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<また危険なシグナルが鳴り始めた>

中華街のお食事会から一ヶ月。デュークは週に一度の訪問を続けていた。

あの日、リピウスから「もう隠し玉など無い」と言われていたが、リピウスが何もやらかさないとも思えなかったので、その後も油断なく見守り続けていたのだ。


だが最近は訪問するたびに、リピウスは小机の前に座り、ノートPCを操って何か調べ物をしたり、意味不明のリストを作成したりしていることが多かった。


今日も来てみると、リピウスはノートPCを使って何やら検索しながら、記録を書き留めているようだった。


「よう! 今日も何か調べものかい?」


デュークの声に気が付いて手を止めると、リピウスは「よう!」と言いいつものテーブルへと移動した。

デュークが向かい側に座ると、既に用意してあったコーヒーとお茶菓子を空間から取り出し、毎度のまったりコーヒーブレイクに入った。


「なあ、最近熱心に調べ物をしているようだけど、何をしているんだ?」

「まあ色々だけどな。主としては格闘技とか拳法家の実技動画だな」


「拳法家の実技動画?」

「そうだぞ。戦闘系の能力修得の参考にするんだよ」


「ええっ? それって参考になるのか?」

「なるさ。奴らは一種の超人でもあるからな。その動きは実戦的にも参考になると思うぞ」


「う~ん……おいらには、なんかピンとこないんだよね」


するとリピウスはテーブルの下にあるゲーミングPCの電源を入れ、大きめのディスプレイに格闘技系の動画を映し出した。

「ほら、これなんて最高だと思わないか?」


そこには日本でも有名な、格闘系香港映画の戦闘シーンが映し出された。

デュークもしばらく一緒に観ていたが、

「まあ確かに凄そうには見えるけどな。でも霊力の戦闘能力とは関係無いんじゃないか?」


「ははぁ~……デュークは霊力の戦闘系って言うと、火炎攻撃とか空から隕石を降らせるとか、そんなものをイメージしているんじゃないか?」

「まあ、そんな感じだな」


「ふっふっふ。それじゃあ一流の戦士にはなれないのだよ」

ドヤ顔を作ってリピウスが嘯く。


「お前、また何か変な事を考えているだろ」

デュークの【勘】に危険なシグナルが鳴り始め、ジト目でリピウスを見つめてしまった。


「いやね、俺は戦闘の本質を言っているのだよ」

そう言って、リピウスは持論を展開し始めた。


リピウスが言うには、霊力使いであっても第一は「肉弾戦」だということだった。

「例えばだよ、戦闘中に後方から霊力を放出しているだけってわけには行かないだろうよ」


実戦的に考えれば、相手の攻撃を躱しつつ、動きながら攻撃霊力や防御霊力を駆使することになる。ならば、第一に考えるべきは体捌きやバランス感覚の修得になる、というのである。


「そう考えれば、拳法の達人たちの体捌きや身体バランスの保ち方を、参考にするのは当たり前ではないかな?」

ますますのドヤ顔でリピウスは力説した。


「う~ん……そう言われれば、そんな気もするけどよ。で、そのために達人たちの動画を集めて研究していると?」

「そうだよ。やっと分かったようだね、デューク君!」


「だけどよ、そんなのを見ているだけで修得できるものなのか?」

「イメージトレーニングだよ。まずはしっかりイメージを叩き込むんだ」


「イメージねぇ……」

「ま、最終的には自分の体を使って、イメージ通りに体を動かせるようにしないとダメだけどね」


そんな会話をしつつ、二人はのんびりとコーヒータイムを楽しんでいた。

だがデュークはまだ知らなかった。

リピウスがとんでもない事を密かに企んで、コソコソと準備を進めていることを。


デュークの感じた警鐘は正しかったということを、彼は後日知ることになる。

さてさてリピウスはいったい何を企んでいるのでしょうか?

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