おごそかなお話
おごそかとは、威厳があって近寄りがたいくらい神聖な様子です。
でも今回のお話はそこまでハイレベルではなく、ちょっと丁寧な感じかも。
その森ではイチジクの木が実をつけていた。
小さなタヌキくんと、頭に王冠のようなものを乗せた白いおサルさんがいる。
二人の間にあるお皿には、おせんべいが乗っている。
皿の横には湯気のあがる湯呑も置かれていた。
「んとね、白猿さん。言葉をていねいに言うとき、あたまに『お』をつけることがあるの」
「そうだな。『お言葉』『お金』『お話』などだ」
「それとは別に、あたまに『ご』をつけることもあるよね。『ご意見』とか『ご冗談』とか」
「そうだな」
「『お』をつける言葉と、『ご』をつける言葉は、どうやって区別するの?」
「基本的には、訓読みの言葉には『お』、音読みの言葉には『ご』をつけるんだ」
「あっ、本当だ!」
「ただし、例外もある。『散歩』は音読みだけど『お散歩』と言うし、『最も』は訓読みだけど『ごもっとも』と言う」
「じゃあ、やっぱり感覚的に覚えるしかないのかな」
「そういう面もあるな。ちなみに、『お』や『ご』は、どんな言葉にでもつくわけではないぜ」
「そうなの?」
「まず、相手の行為や物事を丁寧に表す場合につく。『お言葉』『ご意見』などだな」
「んとね、『お支払い』や『ご請求』もそうだと思うの」
「そのとおり。次に、目上の人の言動を敬う意味で使う場合もある。『校長先生のお言葉』『来賓のご出席』などだ」
「目の前の相手や、目上の人をうやまうときに使うんだね」
「それ以外にも、『お』や『ご』をつけた形がすっかり定着していて、外すと不自然になる言葉もある。『おはよう』『ごはん』などだ」
「なるほど。じゃあ、『はよう』とか『はん』だけだと……」
「うん。たぶん、何を言っているのか伝わらないな」
「じゃあ、ていねいな言葉って、頭に『お』や『ご』をつけるだけじゃなくて……」
「相手への気持ちも一緒につけるもの、ということだぜ」
「んとね、女の人の方が言葉に『お』をつけることが多い気がするの」
「うん。たとえば野菜は音読みだけど、お野菜と呼ぶこともある。女性がつかう丁寧な言葉になっているな。小説やドラマでは女性らしさを出すために、言葉に『お』をつけることもあるぜ」
「時代劇なんかで『お菊』とか『お松』とか、女性の名前に『お』がつくこともあるの」
「江戸時代の庶民で使われた呼び方だな。本名が『菊』という女性に、親しみをこめて『お菊さん』と呼んでいたんだ。男性の場合でも、『お坊さん』『お侍さん』のように、身分や職業に対して『お』をつけることもあるぜ」
「じゃあ、白猿さんをていねいにいうと、白いおさるさんでいい?」
「無理につけると『おせっかい』になるかもな」




