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<メイさんは何処まで進化するのかな?>

その後、二人は立ち直ることもできず、「また来週来る」と言って帰っていった。

翌日、二人は仕事も休みにして終日寝込んでいたのだと、後で分かった。


そして一週間後。再度、ヨルダ爺とデュークは連れ立ってリピウスを訪問した。


「お! ヨルダ爺が二週連続で来るなんて珍しいな」

そう言ってリピウスは二人を迎え入れると、今日もコーヒーとお菓子でもてなした。


「いやいや、この間はすまんかったのう」

「おいらは翌日、仕事を休ませてもらってずっと寝ていたんだ。もう精神崩壊の一歩手前だったんだぞ」


「そんなこと言われてもなあ……」

「うむ。リピウスが悪いわけではないのじゃろうが、わしらには話が難しすぎじゃのう」


「できるだけ分かりやすく説明したつもりなんだけどな」

リピウスは不満そうな顔をして二人を見つめた。


「まあ、とりあえずじゃ。仕組みの話は置いておこうではないか。あの話はわしらには到底理解できんじゃろうからな」

「うん。分かったよ」


「ふむ。要はリピウスは霊力で、義体を操作しているということじゃな?」

「まあ簡単に言えば、それだけなんだよね」


「おいらも、それなら分かるぞ。でも、その中身となると理解不能になるけどよ」

「仕組みは知らなくてもいいよ。専門家でなければ理解できないのは確かだからね」


「うむ。そう割り切るのが良いようじゃな。あとは霊力で疑似魂魄を作り、自律的に義体操作をさせていると理解すれば良いかな?」

「そうそう。そう解釈してくれていいと思うよ」


「う~ん……おいらも、そう割り切れば納得できるかもな。だけど、これっていつから準備していたんだよ。どう見ても最近の思い付きって感じじゃないだろう?」


「うんとね……ヨルダ爺から義体を借りた後だから、半年前くらいかな?」

「そんな前からかよ! なんで言ってくれなかったんだよ」


「だってさ、その頃はまだ構想段階だったし、具体的に検証し始めたのは三ヶ月前だけど、デュークに話してもとても理解できる内容だとは思わなかったからな」

「う! そ、それはそうかもしれないけどよ……」


「でじゃ、リピウスよ。メイさんは、今後どこまで進化するんじゃろう?」


ヨルダ爺の問いに、リピウスは少し考えてから答えた。

「そこが少々難しいところでさ」


今は格闘技の達人の動きを覚えさせ、戦闘訓練ができるようにはしたのだが、今後は「霊力の使い方」も記憶させて、霊力戦闘の訓練相手も可能にしたいのだという。ただ、参考になる「霊力使いの動画情報」がないため、行き詰まっているのだと話した。


「なるほどの。参考になる情報がないということかのう」

「まあ、ちょっと参考にできそうな物は心当たりもあるんだけどね」


「ほう、そんな情報がどこかにあるのかの?」

「うん。現実ではないけど、ファンタジー系の映画やアニメなら、少し参考になるかもしれないと思っているんだ」


「あ! 確かに。日本のアニメってのも、結構霊力っぽい能力者が出てくることも多いよな。おいらも結構知っているぞ」

「そうか! じゃあ今度、デュークにも手伝ってもらおうかな?」


「そういうことならいいぞ。ドンと任せてくれ!」

デュークもやっと自分の出番がありそうで、少し元気を取り戻したようだ。


「ほっほっほ。アニメを参考に霊力の訓練かの? まったくリピウスは面白いことを考えるものじゃて」

「ところで、もう一つ聞いても良いかな?」


「なんだい、ヨルダ爺」

「なぜメイさんはメイド姿なんじゃ?」


「あ~それね。最初は訓練用だから、戦闘時のようなバトルスーツ姿の男性型を考えていたんだよ。だけど、戦闘時以外でも活動させられないかと欲張ってしまってね。普段はメイドさんで、戦闘時はバトルスタイルに変身して戦うほうが面白いと思ったんで、メイドの心得や仕草・マナーの動画も記憶させたんだよ。最終的にはレシピ動画から手料理もできるようにしようかと……」


「おまえ、嫁さんが欲しいんじゃないか?」

「うっ! ……でも嫁さんというよりは、スーパー家政婦さんかな?」

「はっはっは! 要は楽をしたいだけじゃろう」


こうして、ヨルダ爺とデュークも、ようやくバトルロイドのメイさんに関して得心がいったようであった。


ここでデュークが別の疑問を投げかけてきた。

「なあ、あの戦闘時に『一本! 勝者メイ!』って変な箱から聞こえてきたけど、あれは何なのだ?」


「ああ、あれは審判システムだね」

「ほう、審判システムとは何じゃろうな?」


「ちょ、ちょっと待てよ。また難しい言葉が出てくるんじゃないだろうな。おいらの頭はもう一杯一杯なんだからな」

二人は再び身構えた。


「う~ん……まあ、そんなに難しい話ではないんだけどね。実は模擬戦では、俺とメイは目には見えないけど防護膜で覆われているんだよ。ようはバリアね」


「ほうほう。それは怪我などしないように、ということかの?」


「それもあるけど、防護膜には衝撃吸収タイプの検知機能が付加してあって、攻撃を受けた部位や衝撃度合いを自動判定しているんだよ。だから、最後の前蹴りで蹴り飛ばされた際には、有効な攻撃が俺に直撃したと判断して、審判システムに通知された。『一本! 勝者メイ!』という判定はそこから来ているのさ」


「ふ~ん……。それもリピウスの霊力で実現しているんだよな」

今度はそれほど分かりにくい話でもなかったようで、デュークもまともな反応を示した。


「そうだよ。ちなみにメイには、予め最大出力は霊力10万までに制限しているんだ。俺も同じように10万程度まで絞って対応しているよ。まあ時々超えてしまうこともあるけど、最大でも20万程度だからね。メイは高級義体だから、確か耐久度は30万だったと思うけど、一応訓練中に故障されても困るから、俺だけでなくメイにも防護膜は張ってあるよ」


「なるほどのう。中々色々と考えられておるようじゃの……」

そう言いながらヨルダ爺も、思考の迷路を彷徨っているようであった。


「なあ、おいらもメイさんと戦闘訓練なんてできるのか?」

「おう、できるぞ。今度戦ってみるか?」


どうやらデュークは、すっかり立ち直ったらしい。先週の難しい用語類を綺麗さっぱり忘れて、いつもの能天気な調子に戻り始めていた。

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