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<広がる混乱>

ヨルダの話を受け、学園長や閻魔、ハンター協会長らによる「悪魔伝説が流布された時期に夢幻の塔を訪れた者」の極秘調査が開始された。

そんな中、人間界では封印解除された能力者たちの動きがいよいよ目立ち始めていた。


霊力爆発による事件、そして能力を悪用したと思われる犯罪の増加が、人間界に深刻な混乱をもたらし始めていたのだ。


「嘉助! そろそろ不味い状況になってきたぞ」

杏子がWEBニュースに目を向けると、そこには能力者絡みと推測される凄惨な事件や事故がいくつも掲載されていた。

「もう完全に能力者の存在が、一般にも知れ渡ってしまったね」

「まだ各国政府に動きは無いのか?」

「主要国は既に水面下で動いているよ。でも、表立って認めるまでにはまだ時間がかかりそうだね」

「全く……トロトロやってないで、いい加減現実を認めろってんだよな」

「政治ってのは、そういうものさ」


主要国では能力者犯罪に対抗するため、密かに特殊部隊を創設し、ERIの協力のもとで訓練を進めていた。しかし、政府主導での公表を躊躇う首脳も多く、体制の確立が追いつかない。対応できる能力者も限定されており、現場は混迷を極めていた。


「そういえば、この間老師が言っていた『悪魔伝説』については、何か進展はあったのかい?」

ニュースから目を離さずに杏子が尋ねた。

「ああ、どうやらビンゴらしいよ」

「やっぱり、四仙会が関与しているってことか?」

「確証はないけどね」


嘉助によれば、四仙会の会長が該当時期に夢幻の塔を訪れていたことが判明したという。さらに、その直後から当時下っ端官僚だった彼の政治活動が活発化し、伝説流布後の混乱に乗じて評議会議員に当選していたことも分かった。


「ただ、今のところは全て状況証拠でしかないんだ。悪魔との関わりも見えないし、彼が伝説を流布したという直接的な証拠も無いからね」

「それだけじゃ、黒幕だと突きつけるのは無理か……」

「封印の件はどうだい? 進展は?」

「そっちも大混乱だよ。管理センターからシステム異常が報告されて調査が進んでいるけど、原因は不明。謎の異常警告は頻度を増し続けている」

「システムを止めるとか、根本的な対処はできないのか?」

「僕もシステムのことは詳しくないけど、止めるのは無理らしい。人間界ごと『時』を止めない限りはね」


「今、封印解除の件数はどこまで増えているんだ?」

「現時点で、月あたり300件ちょっとかな。推定される能力者の総数は、約3千人に達しているみたいだね」

「増えたな……。この1年で、随分と増えてしまったな」


* * *


別な意味で、混乱の波紋の中にいる者たちがいた。

天界の外れにある屋敷の奥の間。円卓を囲む4人の姿があった。噂の『四仙会』の面々である。


「会長、聞きましたか?」

「老師の件か」

「はい。老師だけでなく、閻魔や学園長、ハンター協会の会長まで動いているようです」

「思ったより勘の良い連中だな」

「大丈夫でしょうか? ミカエル様に知れると厄介なのでは……」

「ふん。奴らには何もできはしないさ。おい! 管理センターの方はどうなっている!」


会長と呼ばれた男が、部屋の隅を睨みつけながら苛立たしげに声を上げた。

衝立の陰には、密かに控えている者がいた。

彼らは霊界のハンターでありながら、「闇ギルド」と呼ばれる裏の組織に属する者たちだ。正規の資格を持ちつつ、天界人からの汚い依頼を請け負う。その実態は秘匿され、誰が所属しているかは上層部しか知らない。

隠密、情報収集、流言による工作を得意とし、天界・霊界・魔界・人間界をある程度自由に行き来できる特異な集団である。


「はい。環境庁の査察が入り大掛かりな調査が行われていますが、今のところ何も掴まれていない様子です」

「……まだ、時は来ないのですか? 周囲がだいぶ騒がしくなっているようですが」

円卓の一人が、怯えた様子で尋ねた。


「間もなくだ。もう、それほど長くは無いはずだ」


会長は自分に言い聞かせるように、低く応えた。

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