<観たかったよ~>
翌日、デュークとヨルダ爺がやってきたので、リピウスは池袋での事件を報告した。
「お前、よくそんな連中に何度も遭遇するな」
デュークは少々呆れ気味に言った。
「そうだよね。俺、滅多に東京なんて行かないのにさ。なんで行くたびにあのアリエナイ不気味な三人組に出会うんだろうね?」
リピウスは理不尽だと言いたげに頬を膨らませている。
「ほっほっほ。それは運命じゃな。リピウスは何かを引き寄せておるようじゃ」
ヨルダ爺は、案外楽しそうであった。
「やっぱお前は、引きこもっているのが一番みたいだな。何か動くたびに、ロクでもないものを引き寄せるんだからよ」
「ところでヨルダ爺、この赤髪の女性って知らないか?」
リピウスがドローンの映像を見せると、ヨルダ爺は即座に頷いた。
「ふむ。これは杏子じゃよ」
「杏子?」
「うむ。副監視長じゃ。霊界一……いや、宇宙一の戦士じゃな」
「「宇宙一!!!」」
二人は驚きの声を上げた。
「そうじゃよ。流石のリピウスも、杏子には勝てないじゃろうな」
「メイさんよりも強いのか?」
「当然じゃよ。杏子に勝てる者は、わしの知る限りではおらんじゃろうな」
その言葉を聞いた瞬間、リピウスは頭を掻きむしりながら喚いた。
「うわー!!! 杏子のガチな戦闘、見たかったよ~! なんで一番いいところで消えちゃったんだよー!!!」
「おいおい、落ち着けよ。あんな人が多い場所で戦闘を始めたら、それこそ最悪だろうが」
「そうじゃぞ。だから杏子は『次元結界』で隔離したんじゃろうな」
「次元結界?」
「なんじゃ、リピウスなら知っておるかと思っておったがな」
「いや、なんだよその格好いい技……!」
「ほっほっほ。格好良いかのう?」
ヨルダ爺の説明によれば、次元結界とは「範囲結界」と「ディメンション・ルーム」を併せ持ったような能力で、主に聖騎士団が得意とする霊能力なのだという。
「ふ~ん……。聖騎士団が使う技なのか」
「お前、絶対にこの後試そうと思っているだろう」
「うっ! ま、まあな。だって俺も一回くらい『領域展開!』とか言ってみたいじゃん」
「アニメの見過ぎだぞ」
リピウスはひとしきり騒いだ後、ふと思い出したように首を傾げた。
「あ~あ……杏子の戦闘シーン、観たかったよな……。あれ? でも、杏子がすごく悔しそうにしていたんだ。彼女、あの三人組に勝てなかったのかな?」
「いや、恐らく三人組に逃げられてしまったのじゃろうな。まともにやり合えば、杏子が後れを取るとは思えんからの」
「次元結界を破られたってこと?」
「うむ。相性が悪そうじゃからな」
ヨルダ爺が言うには、杏子は純粋な「武闘派」の戦士であり、次元結界などの技巧系能力はさほど得意ではないらしい。それに対してダーズリー卿は「時空間系」の能力に長けており、その技術差で結界の隙を突かれたのだろう、との事であった。
「相性か……。その辺も今後の課題だな」
リピウスの目は、既に「新しい技術への興味」でキラキラと輝き始めていた。




