<霊力探知能力>
一週間後。またデュークが訪問すると、今日のリピウスは既にコーヒーを淹れる準備を整えて待っていた。
「お! 今日は準備がいいじゃんか」
デュークも嬉しそうにテーブルに着き、香りが立つのを待つ。
コーヒーを差し出すと、リピウスが少し改まった顔で切り出した。
「なあデューク。ちょっと霊力を探知してみてくれないか」
「おう、いいぞ。ちょっと待ってな」
デュークは懐から霊力探知の道具を取り出した。すると、すかさずリピウスから注文が入る。
「今日は半径三百メートルの範囲で、力を絞らずに全て探ってみてくれ」
「ん? なんだ、その辺の一般人も対象にするのか?」
「ああ、その結果を一度見ておきたいんだよ」
「分かった」
デュークが少し道具を操作すると、周囲の反応が映し出された。
「ん? この『15』っていうのが俺かな?」
「う〜ん……そうだな。すぐ隣の『12』がおいらだろうからな。……ってお前、なんだよこれ! 『15』ってどういうことだ。何をやったんだ?」
「ふっふっふ。そうだろう。実は俺、結構できる子だったんですよ」
「いや、お前が凄いのは分かってたつもりだけどさ。この値は、おいらたち霊界人でも滅多に出せない数値だぞ。相当に高いレベルで制御できていないと無理なんだからな」
「そうなのか? まあ、これは制御っていうか……力の巡らせ方を工夫した結果かな」
「なんだよ、漏れるはずの力を自分で使い回してるってことか? それ、とんでもない技術だぞ」
「いや、そこまでは大げさじゃないよ。……うーん、どう説明すればいいかな」
リピウスは、自分なりに掴んだコツを話した。
本来なら体の外へ自然に逃げていってしまう霊気を、もう一度体の中へと循環させる。そして細胞の修復や活性化に使い切ってしまうのだ。
結果として、外へ漏れ出す無駄なエネルギーが大幅に減っている……ということらしい。
「へぇ〜……そんなことができるのか。やっぱりお前、ただ者じゃないな」
「ふっふっふ。これで驚いてもらっちゃ困るよ、デューク君」
「なんだよ。……今日のお前、なんだか少し気味が悪いぞ」
そうデュークが言った次の瞬間。
「うわっ!?」
デュークは思わず椅子から転げ落ちそうになった。
頭の中に、さっきまで見ていた探知機の画面が、より鮮明で立体的な映像となって直接流れ込んできたからだ。
テレビのチャンネルを勝手に切り替えられたような、不思議で、少しだけむず痒い感覚にデュークは頭を振った。
「お、すまんすまん。いきなり送ったらまずかったかな」
「……当たり前だろ! でもこれ、さっきの道具の画面だよな? ん、動いてるのか?」
「それは、俺の『霊力探知』の力で、その道具と同じ範囲を探っている画像なんだよ」
「霊力探知能力……? え、もうそんなことまで出来るようになったのか?」
「はい。出来ちゃったのですよ」
リピウスは少し鼻を高くして、ゆっくりとコーヒーを口にした。
「凄いな……おいらの道具と全く同じ結果を示してる」
「さっきの結果を見て、自分の感覚を調整したんだ。これなら、霊界の基準ともズレがないだろ?」
「そのために、おいらの道具を使わせたのか。……これなら確かに、霊界の数値化と同じに見なせるかもしれない。いや、厳密にはまだ違うかもしれないけどな。おいらはその辺の扱いは知らないから、何とも言えないけどな」
「そうだね。それは今後の課題かな。でも、このくらい分かれば、俺としては十分だよ」
「……何に使うんだよ、そんな力」
「いや、周りに霊気を強く発している危険人物はいないか、とかさ」
「やっぱりお前、誰かに狙われてるんじゃないのか?」
「違うって。ただの安全第一だよ」
「ふ〜ん。まあいいけどよ。……ところでお前、また痩せたんじゃないか?」
「うん、だいぶ体が軽く感じるようにはなったかな」
「変な病気とか、無理してるわけじゃないよな?」
「大丈夫だって。最近は、ますます健康になっている感じだから」
「ならいいけどよ。最近は目を離すと、すぐ変なことを始めるからな」
「分かってるよ。さすがに、あの全身筋肉痛には懲りてるからね」




