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<中華街で食べ歩き>

ドアを出ると、そこはビルの通路のようであった。

見回しても誰もいないようである。

「ここって中華街なのか?」

デュークが不思議そうな顔をして見回している。


「いや、ここは中華街の前にあるビルの中だよ。このフロアが空いていたから、出口として利用させてもらったんだ」

そう言いながらリピウスは通路を歩いて行く。

二人も続いて歩いて行くと、すぐにエレベーターホールになり、リピウスが下向きのボタンを押して待っている。


やがて4階のランプが点灯し、エレベーターの扉が開いた。

中には人がいなかったので、三人で入ってそのまま1階へと降りていく。


1階は商業施設のようで、テナントの店舗が並んでいる通路に出た。

そこには人も結構行き来していたが、リピウスはそのままビルの出口へと向かい、歩道に出た。


ヨルダ爺とデュークもビルを出ると、目の前に道路を挟んで中華街らしき景色が見えてきた。

信号が変わるのを待ち、リピウスに促されて道路を渡ると、一行は中華街へと足を踏み入れた。


中華街に入ると、流石に異国感溢れる街並みに変化した。

「ほう、妙に懐かしい街並みじゃのう」

ヨルダ爺が感慨深げに呟いている。


「ヨルダ爺は中国へ行ったことが有るのか?」

リピウスが聞くと、ヨルダ爺は頷いた。


「随分昔の話じゃがな。たしか千年ちょっと前じゃったかな。当時は中国ではなく、何て言っておったかな?」

「千年ちょっと前か……唐とかかな?」

「うむ、そうかもしれんな。かなり栄えた都での。美しかったのを覚えておるよ」


「へぇ~ヨルダ爺は中国へ行ったことが有るんだな。おいらは日本以外は行ったこと無いぞ」

デュークが感心したように言う。


「なんだ、デュークはずっと日本を担当しているのか?」

「ああ、300年前に初めて担当して以来、ずっと関東地区を担当しているんだ」


「300年前って江戸時代だな……え? 江戸時代にこの辺にも来ていたのか?」

「おうそうだぞ。確かに東京は『江戸』と呼ばれていたな。この辺りはまだ海だったような気もするけどな。海辺の漁村とかだったかもしれない。当時はけっこう迷子も多かったんだぞ」


「なんか改めて聞くと凄いな……」


そんな話をしながら中華街の大通りに出て、奥へと入って行った。

ヨルダ爺とデュークは物珍しそうな顔をして、辺りを見回しながらリピウスの後を歩いていた。


少し行ったところで、リピウスは中華菓子の店の前で立ち止まった。

「ちょっと、この店で買い物をしたいんだけどいいかな?」

二人が頷くと、リピウスは店内に入って行った。

そこは大手中華飯店の系列店であり、中に入ると月餅などの中華菓子や、中華まんじゅうが所狭しと陳列されていた。


リピウスは月餅を数個と、中華まんじゅうの3個入りパックを買ったようだ。

店を出るとさらに歩きだす。道の両側には色々な店舗が並んでおり、所々で中華まんを蒸かした白い湯気が立ち上っていた。通りを歩く人たちも、中華まんを片手に食べ歩きを楽しんでいる。


「なあ、夕食前なんだけど、1個だけ食べてもいいかな?」

リピウスは蒸し器の前で、いかにも食べたそうな顔をして二人に尋ねた。


「おう、別にいいんじゃないか。なあヨルダ爺」

「うむ。リピウスの好きにすれば良いぞ」


「二人も食べるよな?」

そう聞くと、二人は顔を見合わせて何やら躊躇っているようであった。

「遠慮するなよ。今日は俺の奢りなんだからさ、好きなの選んでいいぞ」


そう言われて、二人も蒸かしたての中華まんの前に来た。

「俺はこの【海鮮ふかひれまん】にしよう。二人はどうする?」

「ほう、それは美味しそうじゃの。わしもそれをいただくかな」

「うん。おいらも同じ奴にしてくれ」


リピウスは3個購入して二人に手渡すと、食べながら歩きだした。

「あつっ! でも美味い!」

リピウスは中華まんを頬張っている。


「ふむ。歩きながら食べるのも、また一段と美味く感じるものじゃな」

ヨルダ爺も食べ歩きの醍醐味を楽しんでいるようだった。

デュークは「あつっ! ふぅ、美味い。あつっ!」と言いながら、夢中でかぶりついていた。


中華まんを食べ終える頃、リピウスは途中の食材店に寄り、乾燥イチジクなどを買い足した。

店を出たところで、デュークはリピウスが最初に買い物をした店の紙袋を持っていないことに気が付いた。


「あれ? お前、さっき買った中華菓子はどうしたんだ?」

どこかに置き忘れたのではないかと、心配そうに尋ねた。


するとリピウスは、

「あ~、ここに入っているぞ」

と言って肩掛け鞄の口を開け、中から中華まんのパックを半分だけ覗かせて見せた。


「え? その鞄の中に入っているのか?」

驚いたようにデュークが覗き込んだ。だが、鞄の中には半分出ているパック以外、何も見えない。


「ほう、それは【マジックバッグ】じゃな」

「ええ~~っ!!!」


ヨルダ爺の声に、デュークは思わず叫び声をあげてしまった。

慌ててリピウスが注意する。叫び声は当然、周りの通行人にも聞こえていた。数人が「何事か」と怪訝な顔でこちらを見ている。


『ごめん、ごめん。つい声を出していることを忘れてしまったぜ』

デュークは念話で謝ってきたが、声は出さずともペコペコと頭を下げている姿は、逆に周囲へ変な印象を与えていた。


「もう、大声出すなよ。恥ずかしいだろう」

『いや、だってヨルダ爺が『マジックバッグ』なんて言い出すからよ』

『ふぉっふぉっふぉ。いや~、わしもマジックバッグは久しぶりに見るんでな』


「まあ、これも最近使えるようになったんで、お披露目と思って持ってきたんだよ。あ、もう普通に話してもいいぞ。かえって変に見られそうだからな」


「まったく、次から次へと……もう最初っから言っておいてくれよな。いきなり霊界でも珍しい能力を見せられたら、おいらだって叫んでしまうって」


「え? これって珍しいのか?」


「リピウスは時空間係だけではなく、【物理操作系】にも適応しておるんじゃな。実に稀有な才能じゃぞ」

ヨルダ爺が感心したように言う。


「そうだったのか。知らなかったんで、悪いことしちゃったな」


そんな話をしながら歩いて行くと、やがてこじんまりとした中華飯店の前に到着した。


「あ! 今日はここを予約してあるんだ。けっこう評判の店なんだぜ」

リピウスは二人を促しながら店の中へと入って行った。

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