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<え? 俺って監視対象なの?>

肉体への復帰を果たした翌日。ひとまずの平穏を取り戻した俺の元へ、昨日の「命の恩人」たちが再びやってきました。お礼のコーヒーとケーキで和やかなティータイム……のはずが、話は思わぬ方向へ。霊界の「スカウター」で測られた俺の数値、そして明かされる衝撃の事実とは?

翌日の昼過ぎ、ヨルダ爺とデュークは連れ立って再びリピウスを訪問した。

リピウスは昨日と同様にコーヒーを淹れ、さらには美味しそうなケーキまで用意して二人をもてなした。


「おほぉ〜! 美味そうなケーキだな。こんなの食べるのは何十年ぶりか!?」

デュークは嬉しそうに、ケーキをなめるように見つめながら叫んでいる。


「リピウスよ、あまり気を遣わんで良いのじゃぞ」

ヨルダ爺はそう言いながらも、ケーキから目を離さずにいた。


「いえいえ、二人は俺の命の恩人ですからね。昨日のお礼を兼ねて用意したので、気兼ねなく食べてください。このケーキ屋、近所でも評判のお店なんですよ」


しばらくケーキを楽しんだあと、ヨルダ爺が口を開いた。

「さて、昨日の続きじゃが……その前に、リピウスの霊力値を測定させてもらえんかな?」


「霊力値を?」


「うむ。昨日わしが感じた霊力は、かなり高い数値だった気がしたのでな。このあと話す内容にも関係してくると思うので、まずは測定させてほしいのじゃよ」


リピウスは少し考えていたが、ヨルダ爺に向かって小さく頷いた。

それを見て、ヨルダ爺はゴーグルを取り出して顔に装着した。


「お! それが測定装置なのか? 某アニメのスカウターみたいだな」


リピウスが言うと、即座にデュークが返した。

「その某アニメの影響を受けていると思うぞ。なにせ霊界でも大人気アニメだったからな。一時はそれを装着して『お前の戦闘力はそんなものか!』なんて言い合うのが流行ったくらいだからな」

どうやら霊界の住人も、人間界のアニメには興味津々のようだ。


そんな会話の最中にも、ヨルダ爺はゴーグルを操作し、リピウスの霊力値を測定し終えた。


「ふむ……。思ったほどではないか」


ヨルダ爺の呟きを聞いて、デュークが尋ねる。

「よう、どのくらいだったんだい?」


「ふむ。霊力値はおよそ22万じゃな。適応属性は『風』。適応系統は『操作系』が一番のようだな」


「ほぇ〜! 22万とは凄いじゃないか! おいらなんて1万ちょいだぞ。おいらの20倍以上あるなんて、将来の天界人候補じゃねえか!」


「ん? 22万っていうのは、そんなに凄い値なのか?」


「凄いなんてもんじゃないよ! 霊界でも大部分が1万〜3万程度なんだぜ。10万以上あれば引く手あまたの高能力者扱いだし、20万以上なら天界人も夢じゃないレベルなんだからな」


ヨルダ爺も大きく頷いた。

「うむ。デュークの言う通り、22万という値は現在の人間界でもトップクラスの値じゃろうて。……じゃが、正直に言うと、わしが昨日感じたものはもっととてつもない霊力じゃったのだがな。まあ、測定結果が出た以上は疑いようもないが……」


そう言いながら、ヨルダ爺は考えていた。

(22万……。確かに普通に見れば人間としては最上級の値。じゃが、どうも違和感を感じるのはなぜじゃ? ……ふーむ。まあ、しばらくは様子を見てみるしかなさそうじゃな)


