約束
それから20分程経っただろう。父さんが病院に到着し、橘がオレの病気について詳しく説明していた。
『斗亜君の病気が進むと、今は出ていない症状が出てきます。それは不定期で世間的に発作と呼ばれるものです。』
『斗亜の病気は治るんですよね?』
『はい、治ります。とは残念ながら言えません。』
『!?』
『今すぐには治せないという意味で、斗亜君に適合するドナーを見つけなければなりません。ようするに心臓移植です。その間にも斗亜君の症状は出てくると考えられます。』
『その…ドナーっていうのはどのくらいで見つかるものなんですか……?』
『5年はかかると思ってください。そして今の状況からすると斗亜君には今からでも入院してもらいたいんです。』
『それはムリ。』
『斗亜??あなたなにを…』
『橘…先生。オレ大会続くんだ。だから入院とかムリ。』
斗亜の言葉を待ってましたと言わんばかりに橘が口を開く。
『黙りこくってるからショックでも受けてるかと少し心配したが、それも無駄だったみたいだな。わかってるよ。君はそう言うだろうと思ったんだ。バスケが好きなんだな。』
『当たり前じゃん。そんなこと聞かないでよ。』
今日初めて会ったはずなのになぜこんなにも通じあえているのだろう。
『父さん、母さん。オレ明日からも普通通りに生活するよ?もちろんバスケもするし。』
『で…でも斗亜…』
『いいじゃないか母さん。斗亜、やると決めたからにはやり通せよ?』
『優勝してみせる。』
『あぁ、期待してるさ。』
母さんがなんとも言えない顔をしてオレと父さんの会話を聞いていたところに、橘がすかさずオレに釘をさす。
『その代わり、約束があるんだ。』
『約束??』
『まず発作が出たときは処方する薬を飲んでその日のうちに病院に来ること。次に1ヶ月に1回は必ず検査を受けること。最後に……大会が一段落したら入院して精密検査を受けること。』
『1・2つ目はわかった。でも3つ目は…』
『出来ないとは言わせないよ。斗亜君の為だ。』
『……大会が一段落したらでいいんでしょ?』
『うん。じゃあ今日はこのまま病院で休んで。』
『先生……斗亜をよろしくお願いします!!』
『はい。では失礼します。』
まるで嵐が去ったかのように時間は過ぎていき、時刻は9時を指していた。
『明日、朝7時には迎えに来るからな?用意しとけよ? 』
『父さん、母さん。けい兄によろしく。』
『言っとくよ。おやすみ。』
そう言って父さんと母さんは病室を出ていった。