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<黒幕の存在>

ヨルダ爺は、デュークを伴ってリピウスのもとを訪れていた。

リピウスにあの「悪魔伝説」を見てもらい、意見を聞こうと思ったからである。


いつものようにリビングのテーブルに着き、メイさんが入れたコーヒーを啜る。

リピウスはヨルダ爺から悪魔伝説の内容を聞くと、しばらくの間、無言で考え込んでいた。


「どうじゃ?」

ヨルダ爺が少し身を乗り出して、反応を催促した。


「そうだね~……。たまたまじゃないか?」

リピウスは、あっさりと切り捨てた。


「おいおい、随分簡単に言うなよ!」

デュークは不満げに声を荒らげる。

「なんだよ。デュークは人間に悪魔が支配された方が良いのかよ」

リピウスも即座に反撃する。

「別にそうじゃないけどさ。ヨルダ爺が真剣に悩んでいるんだから、少しは真面目に考えてくれよ」


リピウスは非常に不満そうな顔をしていたが、ヨルダ爺の縋るような眼差しに負け、再度真面目なトーンで答え出した。


「これが本当に『女神さまの預言書』だとしたら、たぶん近々、霊力の封印が全面解除される可能性もあると思うな」

「ほう!」


「でも、ジンさんは『人間と悪魔しか出てこないから、預言書の内容としてはあり得ない』って言っていたぞ?」

デュークの疑問に、リピウスはニヤリと笑った。


「あのな。この記事が『女神さまの預言書』の全文だって、誰が決めたんだ?」

「……どういうことじゃ?」


「例えばさ。本当は天界人が関与していたとして、もしそんな内容が世間に知られたら、そいつにとっては不都合だろう? だから、自分たちに関わる部分を隠して世間に流したんじゃないか?」


「そ、そうか! そうだよな!」

デュークは得心がいったように膝を打った。


「なるほどな……。じゃが、天界人が人間界に深く関わるとは思えんし、ましてや悪魔に関与するなど、本来はあり得んことじゃが……」

「あるだろ。人間界が滅亡するって騒いでいる天界人が、現に居るじゃないか」


「あ! 確かにおったな!」

ヨルダ爺が珍しく大きな叫び声を上げた。


「おー! 今日のリピウスは、ひっさしぶりに冴えてるな!」

「誰が久しぶりだ! 俺はいつだって冴えまくってるぞ」

ドヤ顔で言い返すリピウスを横目に、ヨルダ爺はしきりに感心している。


「ふむふむ。そう言われると、全てが繋がってくるようじゃな」

「とりあえず、その霊界新聞の時期が分かるんだから、該当する時期に『女神さまの預言書』を見に行った人物を確認してみたらどうだ?」


「ヨルダ爺、そういうのって調べられるのか?」

「うむ。『女神さまの預言書』は夢幻の塔にあるからの。文化庁の記録を見れば、閲覧者名簿が残っておるかもしれん」


「だけどよ。仮にそんな悪事を企む天界人がいたら、魂が汚れまくって、天界には居られないんじゃないのか?」

デュークが不安げに尋ねる。

「うーむ……。それもそうじゃのう」


「その辺の理屈は置いておいて、まずは調べてみたら良いじゃないか。黒幕の存在が分かれば、色んな問題も解決するかもしれないしな」


リピウスの言葉に力強く頷くと、ヨルダ爺は「早速調べに行く」と言い残し、足早に霊界へと戻っていった。

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