<詳細鑑定の結果は秘密にしよう>
ついにリピウスのチートな素養が明らかにされます。
色々と不安を抱きながらも、デュークはその後も律儀に週一回のペースでリピウスを訪問していた。ただ、以前とは明らかに挙動が違ってきている。
これまではリビングにワープゲートを開くと、無造作にゲートから出てリピウスの傍へ歩み寄っていた。しかしあの事件以降は、まずゲートからそっと顔だけを出し、周囲を伺うようにリピウスの様子を確認してから、おずおずと声を掛けるようになった。
リピウスの応答を確認し、安全を確信してからようやくゲートを出て、そそくさとメインテーブルに着席する。要するに、いつ「生贄」にされるかと心配で仕方がないのである。
今日もそっとゲートから顔を出し、小机の前でパソコン作業をしているリピウスにおずおずと声を掛けた。
「よう……。今日は何をやってるんだ?」
「ん。相変わらず鑑定能力の研究だよ」
リピウスは見向きもしないで返事だけを返した。
「詳細鑑定は、できるようになったのか……?」
デュークはまだ顔だけを出したまま、不安そうに尋ねる。どうにも動向が気になるらしい。
「いやいや、そんなに簡単にはできないよ。霊界だって何十年もの修行が必要な能力なんだろう?」
「まあ、そうだよな。確かにおいらも聞いたことがあるよ。詳細鑑定には何十年もの専門的訓練が必要だし、深層鑑定になると何百年、場合によっては何千年もの修行が要るって言われてるからな」
「お! デュークも結構詳しいじゃん」
リピウスが初めて手を止め、デュークの方に顔を向けた。
その様子を見て、(これなら今日のところは大丈夫そうだな……)と判断したデュークは、ようやくゲートから全身を出し、テーブルの席へと向かった。
リピウスも手を休め、いつも通りコーヒーとお菓子を出してもてなすと、ようやくデュークも以前の調子に戻り始めた。
「それでも、少しは進展してるんだろ?」
お菓子を摘まみながらデュークが聞くと、リピウスもクッキーを口に運びながら答えた。
「ああ。一応、自分の霊核には触れて、中層辺りまで入り込めるようにはなったけどね。これが少々気持ち悪い感触でさ。中層から情報を引き出すのが上手くいかないんだ。慣れればなんとかなるのかもしれないけど」
その話を聞いて、デュークも霊界学園で初めて詳細鑑定装置にかけられた時のことを思い出した。
(やっぱり、気持ち悪いのか……)
「まあ、とにかく自分自身の詳細鑑定結果を正常に取得できない限りは、デュークに『試させてくれ!』なんて絶対に言わないし、ましてや承諾なしにやることもない。それだけは信じてくれよ」
あの日以来のデュークの怯えっぷりを見てきたリピウスだけに、最近は対応もかなり丁重だ。デュークも再び信頼してもいいかもしれないと思い始めてはいた。
だが、相手はリピウスである。いつ何時、変な「技術的好奇心」のスイッチが入るか分からない。
(やっぱり当面は、慎重な対応を心掛けよう……)と内心で誓うデュークであった。
――それからしばらく経過した、ある日のこと。
リピウスはついに、自分の霊核・中層部分から詳細鑑定の情報を取得することに成功した。
だが、その結果を見た瞬間、リピウスの顔は一気に曇った。
「嘘だろ……。やっぱり、あの簡易鑑定の結果も正しかったのか。でも、なぜ!?」
驚いた理由は、鑑定結果があまりにも想像の斜め上をぶっ飛んでいたからだ。
【リピウス:詳細鑑定結果】
名前: リピウス
霊力値(実行/基本): 216,000 / 1,223,490
霊力コントロールレベル: 7
魂の純度: 92%
【属性適応レベル】
火:9 / 水:9 / 風:10 / 土:8 / 光:10 / 闇:9
【複合属性適応レベル】
雷鳴:9 / 氷雪:9 / 溶岩:8 / 樹木:8 / 沸騰:9 / 重力:8
【能力系統適応レベル】
強化:8 (肉体や物体を霊力で強化する系統能力)
操作:10 (霊力に様々な命令を組み込み、操作する系統能力)
変質:10 (霊力を様々な性質に変容させる系統能力)
精神操作:9 (マインドコントロールのような精神操作系統能力)
時空操作:10 (次元操作や空間操作を行う系統能力)
物理操作:9 (直接物質に作用して、分離・統合などの操作を行う系統能力)
通知表で言えば、ほぼオール5。
適応レベルが「8以上」あれば最上級能力の修得が可能と言われている。つまりリピウスは、あらゆる能力で最上級クラスを使いこなせるポテンシャルを秘めているということだ。
デュークから聞いた話では、現在の平均的な霊界人の霊力値は1万〜3万程度。天界人で10万〜30万。最強と言われる聖騎士団の隊長クラスですら50万前後だという。
ヨルダ爺の言葉を借りれば、歴史上、霊力値が100万を超えた人物は二人しかいない。
つまりリピウスは、このまま霊界へ行けば「三人目のミリオン・スピリチュアリスト」になる計算だ。
「おかしいだろ……。ヨルダ爺は、俺の基本霊力は22万だって言ってたよな。なんだよ、122万って」
パニックになりかけた頭で、リピウスはある「技術的仕様」に思い至った。
実は最初にヨルダ爺が使った簡易鑑定装置には、ある種の『鑑定装置あるある』が存在していたのだ。
装置の表示限界が「999,999」に設定されており、100万を超えると最上位の桁が桁落ちして表示されるという、いわゆる「オーバーフロー」である。
霊力100万超えなどという事態は通常あり得ないため、装置の設計段階で考慮されていなかったのだろう。
リピウスは確信した。
この鑑定結果は、決して人に見られてはいけない。
知られれば最後、間違いなく厄介なトラブルに巻き込まれ、平穏な生活は終わる。
「……よし。鑑定結果に関しては、今後も絶対に秘密だ」
心に深く誓ったリピウスは、詳細鑑定を修得したこともデュークには黙っておくことに決めた。下手に「できた」と言えば、いずれ「じゃあリピウスの結果も見せろよ!」という話になりかねないからだ。
当面はまだ「手こずっている」ことにしておいた方が、お互いの幸せのためだろう。
ついに詳細鑑定も修得したリピウスですが、その内容を秘匿するために、ヨルダ爺から情報を引き出そうと目論んでいるようです。果たしてうまい方法が見つかるでしょうか?