「さて、では本題に入るとして、リピウスから何か聞きたいことがあれば聞いておこうかの?」


「うん、一つだけある。ズバリ、俺と同じような人間の霊力使いって、他にもいるのか?」


リピウスの質問に、ヨルダ爺は少し考えていたが、意を決したように答えた。

「うむ。わしの話したかったことにも関係しておるので、この際話しておこう。わしの知っている限りでは、人間の霊力使いは、そう……40〜50人程度はいるはずじゃ」


「え? リピウスみたいなのが40〜50人もいるのか!? それって怖いって!」

意外にも、デュークが驚きの声を上げた。

「ん? デュークは知らなかったのか?」


「知らねぇよ! てかさ、そんなの知ってたら、怖くて人間界をフラフラ飛んでいられねぇって。怖い! 怖い! 怖い!」


「これ、デューク、そんなに騒ぐものではないわ」

ヨルダ爺がたしなめるが、デュークはそれどころではない様子で怯えている。


「いや、怖いだろ! おいらたちは人間に見えてないから安心して人間界に来ているんだぞ。人間の能力者に見られているなら、いつ攻撃されるか……怖くて来れなくなるぞ!」


「そんなに人間の能力者って怖いのか?」


「怖いよ! 人間がおいらたちを見たら、化け物扱いで攻撃してくるって!」


「デュークよ、落ち着くのじゃ。リピウス以外の人間は霊視などできんから大丈夫じゃ」


「え? 本当か、ヨルダ爺」


「ああ、本当じゃよ。リピウスは非常に特殊なのじゃ。今まで発見されている霊力使いは全員、霊視はできないことが確認されておる」


ヨルダ爺の言葉を聞いて、デュークもようやく落ち着きを取り戻したようだ。


「ん? 俺ってそんなに特殊なのか?」

今度はリピウスが不安な顔をする。


「うむ。リピウスのようなケースはわしも初めてじゃよ。それに、今まで発見された霊力使いは、すべて霊界の『監視下』に置かれておるからの。その意味でも、デュークが襲われる心配はまずないはずじゃ」


デュークはその言葉で本当に安心したようだったが、逆にリピウスが激しく狼狽えだした。


「ちょ、ちょっと待て! 霊力使いは霊界に監視されるのか!? 嫌だぞ! 俺は監視されるなんて真っ平ごめんだ。それくらいなら霊力なんて使えなくていい。なあヨルダ爺、霊力を再封印ってできないのか? 俺は霊力なんて使いたくないんだ!」


「お、落ち着くのじゃ!」


ヨルダ爺とデュークがリピウスを落ち着かせようと声をかけ続けるが、リピウスはブツブツ言いながら、リビングを右往左往している。


「俺はな、誰にも邪魔されず、自分で淹れたコーヒーを飲みながら、気が済むまで妄想に耽る……そんな、ささやかで贅沢な時間を守るために、今まで理不尽な仕事にも耐えてきたんだ。それを霊界だか何だかに管理されるなんて、冗談じゃない!」


「なあリピウス、わしらは勝手に霊界に報告したりはせぬから、一度落ち着いてわしの話を聞いてくれんか」

「そうだぞ。おいらは絶対にお前のことを報告なんてしないからな。信じてくれよ!」


再三の説得に、リピウスは一つ大きく呼吸をすると、ゆっくりと席に戻った。

その様子を見てヨルダ爺も少しホッとした表情を見せ、静かに語りかけた。


「まずはわしの話をきいてくれんかの? さっきも言ったように、今すぐ報告する気は毛頭ないのじゃよ」


ヨルダ爺の言葉に、リピウスは俯きながら弱々しく頷いた。


「リピウスは、霊力を誇示する気はないのじゃろ?」


「誇示なんてしないよ。むしろ能力を周囲に知られたくない。俺はね、今の静かな、のんびりとした生活に満足しているんだ。やっと手に入れたこの生活を、あんな事故のせいで失うなんて絶対に嫌だからな」

話し始めると、再びリピウスの中に怒りが込み上げてくるようだった。


「うんうん、分かっておるよ。じゃからわしも、霊界に報告する必要はないと思っておるのじゃ。それに、今回は事故のショックで発生したことで、しばらく時間を置けば霊魂も安定化して、封印が復活するかもしれんとも思っておる」


リピウスが強く反応した。

「え? 元の状態に戻れるのか?」


「いや、それは分からん。じゃが、しばらく様子を見ても良いとは思っておる。だからな、リピウスも落ち着いてしばらくは様子を見てはどうかの?」


「強制的に封印を復活させるってのは無理なのか?」


「ふむ……残念じゃが、多分無理じゃろうな。それができるなら、すでに霊界でも対処をしておるはずじゃからな」


確かにそうだ、とリピウスも納得せざるを得なかった。


「そこで提案なのじゃが、当面はデュークに時々訪問してもらい、様子をお互いに確認していくというのはどうじゃろう? わしも時々、リピウスに会いに来たいしな」


ヨルダ爺の話を聞いて、デュークも大きく頷く。

「おいらはいいぞ! おいらもリピウスと会うのは楽しみだからな」


「……うん。俺もそうしてくれるとありがたい。こんな状態で一人きりでいたら、不安でいたたまれなくなりそうだからね」

リピウスは、やや力なく答えた。


「では当面は、わしらでリピウスの様子を見守るということで良いな? デュークの上司には、わしの方から『しばらく借りることがある』と言っておくからの」


「お〜! それは助かるぞ。ヨルダ爺の用事だと分かれば、上司も文句は言わねぇからな」


一応の話がまとまったことで、リピウスもようやく落ち着きを取り戻した。


「さて、とりあえずの方針が決まったわけじゃが、いくつか、わしからリピウスに注意してほしいことがあるんじゃよ。聞いてくれるかな?」


「……ああ、もちろんだ。聞かせてくれ」

「22万」という数値。某アニメなら絶望的な強さですが、今のリピウスにとっては、平穏な隠居生活(?)を脅かす厄介な火種でしかありません。ヨルダ爺が語る「注意点」とは一体何なのか。次回、物語がさらに深まります!

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