<中華街へGO!>
しばらくの間、三人は霊力ドローンの話や、画面に映し出されている中華街の様子を見ながら楽しんでいた。
すると急にリピウスが時計を見て、声を上げた。
「お! そろそろいい時間だな」
「ん? 何がいい時間なんだ?」
デュークが怪訝そうに尋ねると、リピウスは立ち上がり、二人の前へ進み出た。
「今日はね、今までのお礼と俺の誕生会を兼ねて、二人に中華街でご馳走させてもらいたいと思ってね」
そう言って、リピウスは深々とお辞儀をした。
「え? ええっ?」
デュークは意味が分からないのか、妙にオロオロしている。
「ほっほっほ。お礼なんぞ、わしらこそいつも美味しいコーヒーとお菓子をご馳走になっておるだけじゃろうが」
ヨルダ爺も顔の前で手をヒラヒラと動かしながら、苦笑いをしている。
「いやいや、俺は二人には本当に感謝しているんだよ。身寄りもなく一人ぼっちで、危うく死にかけたんだからな。それをデュークとヨルダ爺が助けてくれたし、それ以降も親身になって寄り添ってくれたじゃないか。どれだけありがたかったか……」
リピウスは神妙な顔をして、改めて深く頭を下げた。
「よせやい。ヨルダ爺の言う通りだぜ。おいら達こそお前に会って、随分楽しませてもらっていると思っているんだからな」
「デューク、まあ良いではないか。それでリピウスの気が済むのであれば、今回は厚意に甘えるとしようぞ」
ヨルダ爺の言葉に、リピウスは本当に嬉しそうに頷くのであった。
リピウスはテーブルのカップなどを手早く片付けると、二人に外出の準備を促した。
「ヨルダ爺も、靴とかは持っているんだよな?」
リピウスは鞄を肩に掛けながら確認する。
「大丈夫じゃ、いつでも出せるようにしておるぞ」
「だけどよ、ここから中華街って結構遠いだろ。時間は大丈夫なのか?」
デュークが心配そうな顔をした。
するとリピウスは、何もない空間から【大きなドア】を取り出した。
「大丈夫だよ。――『どこでもドア』があるからな」
「お、お前……なんだよそれ!」
「ほっほっほ。これは『ワープ・ドア』じゃな」
「リピウス、ワープまでできるようになったのか?」
「そうなんだよ。これも二人に披露したくてな。まあ『ご馳走』っていうのは、お披露目の口実みたいなもんかもな」
リピウスは少し照れたような顔をして、そのドアを開いた。
ヨルダ爺たちがドアの中へ足を踏み入れると、そこは八畳ほどの部屋のような空間だった。
天井全体が柔らかな光を発しており、部屋自体は明るい。しかし窓はなく、パイプ椅子が二脚ほど置いてあるだけの、ガランとした殺風景な部屋だ。
入ってきたドアのちょうど向かい側に、別のドアが見えた。
ヨルダ爺は興味深そうに、部屋の中を歩き回っている。
「リピウス、ここが中華街なのか?」
デュークが怪訝そうに聞くと、リピウスは手をヒラヒラ振って答えた。
「違うよ。中華街は、あっちの向かいのドアを出た先だよ」
デュークが改めて向かいのドアを眺めていると、ヨルダ爺が壁を叩きながら呟いた。
「これは……【ディメンション・ルーム(亜空間)】じゃな」
「ええっ!? リピウス、ディメンション・ルームまで使えるようになったのかよ!」
「まあな。これも最近覚えたばかりで、まだ内装とかはいい加減だけどな」
「凄いな! ディメンション・ルームっていったら、霊界人でも憧れの能力だぜ。これが使えれば、わざわざ家を借りなくても済むからな」
デュークもペタペタと壁を叩きながら、驚きを隠せないようだった。
「リピウスは時空間係の能力適性が高いようじゃの。中々に良い出来じゃぞ」
「ありがとう、ヨルダ爺。……でも、そろそろ中華街へ行こうぜ」
リピウスは二人をパイプ椅子の方へ誘い、靴を履くように言うと、自分も靴を履き替えて向かいのドアの前へ立った。
二人が準備を整えたのを確認し、リピウスがゆっくりとドアを開ける。
三人は、未知の味と光景が待つ「中華街」へと踏み出した。




