<ヨルダ爺に聞いてみるか?>
詳細鑑定で衝撃の事実を知り、その対策に頭を悩ませるリピウスだったが、その解決策は意外なほどあっさりと見出された。
いつも通り小机の前に座り、何か対応策のヒントはないかと心理学や精神医学などの文献を読み漁っていると、急に横の空間が歪み出し、ワープゲートの穴が開いた。
見ると、ヨルダ爺がスタスタと出てきた。その後ろからは、おずおずと首だけを出すデュークの姿も見える。
「お! ヨルダ爺、久しぶりじゃないか」
最近、ヨルダ爺は忙しかったらしく、一ヶ月ぶりの訪問だった。
「おう。久しく会えなかったが、元気にしておったか?」
ヨルダ爺も久しぶりにリピウスに会えたのが、実に嬉しそうだった。
「ああ。ヨルダ爺に借りた義体も、結構便利に利用させてもらってるぜ」
「うむ。デュークからは聞いておったが、霊力による変装技法と併用して、上手く使っているらしいのう」
「そうなんだよ。やっぱり長時間幽体離脱するのは怖い感じだしね。霊力での実体化変装の方が、気楽に外出できるからさ」
「まあ、そうかもしれんな。それでも、ちょっとした時に義体も役に立っているようで何よりじゃて」
ヨルダ爺も色々気にかけてくれていたようで、リピウスの様子を見て少し安心してくれたようだ。
そんなやり取りの横で、デュークはササッとゲートを出ると、いつの間にかテーブルの席に座って待機していた。
ヨルダとリピウスも席に移動し、いつも通りリピウスはコーヒーとお茶菓子を出して二人をもてなした。
「で、最近は鑑定能力に挑戦しているそうじゃな」
お菓子を食べながら、ヨルダが聞いてきた。
リピウスは少しギクッとしたが、表情には出さないよう注意しながら答える。
「そうなんだよ。簡易鑑定まではデュークにも手伝ってもらって、上手くできるようになったんだけどね……。詳細鑑定はなかなか難しくてさ。最近は手詰まり状態だよ」
「ほうほう。リピウスでも詳細鑑定は難しいか……。ふむ。マインド系はかなり癖のある能力じゃからな。霊界でも詳細鑑定まで出来る者は、極わずかじゃしな」
そんな話をしていて、リピウスはふと思いついた。
(この流れで、さりげなく探りを入れてみようかな……)
「なあヨルダ爺。鑑定の修行をしていて思ったんだけどさ、鑑定結果って究極の個人情報みたいなものじゃないか」
「ふむ。人間界的に言うと、そうなるじゃろうな」
「だったらさ、鑑定されたがらない人も多いんじゃないか? あるいは、鑑定結果をごまかしたいなんてニーズもあったりしないのか?」
さりげなく、一番知りたいことを投げかけてみた。
「うむ。実際に霊界でも、鑑定を嫌がる者は多いかもしれんな。まあ、詳細鑑定以上は基本的には同意がなければ行えない規則になっておるが、犯罪等の嫌疑がある場合は問答無用で鑑定される場合もあるからの。そういう時に抵抗する者は、確かに多いと聞いておるよ」
ヨルダの返答を聞いて、リピウスは(もう一押しだな)と内心思い、さらに畳み掛けてみた。
「鑑定結果をごまかすことってのは、できないのか?」
「ごまかすのう……」
ヨルダは何やら考え込み始めた。が、すぐに何か思い当たったのか、軽く手をトンと叩いた。
「そうじゃそうじゃ、『鑑定偽装』という能力があったわい」
「え! 鑑定偽装!!!」
その言葉に、リピウスは思わず声が裏返ってしまった。
そんな様子にヨルダ爺とデュークも驚いてしまったようで、食べようとしたクッキーを持ったまま、しばし固まってしまっていた。




