<メイさん強い!>
リピウスは粘り強く説明を続けていた。ヨルダ爺も何とか理解しようと努力しているようであったが、もう限界に近づいてもいた。
「う・うむ……。つまりじゃ、人工知能とは推論エンジンとやらと知識ベースとやらからできておる、というのじゃな?」
「そうそう。あ! でも厳密に言うと、知識ベースは義体のメモリ機能を利用しているので、霊力ではメモリアクセスの機能を構築して……」
「ま・待つのじゃ! ここで新しい言葉を出してはいかんのじゃ!」
そう叫んで、ヨルダ爺はフリーズしてしまった。
その横では、既に放心状態のデュークが口を半開きにして、呆けたように「あへ。あへ」と喘いでいた。
流石にリピウスも、これ以上は無理と判断した。
それで、説明よりも実戦の方を見せた方が早いと考えて、メイさんに声をかけた。
「メイ! バトルモード!」
リピウスの声を聞くと、メイさんはすっくと立ちあがり、
「ラジャー!」
と答えると、メイド服を脱ぎ始めた。
呆けていたデュークの目に、そんなメイさんの姿が飛び込んできた。
「お・おまえ! メイさんになんて事をさせているのだ!」
リピウスは少し憐れみの色を浮かべたような目で、
「デュークが思っているような展開にはならんぞ」
と言って笑っている。
リピウスの言う通り、メイド服を脱ぐと、体にはフィットしているものの、まるで未来映画の戦闘員が着ているようなバトルスーツ姿になっていた。
それを見てリピウスも、空間から道着のような上着を取り出して羽織った。
そしてやや中央寄りに歩いて行き、壁際に椅子を二脚ほど出して、ヨルダ爺とデュークを呼んだ。
「なあ、もう実際に戦闘訓練を見てもらった方が早いからさ。とりあえずここへ座って見ていてくれないか?」
その声にフラフラしながらも、二人はリピウスの近くまで来ると、指定された椅子に座った。
それを見て、リピウスは中央まで歩いて行きメイさんと向かい合った。
「レディー……」
と言って身構えるリピウスとメイさん。
「GO!」
そのリピウスの声で、二人は間合いを詰めながら、互いの隙を伺うような体勢になった。
先に動いたのはリピウスであった。半歩左足を前に出すと、そのまま素早く右足で前蹴りを放った。
それをメイさんは軽く左手で払い、そのまま逆に前に出て右前蹴りを返した。
リピウスは辛うじてメイさんの攻撃を躱すと、少し距離を取ろうとしたが、メイさんは更に踏み込みつつ突きや蹴りを連続して放ち、リピウスに体勢を整える暇も与えない。
そのまま防戦一方のリピウスであったが、メイさんの下段蹴りを受けて体勢を大きく崩してしまい、そのままメイさんの強烈な前蹴りを直撃され、壁際まで吹き飛ばされてしまった。
その途端、ヨルダ爺たちの向かい側に置かれた箱状の機械から、大きな声が響いた。
『一本! 勝者メイ!』
「やっぱ、まだダメか」
と呟きながらリピウスは立ち上がると、メイさんの待つ中央へと移動した。
そして「礼」と言うと、互いにお辞儀をして別れた。
これらをヨルダ爺とデュークは、口をポカンと開けて、ただただ見つめていた。
そこへリピウスが近づいてきた。
「いや~……まだメイには一本も取れたことが無いんだよね。まったく、少しは手加減して欲しいよ」
と頭を掻いていた。
「い・今のはなんじゃ?」
ヨルダ爺がやっと声を絞り出した。
「ん? 何って、模擬戦だよ」
「わしの義体が、勝手に動いて戦っていたのか?」
「そうだよ。それが人工知能の機能だからね」
「わ・わしは夢を見ておるんじゃろうか? のうデュークや……」
しかしデュークは相変わらず口を開けたまま、呆けた状態から脱していなかった。




