真っ白
飛んでいったオレの意識が戻ってきたのはあれからどのくらいたった頃だっただろう。
目を開けると意識が飛んでいった時とは真逆の白い天井が広がっていた。
『斗亜?』
『…母さん?』
『あら、意外と早く目が覚めたのね。』
『試合は?今何時?てか、ここは病院でいいの?』
『試合は勝ったわよ。今は6時でここは病院。』
『もう4時間も寝てるじゃん。』
『あっ!もう少しで先生がいらっしゃるわ。』
『柳橋先生?』
『顧問の先生じゃなくて、病院の先生よ。』
『なーんだ。』
―コンコン―
『失礼します。こんにちは、斗亜君。橘といいます。』
『ども。』
『ははっ!なんだか機嫌を損ねたかな。』
『すみません!斗亜、挨拶ぐらいちゃんとしなさい。』
『いえ、構いませんよ。今から少し話をするけど、君はめんどくさがりのようだから、手早く話をしよう。お母さんも聞いていただきたいのですが良いですか?』
『はい、なんでしょう?』
オレの橘というこの医者への印象は"めんどくさい"だった。こいつなんなんだとオレの顔に書いてあったことだろう。
『斗亜君、試合中に倒れた記憶はあるかい?』
『いや、ないですね。』
『まぁ君がここにいるってことは倒れたってことになるんだけど、その理由があるんだ。最初に言っておくと、疲労で倒れた訳ではないってことだ。』
『はい?』
『つまり、それ以外の理由。君が倒れた理由は心臓病だ。』
『へ?』
橘の目はオレを捕らえ、そらそうとしない。
『いいかい。斗亜君は心臓が大きくなってしまう心臓病なんだよ。』
『先生…斗亜が心臓病…?』
『はい。心臓病です。』
『心臓が大きくなる?』
『それを肥大っていうんですけど、症状として脈が止まったり、跳ねたりする、不整脈や動悸と呼ばれるものがあったり、呼吸困難などの様々な症状があります。さらに詳しいことはお父さんも一緒に聞いていただきたいのですが、お父さんはどちらに?』
『今向かっているとのことで…』
『ではお父さんが到着されましたらお声かけ下さい。私はナースステーションにいますので。』
そう言って橘は病室を出ていった。