<バトルロイドのメイさん>
今日は久しぶりに、デュークがヨルダ爺を伴ってやって来た。
「おーい! 今日は久しぶりにヨルダ爺も一緒だぞ」
いつものように声をかけながら、二人がリビングに現れた。
「おっ! ヨルダ爺、久しぶり~」
二人の姿を見て、リピウスも嬉しそうに立ち上がった。
「ふぉっふぉっふぉ。ほんに久しぶりじゃのう。リピウスも元気そうで何よりだわい」
三人がテーブルに着くと、リピウスは空間からコーヒーを出し、お茶菓子として先日買ってきた大きな月餅を切り分けて出した。
「これ、中華街で買ってたやつか?」
「ああ、二人にも食べて欲しくてな。コーヒーに合うかどうかは微妙だけどさ」
「ほう、中々美味しそうではないか」
「おう、栗月餅というやつだな。美味しいぞ」
月餅を頬張り、コーヒーを飲みながら楽しいひと時を過ごす。
一息ついたところで、ヨルダ爺が口を開いた。
「リピウス。お主、最近また変なことを始めておるらしいのう」
「変じゃないぞ」
「おうそうか、それはすまんかったのう」
「なあ、本当に格闘動画とかを見ているだけなのか?」
デュークの問いに、リピウスは少しニヤリと笑った。
「あ~……そうだな。まだ完全じゃないんだけど、ヨルダ爺も来たことだし、俺の『戦闘訓練』を見せておこうかな?」
「ほう、戦闘訓練をしておるのか」
「やっとおいらにも見せてくれるんだな!」
「そんじゃあ、ちょっとやってみるかね」
そう言うとリピウスは立ち上がり、例の「どこでもドア」を取り出した。
狭い部屋ではできないからと言って、リピウスがドアを開く。
デュークとヨルダ爺が後に続くと、そこは以前中華街へ行った際に通った【ディメンション・ルーム】のような空間だった。
ただし、前回と比べて格段に広い。学校の体育館ほどもありそうだ。
「ほう、なかなか広い部屋を作ったもんじゃな」
「これもディメンション・ルームなんだよな?」
「まあね。戦闘訓練をするなら、この程度の広さは必要だろうから」
室内はガランとしているが、よく見ると椅子や箱のようなものが点々と置かれている。
そして、入り口から向かい側の奥にあるテーブルの前に、見知らぬ女性が座って大きなディスプレイを熱心に見つめていた。
「ん? 誰かいるのか?」
紹介するよ、と言ってリピウスが歩き出す。
その女性はどうやらメイド服を着ているようだった。
二人が近づくと、リピウスは女性に声をかけ、デュークたちに紹介した。
「これが、バトルロイドのメイさんだよ」
「「バトルロイド!?」」
二人は同時に驚きの声を上げた。
「うん。俺が作ったバトルロイドだ」
唖然としている二人に対して、その女性はしなやかに立ち上がった。
「初めまして。私はメイと言います」
スカートの端を両手で軽くつまんで会釈をする。声は涼やかで美しいが、イントネーションに独特の違和感がある。やはり、どこか機械的なニュアンスが含まれているようだった。
「リピウスが作った……? ロボットなのか?」
「作ったというのは少し語弊があるかな。本体はヨルダ爺の義体だからね」
「な、なんじゃと? それがわしの義体だと言うのか?」
ヨルダ爺は信じられないといった様子で、目を剥いて驚いている。
「いやいやいや! それが義体ってどういう意味だよ。誰が中に入っているんだよ、おかしいだろ!」
デュークに至っては、何が何やら分からず混乱しきっている。
リピウスは、パニック寸前の二人を傍らの椅子に座らせると、メイさんに冷たい飲み物を持ってくるように命じた。
「冷たい飲み物を三つですね。了解しました、ご主人様」
メイはそう言うと、今入ってきたドアから出て行った。
「どうだい、なかなか良くできているだろう?」
ドヤ顔で聞くリピウスだが、二人とも立ち直れていないようで、メイさんが出て行ったドアを呆然と見つめている。
「う~ん……実技に入る前に、少し説明が必要みたいだね」
「と、当然だろ! もう頭がついていかねえよ」
「流石にわしも、どう反応して良いか分からんのう」
リピウスが椅子に座り、説明を始めようとしたところでメイさんが戻ってきた。
三人の前にオレンジジュースのコップを置き、軽くお辞儀をすると、そのまま傍らに控えるように立った。
「メイ、勉強の続きをしてていいよ」
「はい、ご主人様」
再びお辞儀をして席に戻ると、彼女はまた画面を見始めた。
「なあ、勉強って……あれは何をやってるんだ?」
「以前デュークにも見せた、格闘技の動画を見ているんだよ。メイの場合はイメージデータの取り込みだね。高速スキャンで一気に覚えられるから、めちゃくちゃ習得が速いんだぜ」
「取り込み……?」
「高速スキャン……?」
「すまんが、もう少し分かりやすく説明してくれんかの……」
そこでリピウスは、バトルロイドの構造を解説し始めた。
端的に言えば、ヨルダ爺の義体に霊力による「人工知能システム」を構築し、それを【疑似霊魂】として埋め込んだ、自立思考・行動型のアンドロイドだという。
霊力そのものが自分で思考し、義体を操作して行動しているのだ。
「人工知能……?」
「自立思考型じゃと……?」
「えっ、疑似霊魂……!?」
一つ一つの単語が出るたびに、二人の驚きの声が響く。
全く理解が追いつかない様子の二人を見て、リピウスも内心で困り果てていた。
(さて……これ、どう説明すりゃいいんだ?)
ついに、リピウスの忠実な相棒である、メイさんと言うアンドロイド(?)が登場しました。いわゆるヒロイン枠に相当する彼女の活躍にもご期待ください。




