<目覚めの日、到来!>
某日の日本時間、午前4時過ぎ。リピウスはまだ眠りの中にいた。
ふと、奇妙な振動を感じて目が覚めた。
(……なんだ、この振動は)
布団の中でじっと感覚を研ぎ澄ませる。
通常、地震や近所の工事などで振動を感じる際は、地面の下から突き上げてくる感覚がある。だが、今回のものは明らかに違っていた。
(大気が……震えている?)
リピウスが感じたのは、大気全体が共鳴しているような震えだった。高い空の上から、目に見えない重い波が降りてくるような感覚。
(妙だな……)
そう思って体を起こそうとした、その瞬間だった。
ドォォォォォン、と重圧が押し寄せ、大気圧が一気にリピウスの体に覆い被さってきた。
「うっ……!!!」
思わず呻き声を漏らし、全身を硬直させる。体が押しつぶされそうな重圧。胸のあたりには、内側から圧迫されるような鈍い痛み走った。
しかし、その感覚は数秒ほどでスーッと引いていき、大気の振動も収まった。
リピウスはすぐにベッドから立ち上がろうとしたが、激しい立ちくらみに襲われ、たまらずベッドの端に腰を下ろした。
「ふぅ……」
深くため息をつき、痛みの残る胸を押さえる。
(……大丈夫そうだな)
自分の無事を確認すると、改めて立ち上がり、リビングへ急いだ。
リビングでテレビのスイッチを入れる。
映し出されたのは、異様な光景だった。
元国営放送のニュース画面なのだが、そこには机に突っ伏したまま意識を失っているアナウンサーの姿があった。
慌てて他のチャンネルに切り替える。
ある局では、クラシック音楽を背景に美しい自然の映像がただ流され続け、別の局では通販番組が止まったまま。画面自体が砂嵐のように乱れている局もあった。
その中で、ようやく動きのあるニュース画面を見つけた。意識を取り戻したばかりなのか、苦しげに顔を上げ、呆然と辺りを見回しているアナウンサーの姿が映る。
再び元国営放送に戻すと、画面は既に「少々お待ちください」という静止画に切り替わっていた。
「何が起こっているんだ……?」
リピウスにも状況が全く把握できなかった。
とりあえず霊力ドローンを発進させ、近所の様子を確認し始める。
すると、近くの幹線道路では事故が発生していた。それも一箇所ではない。あちこちで車が衝突し、止まっている。
「運転中に……一斉に意識を失ったのか?」
リピウスは戦慄し、さらに都内のアクセスポイント経由で数台のドローンを飛ばした。
やはり都内でも至る所で事故が発生していた。火災が発生しているのか、遠くに黒煙が上がっているのも見えた。
そうこうしているうちに、ニュース放送が再開された。
アナウンサーの声は、明らかに震えていた。彼は日本中で異変が起き、甚大な事故が多発していることを、途切れ途切れに告げた。
その後、時間の経過と共に、絶望的な情報が次々と報道され始めた。
政府からは非常事態宣言が発令され、国民への注意事項が示されたが、社会全体がパニックに陥り、機能不全を起こしているのは明白だった。
さらに、これは日本だけでなく、世界中で同時に発生していることも判明していく。
「全人類の、封印解除が行われたのか……」
リピウスは、そう結論を下すしかなかった。
後にこの大惨事は、歴史上で**『目覚めの日』**と呼ばれることになる。




