我が母に捧ぐ。
お母さん。
私が産まれたとき、貴方は私より先に泣いたそうですね。
私が産まれる直前まで、苦痛に顔を歪めていたというのに、貴方は誰よりも先に私の命を喜んでくれました。
有難う母さん
小学生のときの私は典型的な[いじめられっ子]で、毎日学校から泣いて帰っていました。それでもこうして、グレずに生きてこれたのは、貴方がいたから何ですよ?
有難う母さん。
中学生のときの私は、いつの間にかいじめられっ子からいじめっ子になっていました。知っていましたか?
あのときの私は、貴方を裏切っている自分が嫌いで、嫌いで仕方ありませんでした。
母さん、
思えば親不幸な私です。
思えば裏切ってばかりです。
そんな私にも妻ができ、子供を授かり、ようやく貴方に孫の顔を見せられると思っていました。
母さん、
見ていますか?貴方のように笑顔の似合う私の子。貴方に孫を見せたかった。
逝くな!!と言う願いは叶いませんでした。
だからせめて、貴方は上から、私達家族を見守って下さい。
―――――あー、あー
――――――え〜、それではここで、喪主である長男の祐一様よりご挨拶を頂きます。
「………皆様、本日は暑い中、母、吉江の葬儀にご参列頂き、まことに有難うございます。こうして沢山の方々に見送ってもらえる母を見て、つくづく愛されていた人だったのだなぁと思います。本日は本当に有難うございました。」
「…………皆様、………皆様どうか母の事を忘れないで下さい。母の笑顔を忘れないで下さい。母の声を忘れないで下さい。私の母が皆様の心の中に生きていて欲しい。そう切に思います。」
葬儀も終わり、私は泣いて、泣いて、泣いた。妻とも一言も会話をせずに泣いた。
そんな私をみて、泣き虫な私をみて、夢に母が出て来た。
母は怒っていた。
笑顔で怒っていた。
「愛する一人息子が泣いていたら、天国に行けない。」
と母が言った。
「なら逝くな!!」
と叫んだ。
母は少し困った顔をした後、もう一度だけ笑い、そして消えた。
―――――朝、
目が覚めて横にいた我が子の笑顔は、夢で見た母の笑顔だった。
味噌汁の臭いにつられていった台所にいた妻。振り返ったときの笑顔は、夢に出て来た母の笑顔だった。
私の愛する人々に、母が生きていた。
有難う母さん。
これからも、私達家族を、見守っていて下さい。
皆さんこんにちは。来々です。今回の作品は、以前に投稿した作品なのですが、この当時の私は、この作品に納得がいかずに、思わず削除しました。ですが今回、軽く手を加えてみると、なんだか好きになれそうだったので、再投稿となった訳です。こんな馬鹿な私ですが、次回もご期待下さい。