<デュークが大出世?>
ヨルダ爺が一通り悪魔について話し終えると、リピウスもしばらく考え込んでいた。
「なあ、あの3人組って全員『上級悪魔』なのか?」
「そうじゃよ。両側の二人は、600年前にダーズリー卿と共に姿を消した奴らじゃな」
「上級悪魔ってのは、やっぱり強いのか?」
「そうじゃな、奴らにも二タイプおってな。戦闘タイプなら聖騎士団でも、隊長クラス以外は一対一では厳しいじゃろうな。だが最も恐ろしいのはダーズリー卿のような『知略タイプ』じゃ」
ヨルダ爺は少し声を落として続けた。
「戦闘力は低めじゃが、様々な能力を駆使して翻弄してくる。何より非常に知能が高く、狡猾な戦略家でもある。何を考えているのか、いまだに全くわしらにも分からんのじゃよ」
「あのガッチリした大男は、絶対戦闘タイプだよな。あー! やっぱり杏子とのガチな対決が見たかったな」
「お前な!」
戦いを楽しもうとするリピウスに、デュークは妙に腹立たしくなってしまった。
「しかし、なんで俺が行く所に3人組も出てくるんだろうな」
「やはりリピウスは、何かを『持っておる』男なんじゃよ」
ヨルダはどこか楽しそうだ。
「でもよ、以前悪魔が出現した時は、即座に死神にも戒厳令が出て巡回が停止されたんだぞ。なんで今回は出ていないんだ?」
デュークが再び不安げな表情に戻る。
「おそらく、今回は新たな悪魔が発生している状況ではないからじゃろうな。下手に戒厳令など出すと、かえって混乱を招きかねん」
「うーん……でも、なんか納得できないんだよな」
「上級悪魔なら放置していても大丈夫なのか?」
リピウスが素朴な疑問を口にした。普通なら最悪の存在こそ真っ先に排除すべきに思える。
「上級悪魔はの、悪魔落ち直後の『飢餓状態』以外は、自ら人間を襲うことはまず無いんじゃよ。彼らが人間を喰らいたい時は、下僕たちが用意するからの」
「その下僕たちってのも、どこかにいるってことだよな?」
リピウスは納得いかない様子で首を捻っている。
「まあ、いるじゃろうな。だがこの200年間、特に目立った活動は確認されておらん。その意味でも、奴らが姿を現しただけで即・戒厳令とはならんのじゃよ」
「でも、やっぱりおいらは怖いな……」
震えるデュークを横目に、ヨルダ爺が唐突に切り出した。
「それよりデュークよ。おぬし、今日からわしの『秘書官』にならんか?」
「「え?」」
二人の声が重なった。
「ヨルダ爺、いきなりどういうことだよ」
「うむ。わしも最近色々と忙しくなってきておるしな。この際、デュークに秘書官をしてもらえれば助かると思っておったんじゃ」
「おいらにとっても嬉しい話だけどよ……なぜこのタイミングで言う?」
デュークは喜びと困惑が混ざった複雑な表情を浮かべる。
「いやな、以前から考えておったんじゃよ。それに秘書官になってもらえば、悪魔などの禁則事項も相談しやすくなるしの」
「お! デューク、大出世じゃん。給料も上がるんじゃないか?」
リピウスは喜び半分、面白がっているのが半分といった顔ではしゃいでいる。
「隠居爺の秘書官じゃからそれほど期待されても困るが、一応『公費』として支給はされるな」
「うん……そういうことなら!」
「おー! 引き受けてくれるか」
ヨルダ爺は実に嬉しそうである。
「デューク、おめでとう!」
リピウスも、よくは分かっていないものの、親友の門出を祝うように声をかけた。
「よし! 早速閻魔に話をつけに行くかの」
そう言うと、嬉々としたヨルダ爺はデュークを連れて、そのまま幽界へと向かってしまった。




