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<怖い世界を覗いてしまった>

話はメイさん披露の数か月前に遡る。

リピウスは霊力ドローン開発に関連し、霊気のインターネット通信網循環を実現したが、その後は自分が自然発散する霊気の大部分をインターネット網に流し込み、消滅するまではネットワーク内を循環させるようにし始めた。これによってリピウスが自然発生させる霊気量は、霊力感知上ほぼゼロにすることも出来てしまった。もちろん適当に発散させて、通常の人間並みレベルで調整はしている。


さらにリピウスは、ただ循環させるのは勿体ないと考えて、ネットワーク内に自分以外の霊気が存在しないか?という検知機能を当初から付加していた。

これは霊力制御初期に、霊気を体内循環させた際に感じた「違和感」のようなものを、ネットワーク内でも感じたりしないか?という漠然としたものであった。

すると、ある時から循環霊気の一部から、妙な検知結果が報告されるようになった。


「ん? 何だ? 俺以外でもネットワークに霊力を流している奴が居るのか?」

リピウスの警戒心は高まり、その正体を暴こうと、霊気に組み込んだ検知機能に付加機能を追加していった。その結果、その正体が判明してきた。


「ほう! これってフィッシング詐欺だよな。こっちは何だ? IP電話かな?」

収集した違和感のある情報をコピーして、自分のパソコンに取り込み再構成して内容を確認してみたところ、どうも詐欺関係のデータのようであった。


「なるほどな……。良くは分からないけど、これらってもしかしたら『悪意』とかが含まれているのかな? それが『悪い気』として検知された……なんて事はあるのだろうか?」

理由は分からないが、何となくリピウスは「悪意あるデータ」は特定の何かを発しているのかもしれない、と思うことにした。


調査・分析を進めていくと、その内容は多岐にわたっていることが判明した。


・フィッシング詐欺メール

・IP電話を利用した詐欺電話

・SMS経由の誘導URLを含んだメッセージデータ

・特殊アプリを利用した怪しげなやり取り

・ダークウェブアプリの特殊形式データ

・怪しげなサイト経由のウィルスデータ


この関連から、念のためモバイル通信網も霊気循環の対象として加えることにした。

固定電話回線網は、詐欺電話がIP電話経由で発信されているようなので対象外にした。


その後リピウスは特殊詐欺関連にターゲットを絞り、それらの実態をネット検索とAIソフトを利用して収集していった。


「へぇ……詐欺グループってのは、こんなに複雑怪奇な構造で、とてつもない規模に達しているのだな……」

収集情報を整理するにつけ、いかに特殊詐欺系の犯罪組織が多く、被害者が多いかに驚いてしまった。そして年間の被害総額が世界で1兆ドルにもなるという事実に衝撃を受けた。


リピウスが利用している大手検索系の無償版AIによると、詐欺グループは小規模なものが数千以上存在し、それらが互いに離合集散しながら複雑に構成されているようだった。

もちろん中には人身売買や不当な手段で集めた、万を超える構成員を持つ巨大詐欺組織もあるし、表面上は金融系企業を装いながら裏では元締めとして暗躍している巨大組織もあるようだ。

その拠点数も膨大で、しかも頻繁に移動するため、警察も追い切れずに手こずっていることが多いという。


さらに驚いたのは、ダークウェブでは特殊詐欺グループを立ち上げるための情報やツールが安価で提供されているということだった。その内容は概ね次のようなものらしい。


・フィッシングキット(スターターセット)

・詐欺の実行マニュアル(ハウツーガイド)

・個人情報の「名簿」

・「犯罪のサブスク」 (SaaS型モデル)


といった具合で、何とも懇切丁寧にサポートされているようだった。

これを知ったリピウスは、ダークウェブの実態も調査する必要があると判断した。


だが、今のままでは危険も多い。まずは自分の環境保護対策を先に済ませることとして、回線の出入り口に特殊なゲートウェイを霊力で構築し、個別チェックと自分の所在を完全に隠蔽した。


これらの準備が完了した後、リピウスはダークウェブへも侵入し、そこに存在する怪しげな世界を垣間見ることになった。


「うわぁ……こりゃダメだな。こんなの一般人が入り込む世界じゃないよな。てか利用者は良く怖くないな。もし俺に霊力が無かったら、絶対に怖くて近づかない世界だよ」


半ば呆れと恐怖の入り混じった表情で、リピウスはダークウェブを閲覧していった。

ちなみにアクセスには、専用ブラウザ(Torなど)は使用せず、霊力で疑似構成した独自の方法を用いた。これならば、仮に悪意のある管理者がいたとしても、逆探知されることもないし、閲覧した事実すら知られることはないだろう。


その頃にメイさんの学習状態が進み、本格的に利用を始められるようになった。

そこからはメイさんとの戦闘訓練と並行して、彼女にも学習の合間に、詐欺関連の情報収集と整理、およびネットワークから検知される異常情報の精査を任せるようになった。


メイさんはリピウスが構築した霊力AIだが、その元になるのは既存のAI技術である。そのため、メイさんと既存のAIとは非常に相性が良いらしく、AI同士での「高速会話」的なこともできてしまうようだ。


さらに後に分かったのだが、メイさんはAI自体のソースコードを独自にハッキングまでしてしまうようで、リピウスが気づいた時には様々なAIアプリを独自解析し、それぞれの特性を自分に取り込んで発展させていた。

要は、自分で自分のソースコードを書き換えて強化していたのだ。


それを知ったリピウスが発した言葉は――。


「メイさん! 恐ろしい娘……」


というものだった。

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