<ヨルダ爺>
お読みいただきありがとうございます。
ついに助っ人、ヨルダ爺の登場です。
幽体離脱ならぬ「霊体離脱」……絶体絶命のピンチに、リピウスはどう立ち向かうのでしょうか。
※霊糸には2つの意味合いで使っていたので、「魂と体を繋ぐ糸=魂の緒」とし、それ以外で「霊力操作の為に伸ばす糸状の霊気=霊糸」と言葉を分ける事にしました。この話は大部分が霊糸→魂の緒に変更しました。
デュークが消えてしまい、俺はまた不安になってフラフラと自分の体の周りを行ったり来たりしていた。
すると再び空間が歪みだし、大きな穴が開いた。
そこからデュークが「や〜、待たせたな!」と言いながらスルリと出てくる。
そしてデュークの後ろからは、老人姿の半透明な男が現れた。
『ヨルダ爺、この人がさっき話した、幽体離脱して戻れなくなった人だよ』
ヨルダ爺と呼ばれた老人は、霊体の俺と倒れている本体を交互に見てから、挨拶を寄越してきた。
『どうも。わしはヨルダと言う者じゃ』
『あ! どうも、わざわざ来ていただきありがとうございます!』
俺も慌てて挨拶を返したが、心はかなり急いている。縋りつくようにお願いした。
『お、お願いします! 何とか体へ戻れるようにしてください。このままでは本当に死んでしまいます』
俺の勢いに気圧されて、ヨルダ爺はかなり驚いたようだったが、すぐに眉を下げて好々爺とした笑みを浮かべた。
『まあ、力になれるかは分からんが、とりあえず確認させてもらうかの』
そう言って俺の体に近づくと、お医者様が診察でもするように、じっくりと俺の胸元を覗き込んだ。
そして両手を本体に添えるようにかざしながら、まるで全身をスキャンするように動かして、何かを探っているようだった。
しばらく確認してから『ふむ』と頷くと、俺の方を見た。
何か分かったのか? と俺も期待に満ちた目でヨルダ爺を見つめる。
『体を見たところ、やはり肉体と魂を繋ぐ「魂の緒」が切れてしまったようじゃな』
『『魂の緒?』』
俺とデュークの声が重なった。
『ふむ、魂の緒じゃ。通常は魂と肉体は、一時的に離れても魂の緒で繋がっておるのじゃがな。その状態のことを、人間界では「幽体離脱」と言っておる』
『はいはい、俺もそれは聞いたことがあります』
ヨルダ爺によると、幽体離脱した場合は魂の緒を辿れば肉体に戻れるらしい。
だが俺の場合は魂の緒が切れて、完全に肉体と離れてしまっているので、簡単には戻れないと言うのだ。
このような状態を「霊体離脱」と言い、通常は死んだ場合にのみ起こる現象だということだった。
『え? じゃあ俺って、もう死んだも同然ってこと?』
『ふむ。まあ、このままだとそうなるじゃろうな……。さて、どうしたものか』
ヨルダ爺の言葉に、俺は再びパニックになりかけてしまう。
『なあヨルダ爺、戻る方法ってないのか? もうダメなのかよ!』
デュークも心配して聞いてくれた。
『ふむ……。今確認したのじゃが、体の方には切れた魂の緒の端が見えているようじゃ』
「え?」と言って、俺もまた自分の体に近づいて目を凝らしてみる。
『見えんかな? ほら、ここの奥の方に、ヒラッと糸の切れ端のようなものがあるじゃろ?』
『え? どこ? どこですか?』
俺は倒れている自分の胸元に顔を埋めるようにして、必死に目を凝らした。
『ほれ、ここじゃよ』
そんなやり取りが何度か続き、デュークも一緒になって、俺の体に被さるようにして切れ端を探す。
『あ! 見えた……!!』
俺は思わず叫んでいた。
よく見ると「みぞおち」あたりの奥に、まるで細い真珠色の糸が、陽炎のように揺らめいている。
『どれどれ?』
とデュークも覗き込んでくるが、彼にはまだ見えていないようだ。
俺はヨルダ爺の襟首を掴みかねない勢いで、その顔の間近まで詰め寄っていた。
『こ、この糸の切れ端に、俺が繋がればいいのか? そうなのか!?』
(近い、近い……!)
と小声で呟きながら、ヨルダ爺は深く頷いた。
自分の死体(?)を3人で覗き込むシュールな光景……。
「魂の緒」という微かな希望を見つけたリピウス。
続く第4話、運命の接続作業が始まります!




