<時は来た!>
リピウスが霊力に目覚めてから2年が過ぎた秋のある日。天界のシステム管理センターに、再び激震が走った。
その日も大規模なシステム検査のため、大勢のエンジニアたちが作業を行っていた。
所長と副所長も陣頭指揮をとり、管理室に詰めて状況を見守っていたが、突如として巨大モニターに警告メッセージが表示され、大音量の警報が鳴り響いた。
「な、なんだ? 何が起こっているのだ!」
所長が慌てて周囲を見回しながら声を上げた。
巨大モニターの画面は真っ赤な文字で、**『異常事態発生!』**と大きく映し出されている。
副所長も画面を見つめて唖然としていたが、そこへ検査プロジェクトのリーダーであるベテランエンジニアが駆け込んできた。
「大変です! システムの制御が不能状態に……!」
エンジニアの震える声に、所長も副所長も真っ青になった。
その間にもシステムは警報を鳴らし続け、全ての監視モニターに『異常事態発生!』の文字が点滅する。
すると、警報の中に機械的な音声が混じり始めた。
『警告。管理規定数を超えました。
これよりシステムは、第1人間界の環境保全のため、封印システムを全面凍結。
第1人間界の封印を全て解除いたします』
警告メッセージは繰り返し発信され続けている。
そして、メインモニターには巨大なカウントダウンタイマーが表示された。
そこに刻まれた残された時間は、わずか「1時間」しかなかった。
「ど、どういうことだ! 管理規定数とは何だ!」
駆け寄ってきたリーダーも、頭を振りながら応える。
「分かりません! こんな処理、仕様書のどこにも見当たらないのです!」
「こ、これは不味いぞ……。すぐに環境庁へ連絡しろ! 1時間後には、第1人間界の封印が全解除されるぞ!」
この報告は瞬く間に関係部署へ伝達され、さらなる憶測と混乱を巻き起こしていった。
* * *
~ ヨルダ老師の庵 ~
「老師、大変です!」
デュークが庵の奥へと駆け込んできた。
「なんじゃデューク、騒々しい」
「第1人間界の封印が、間もなく全解除されると連絡が入りました!」
「な、なんじゃと……!」
~ 第1人間界監視員本部 ~
「おい嘉助! 封印が全解除されるって本当なのか!」
杏子が事務所に飛び込んできて叫んだ。
「残念ながら、本当のようだね……。タイムリミットはあと40分程度らしいよ」
「落ち着いている場合かよ! どうするんだよ!」
「僕だって慌てているのだよ。でも、いきなりだからね。……とにかくERIや協力者、それと各国の窓口へ即座に連絡を入れさせよう」
「そ、そうだな。それしかないな!」
杏子は再び事務所を飛び出していった。
~ 幽界・閻魔宮 ~
「大変です、閻魔様!」
閻魔宮の官僚が、閻魔の元に飛び込んできた。
「どうした?」
「今、環境庁から『第1人間界の封印が1時間後に全解除される』と連絡がありました!」
「なに!!!」
閻魔は思わず立ち上がって叫んだ。しかし、一瞬の間をおくと、すぐさま指示を飛ばした。
「至急、死神たちに連絡し、第1人間界に向かわせろ! 総動員で警戒にあたらせるのだ!」
~ 天界の怪しい屋敷 ~
いつもの4人が円卓を囲んで密談していると、スッと隅に気配が現れた。
「どうした?」
「はっ! 只今、環境庁から、第1人間界の封印が間もなく全解除される見込みと通達されました」
ガタンと椅子を鳴らして、4人が一斉に立ち上がった。
「来た――!!!」
「ついに来たのですな」
「よし! これで事は成った。あの予言が今、現実となって現れる瞬間だ!」
「時は来たのだな!」
4人の顔は、喜びに満ちあふれていた。
会長と呼ばれた男が、すぐに影に向かって指令を下す。
「すぐにダーズリー卿にも連絡しろ。間もなく『宴』が始まるとな」
その声を聞くと、隅にいた気配は音もなく消えた。




