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<やっぱダメじゃん>

ヨルダ爺がリピウスに注意した点は、「無闇に強い霊気を発したりしないこと」だった。

霊力を使えば、その威力に応じて霊気が発せられる。その量が過大になると、霊界に察知されることもあるのだという。


「昨日、体と霊魂を一体化させるのに霊気を発したけど、あれってマズかったってこと?」


「いや、あの程度なら全く問題はないじゃろう。恐らく、リピウスが全力で霊気を発したらアウトじゃろうな」


「なら、さっき手のひらから霊気を出したりしたのも問題はないんだね?」


「うむ。全く問題はない。ただ、さっきのようにイライラして感情が高まってしまうと、自然に強い霊気が発生してしまうこともある。そこは注意してほしいがの」


「うん。気をつけるよ」


「そして一番気になるのは、『自然発生霊気』の量じゃな」

そう言ってヨルダ爺がデュークに目配せすると、デュークは空間から丸い機械のような物を取り出した。


「これは死神たちも持っている『霊力探知機』じゃ」


それは某アニメの、例の玉を探すレーダーのような形をしていた。

「デューク、すまんが探知範囲をわしらも映る程度にしてくれるかの?」

デュークは頷くと、何やら操作をしてから探知画面を見せてくれた。

そこには三つの点が映っていた。


「ほれ、これがこの部屋で発生している霊気の探知結果じゃよ」


リピウスが画面をじっと見つめると、三つの点にはそれぞれ数字が添えられていた。一つだけ、数字も点の大きさも桁外れなものがある。


「この『8』と『12』がわしとデュークじゃ。そして……この大きな点の『220』というのがリピウスじゃよ」


「え! 俺、めちゃくちゃ目立ってるじゃん! これ、ダメじゃん!」


画面に映る自分の点は、二人のそれよりも遥かに大きく、不規則に脈打つように輝いている。まるで調整の狂ったラジオが、ノイズを撒き散らしているかのようだ。


「ま、まあ落ち着きなさい。こんな場所で霊力探知機を使う者などおらんのだから。それに、落ち着いて考えれば、リピウスならこの理由も分かるじゃろ?」


少し間を置いてから、リピウスは小さく頷いた。

ヨルダ爺の言っている意味が、リピウスにも理解できた。


これは「霊魂から自然に漏れ出している霊気の量」を示しているのだ。

霊力とは、霊魂が持つ精神エネルギーを利用した能力の総称。実際に能力を使う際は、霊魂から必要量の霊気を放出して利用する。霊力値が大きいほど、より多くの霊気を扱えるため、高度な能力や威力の高い技が使えるようになる。


それとは別に、霊魂は人間が呼吸するのと同じように、常に自然に霊気を放出している。

その分、霊魂は空気中からマナを吸収して霊気を補充する。

つまり「魂の呼吸」とは、マナを吸収して霊気を吐き出す行為なのだ。

要は、呼吸によって排出される霊気の量が、リピウスだけ桁違いに大きいということだ。


「これって、俺の霊力制御ができていないからだよね」


「うむ。霊力値そのものが大きいこともあるが、それ以上に制御不足が主因じゃな。それに霊体離脱をした影響で、霊魂もまだ不安定な状態にあるのかもしれん」


「でも、220から一気に二人のようなレベルまで下げるなんて、できそうにないけどな……」


「実は、わしらの本来の霊気量は50〜80程度なのじゃよ。数値がこれほど小さいのは、わしらの義体が『霊気吸収再生タイプ』になっておるからじゃ」


「ヨルダ爺のは高級品だから再生率90%だよね。おいらのは普及品だから80%だけどな」


「へぇ……義体のスペックって重要なんだね。そうか、人間界ではマナが薄いから、リサイクルしないと厳しい面もあるってことか。それにしても、目立たなくなるような工夫がしっかり取り入れられてるんだね」


「まあ、そういうことじゃ。なので、できれば霊力制御を訓練して、とりあえず二桁程度まで下げた方が良いじゃろうな」


「そだね〜。おいらたちも通常は100以上に設定して使ってるからさ。100未満なら探知にかかることはまず無いと思うぞ」


ちなみに、死亡して迷子になったような不安定な霊魂は、最低でも100以上の霊気を放出しているという。

また、霊力を使えない一般人の場合は、封印の効果もあって数値は「0〜10」前後だ。

ヨルダ爺とデュークは義体を使うことで、一般人に近いレベルまで霊気量を偽装しているということだった。


「……分かった。その程度なら、なんとかなるかもしれないね」

そう言いつつも、内心では(厄介なことになってしまった……)と、リピウスは沈んだ気持ちを抱えていた。


「まあ、このあたりで霊力探知機を使う者などおらんじゃろうから、それほど慌てなくとも大丈夫じゃとは思うがの」


デュークの持っている霊力探知機は、最大探知範囲が半径500メートル程度。

その範囲内に探知機を持つ者が現れない限り、即座に問題になることはない、ということだった。

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