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<激やせと若返り>

いつものようにデュークがリビングに現れると、


「デューク! どうしよう!!!」


と言って、リピウスが猛烈な勢いで駆け寄ってきた。


「おいおい、今度は何なんだよ」


「デューク〜……。やりすぎちゃったみたいなんだよ〜……!」


見ると、なぜかリピウスはズボンを必死に引っ張り上げながら、オロオロと狼狽うろたえている。


実は先週あたりから、ズボンが時々ずり落ちてくるようになっていた。外出する時はベルトをかなりきつめに締めてなんとか凌いでいたのだが、今週に入ってからは、完全に手で押さえていないとジャージのズボンすら落ちてきてしまうほどになっていたのだ。


「ほら、これを見てくれよ!」


リピウスが手を離すと、ジャージが重力に従ってスルスルと足首まで落ちた。かつての『肥満』という名の自前のベルトが消滅した今、彼を包む衣服はすべて、子供が大人の服を着ているような不格好なサイズに成り果てていた。


この一ヶ月間を振り返っても、デュークは来るたびに「痩せたんじゃね?」と言っていたし、自分でも体重が減少し続けていることは確認していた。

もともとポッコリお腹を気にして減量しようとしていた身としては、むしろ喜ばしい結果だと、リピウスはほくそ笑んでいたのだが。


しかし今朝、洗面所で自分の顔をまじまじと見て、その変化に改めて気づいてしまった。

顔の輪郭自体がほっそりしているのは明白だった。

しかも、問題はそれだけではなかった。


「ほうれい線」が明らかに薄くなり、目の下のたるんだ部分もスッキリと消えていたのだ。全体的に肌の張りが戻り、つやも以前よりずっと若々しくなっている。

……これはどう見ても、年金暮らしの老人の顔ではなかった。


リピウスは毎朝の体重計測を日課にしている。

あの霊体離脱事件前の体重は、78kg。身長162cmを考えれば、かなりの肥満体型と言える。


それが一ヶ月前には76kgに減っていたが、この程度では「少し顔立ちが引き締まったかな?」というレベルの変化でしかなかった。


ところが、あの全身筋肉痛事件を経てから、変化は加速した。


一週間後:さらに2kg減


次の一週間:さらに3kg減


更に次の一週間:さらに5kg減


そして今朝:58kg


つまり、この一週間だけでさらに8kgも減ったことになる。霊体離脱事件前から数えれば三ヶ月間で20kgの減量。この一ヶ月に絞れば、なんと18kgも落ちている計算になる。


ここまでくると、流石にズボンもぶかぶかでずり落ちてしまう。

なにせ腹回りが、以前より25cmほども細くなっているのだ。


痩せたこと自体はそれほど問題ではない。世の中にはスマートなお爺ちゃんなどいくらでもいる。

だが、痩せていても「お爺ちゃん感」は普通残るものだ。皮膚のたるみや皺を見れば、体型にかかわらず年齢相応の感覚は残る。


しかしリピウスの場合、体の細部を見ても全体に張りが出て、明らかに60代の体ではなくなっていた。

恐らく、全体像で見れば「30代前半」程度にまで若返ってしまっている。


もちろんリピウスも、急激な体重減少に若干の懸念は抱いていた。だがこれは体内の余分な脂肪が減少した結果であり、むしろ「伸びきっていた皮膚がたるんで、かえって老けて見えるんじゃないか」という方を気にしていたのだ。


ところが、霊気循環による細胞の活性化は、予想以上に新陳代謝を促してしまった。

皮膚はたるむどころか、若々しく再生し、あふれんばかりの肌つやと張りまで生み出してしまったのである。


「このままじゃ、ご近所を出歩くのもはばかられるよ……」


何とか以前の年齢感を取り戻し、「ちょっと痩せましたね」程度に見られるように調整し直さなければならない。


リピウスは切実に、自分の「若返りすぎた」手を眺めて溜息をついた。

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