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<映画のような戦闘シーン>

一ヶ月ぶりに、デュークはヨルダ爺を伴ってやって来た。

早速いつものテーブルに着くと、メイさんがコーヒーとお茶菓子を運んできて、それぞれの前にセットした。


「メイも一緒にコーヒーを飲みなよ」


リピウスに言われて隣の席に座ると、自分用のコーヒーを空間から取り出して飲み始めた。


「ほう。メイさんもディメンション・ボックスが使えるのかね?」

デュークは既に知っていたが、ヨルダ爺はメイさんがディメンション・ボックスを使う場面を初めて見たので、少し驚いたようである。


「あ〜それね。メイは俺の分身みたいなものだから、ボックスも俺と共用で使えるんだよ」

「なるほどのう。デュークには聞いておったが、メイさんの訓練も順調らしいの」

「お陰様でね。この後少し組手を観ていくかい? 相変わらずメイの方が強いんだけどね」


「おう、それは楽しみじゃのう。もう霊力も組み込んでの組手かの?」

「うん。まだバリエーションは少ないけど、まあまあ霊力使いっぽい動きにはなってきたと思うぞ」


コーヒーを飲み終え、一息ついた後。例の訓練ルームへ移動して、デュークとヨルダ爺は、リピウスとメイさんの実戦的な組手の様子を見学した。


リピウスが言うように、以前のような拳法技だけの応酬ではない。

その合間に霊力による防御や攻撃技が挟まれており、体育館並みの広さのルーム内を縦横に動きながらの攻防は見応えがあった。


・時には炎の矢が襲い掛かり、それを氷の障壁で防ぐ。


・次の瞬間には鋭い氷の牙が降り注ぎ、炎の渦が氷をかき消す。


・瞬時に間合いを詰めると、炎の剣で襲い掛かり、それを氷の刃が切り返す。


それはまさに、映画の中で繰り広げられている魔法や超能力が飛び交う世界のようであった。


「ほぉー! これはまた中々迫力ある攻防じゃのう」

ヨルダはしきりに感心しているようだ。


「これってこの間おいらも一緒に見ていた、アニメシーンそのままって感じだぜ。良く再現できるもんだよな」

デュークも、つい最近アニメで見たばかりのような戦闘シーンが、目の前で実際に繰り広げられているので驚きを隠せない。


その後、二人の動きは益々激しくなってくる。やはり相対的にはリピウスが押されているようで、徐々に体勢を崩したり、防御一辺倒になり始めだす。


だが、ここでリピウスが突拍子もない行動に出た。なんと手から糸のような物を吐き出したのだ。

それはまるで蜘蛛の糸のように真っ直ぐ天井へと伸びると、先端がピタリと張り付いた。


リピウスは糸の張力を利用して空中へと飛躍し、そのまま次々と壁や天井へと糸を繰り出しながら、空中を飛翔し続けた。その合間にも様々な攻撃をメイさんに向けて打ち込んだり、糸で絡め取ろうとしたりし始めたのだ。


「お・お・お! これって映画で見たスパイダーマンって奴じゃないか? え? 霊力でこんな動きができるのか?」

デュークは、これも一緒に見たことがあるスパイダーマンの動きだとすぐに分かったようだ。


「なんじゃ? スパイダーマンじゃと?」

ヨルダ爺は意味が分からずに聞き返した。

「そうだよヨルダ爺! 蜘蛛男の戦い方なんだよ、これは」

デュークは益々興奮して応えた。


「なんと! 蜘蛛男とな。それはホラー映画とかいうものじゃろうか?」

「違うって! これはヒーロー物の物語だよ。スパイダーマンというヒーローが戦う映画だよ」

「ヒーローかの? 蜘蛛男がヒーローとは、また不思議な世界の話じゃのう」


そんなやり取りの中、戦いはいよいよクライマックスを迎えようとしていた。

一時はリピウスの変則的な動きに惑わされ、翻弄されかけたメイさんであったが、スピードではリピウスを上回っている。上手く糸を切ってリピウスの動きに制約を与えるような行動に出た。


リピウスは空中でバランスを崩してしまい、床に落ちてしまったところを霊気の拘束リンクで捕縛された。そのまま強烈な霊気弾を喰らって吹き飛んでしまう。


その状況を感知して、例の中央の箱から声が響いた。

『一本! 勝者メイ!』


戦いが終わると、ヨルダ爺とデュークから盛大な拍手が送られた。


「なるほどの。これは大したものじゃのう。素晴らしかったぞい」

「いやー本当に凄かったぜ。おいらは映画を見ているよりも断然興奮したぜ」

「まったくじゃのう。このような霊力の使い方もあるのかと、わしは驚きの連続じゃったぞ」

「だよな。体の周りはバリアで守られているって知っていても、思わずヒヤヒヤしてしまうぜ」


ヨルダ爺もデュークも興奮して、二人の攻防に見入っていたようだ。

その後再びリビングに戻り、再度のお茶タイムに入った。


「なあリピウス。見ていた感じだと、メイさんの方がリピウスより相対的に動きが速いんじゃないか?」

「ふむ。わしもそう感じておったな」


「ああ、その通りだよ。人間の肉体の反応速度って、やっぱ限界があるんだよ。どうしても義体の方が反応速度が速いから、動きに差が出てしまうんだよね。と言っても10%程度だと思うのだけどね」


「なるほどのう……。確かに義体は霊気と内部配線などを通じて動作の制御情報を流すのに対して、肉体の方は脳を経由した神経伝達網から来る動作になる。その分、遅れが出てしまうのかもしれんのう」


ヨルダが言うと、デュークは少し驚いたように声を上げた。

「お! 流石は元霊界学園の名誉教授様だね。これって学園の義体授業でも習った気がするぜ」


「ほっほっほ。少しは思い出したようじゃの。義体授業の最初の頃に注意される内容じゃよ」


「へえ~。授業でそんなことも教えてくれるのか。俺は実際にメイさんと模擬訓練をしていて、どうしても俺の方が遅れるから、その辺からスペックの差ではないかと推測してはいたけどな。ヨルダ爺の話を聞いて納得だよ」


リピウスも改めてヨルダ爺の見識を見直した。

その後もしばらくは興奮が収まらず、みんなでワイワイ騒いでいたが、やがて夕方になり二人が引き上げていく。


リピウスは再びノートパソコンの前に座り、何やら資料を読み返し始めた。

そして、不敵な笑みを浮かべながら呟いた。


(そろそろ準備も揃った事だし、一気に片付けてしまいますかね)

リピウスがまた何かを企んでいるようです。何を企んでいるのでしょうね?

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