ」
「チッ、こっちだ」
国の者は三十人ほど殺られた。妖怪は、五体以外は弱く、被害は結構抑えれた。だが、そこ五体は能力も持っており、伝世もすでに…。
「イタ」
挟み撃ち!?
「邪魔!」
空間ごと妖怪を切り裂く。この妖怪も弱い。やはり、強いのは言葉を一番上手く話せていた奴か?
「破ぜろ!」
「ギャッ!!」
「ウガッ!!」
瞬殺。
やはり弱い。
「うぐっ…」
卑弥呼が消えた。
いや、後方に吹き飛び、天輝美の視界から消えたのだ。
前方に、凄まじい妖気を感じた。
大妖怪だ。妖怪の群を連れてきた大妖怪だ。
卑弥呼を助けなければと、後方へと方向転換した。が、何故か、体は横へと転がっていった。視界が横へとずれ、うつ伏せに倒れている卑弥呼を視界に抑えたものの、ゆっくりと、地面へと堕ちるだけだった。
「なんだ?あっさり斬れてしまったぞ?」
大妖怪は首の転がっている方へ歩いた。その首から下はピクピクッと、時々、小刻みに震える。
大妖怪は右腕を振り上げ、転がっている胴体に向かって降り下ろした。
すぱんっ。
まな板の上で食材を切るように、綺麗に真っ二つに切れた。切ったところから紅い液体が吹き出る。
胴体は紅く染まり、下には紅い水溜まりが出来た。
「アマキミ様!!」
気がついた卑弥呼が叫んだ。
「おぉ?生きてたのか」
天輝美の返事はなく、妖怪の少し低めの声が帰ってきた。
「アマキミ様は!?」
「んん?これか?」
妖怪は転がっている首の髪の毛を掴み、卑弥呼に向かって投げた。
「え・・・?」
「あらら、驚きで声も出やしない、か・・・」
卑弥呼は天輝美と目が合い、はじめて悲鳴を上げた。
「あー煩い煩い。あぁあぁ、そうだった。そう言えばお前、卑弥呼だよな?未来を見るだったか、そんな能力を持ってる人間って聞いて此方に来たんだ。実はな?お前を喰えば、その未来を見る能力をオレの能力と合わせることができるんだ。ちなみに、オレの能力は『物質を切り裂く程度の能力』らしい。ほら、そいつを殺ったのも、この能力で、だ」
いつの間にか、卑弥呼は姿を消していた。
「あぁ、一応言っておくが、感謝しているよ。卑弥呼、お前の能力が欲しいのはオレだけでないんだよ。お前等が邪魔な奴等を消してくれたおかげで、独り占め出来るんだ」
「ひぃ!来ないで!」
「最高にいい気分になれそうだよ」
逃げていた卑弥呼の腕を掴んだ。そして引き寄せ、抵抗する卑弥呼を無視して、肩に噛みついた。
卑弥呼が苦痛の声をあげた。それも無視して肩を噛み契った。
ほとんどの妖怪にとっては、人間の悲鳴や怖れる心、表情、恐怖と苦痛の声は、最高のデザートなのだ。
卑弥呼の服を破り、露になった左胸に噛みつき、契り、食べ、骨も噛み砕き、内臓が出た。適当に食べ、心臓を食べた。
次に頭へ噛み付き、脳を食べた。
「さて、あとはどうしようか」
妖怪は、自信の体が熱るのを感じていた。
「どこかで人間がやっていたな」
下半身に目を移した。
「人間は老いるのが早い」
妖怪は卑弥呼だったモノを食べ、立ち上がり、目を瞑った。
「さぁ、覚醒せよ。未来を切り裂き、新たな能力を我が身に授けよ」
目を開けた。
「『空間と物質を切り裂く程度の能力』か。気に入った。ではおさらばしよう」
妖怪は空間を切り裂き、空間の中へと消えた。
「卑弥呼!!!卑弥呼!!!卑弥っ・・・呼?」
天輝美が見たのは、卑弥呼が来ていた着物と血だけだった。
ふと、後方から妖気を感じた。
天輝美は鋭い目付きで睨み付けた。
「生きてたのか。私の名前は卑裂。未来でマゼノアを殺してくれるらしいな。感謝する。また会おう。その時は女子の姿だろうがな」
妖気が消えた。
卑弥呼の衣服と伝世、殺された者や奴隷が墓に埋められた。そして、五体バラバラにされた少女が森の奥に埋められた。