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<やり過ぎの結果・・・>

リピウスが新たな挑戦を開始して、三日後のことだった。


「よー! やってるかー!」


いつものようにデュークがリビングに入ってきた。だが、次の瞬間、デュークは悲鳴を上げた。何かが、彼の足首をガシッと掴んだのだ。


「うわっ!? な、なんだ!?」


驚いて後ろに飛び退くと、「うぐっ……」という呻き声が足元から聞こえた。

デュークの足首は解放されたが、そこにはリピウスが、青ざめた顔でつくばっていた。


「な、何してんだよお前!」


デュークは慌てて傍に寄り、リピウスの体を揺すった。

「おい、リピウス! どうしたんだよ、何があったんだ!」


「ぐぎゃああぁぁ〜〜!!!」


リピウスは変な悲鳴を上げて身悶えした。驚いたデュークが手を離すと、リピウスは消え入りそうな声で訴えた。


「た、頼む……。トイレへ、俺を運んでくれ……は、早く……っ!」


「は? トイレへ?」


意味が分からないまま、デュークはリピウスを起こそうとした。だが、指先が触れた瞬間にリピウスが再び絶叫する。


「んぐぅ〜〜!! さ、触らないで! 触られると死ぬうぅ……っ!」


「触るなって……。じゃあどうやって運べばいいんだよ!」


少し考え、デュークは霊力を使ってリピウスの体をそっと浮かせた。


「揺らすな! もっとソフトに運べ!」

必死に訴えるリピウスを、デュークはまるで壊れ物の卵でも運ぶような手つきで操作した。

だが、トイレまでのわずか数メートルが、リピウスには果てしない地獄の行軍に感じられた。


「こ、こうか?」


「もっと静かに……。は、早くぅ〜……!」


何とかトイレに運び込み、デュークはドアを閉めた。すると中から再び凄まじい呻き声が漏れてくる。


「ぐ、ぐ、ぐ……あぎゃああぁぁ!」


デュークも心配になってドア越しに声をかけるが、リピウスは返事をする余裕もないらしい。

やがて静かになり、ジャーッと水洗の音がしてから、ようやく応答があった。


「……デューク、ありがとう。なんとか間に合ったよ。でも、まだ腹がグルグルしているから、しばらくは出られない。勝手にお茶でも飲んで待っていてくれ……」


「大丈夫か? 何か変なもんでも食ったのかよ」


「い、いや……違うんだ。……あ、ダメだ、また来た……。力を入れると……筋肉が痛いんだ……。ぐ、ぐ、ぐ……!」


その後もリピウスはトイレに籠城し続けた。

三十分ほどして、ようやく「また霊力で運んでくれ」とリクエストがあり、デュークはリピウスを椅子までそっとデリバリーした。

その間もリピウスは、一ミリ動くたびに「あいたたた!」「ひぃいぃ!」と悲鳴を上げ、身悶えしている。


デュークが差し出した白湯を飲む手も、プルプルと生まれたての小鹿のように震えていた。


「な、なあ、本当に何があったんだよ……」


一時間以上かけて、リピウスはポツリポツリと事の真相を話し始めた。

……そして、全てを理解したデュークにとって、今度は「笑いを堪える」という地獄が幕を開けた。


「ぷ、ぷぷ……! お前、なんて馬鹿なことを……(ウププ……く、苦しい)……したんだよ!」


「わ、笑うなよ……っ! 本気で、死ぬほど辛いんだから……!」


原因は、先日始めた「全身筋肉強化」の過剰実装だった。

霊気によるEMS的な刺激を全身に与え続けた結果、未曾有の全身筋肉痛に襲われ、身動きできなくなってしまったのだった。


「もう、指一本動かすだけで、全身に電流が走るような激痛が……あ、痛たたた!」


さらに事態を悪化させたのが、急激な「脂肪溶解」だった。

溶け出した脂肪が老廃物として排出される際、腸を激しく刺激し、猛烈な下痢を引き起こしたのである。

トイレへ行こうにも激痛で動けず、リビングの床を転がりながら少しずつ進んでいたところに、デュークが現れた……というのが真相だった。


「あはははは! ダメだ、我慢できん!」

デュークは堪えきれずに椅子から転げ落ちそうになって笑った。あまりにも間抜けすぎる自業自得。


「わ、笑うなって……あいたたた……!」


「お前なあ、俺が来なかったらどうする気だったんだよ!」


「……なんとか、這ってでも行ったさ……」


「でもよ、この後どうするんだ?」


「うん。どうしようね・・・デューク、付き添っていてくれるか?」


「いや・・・困ったな、これ」


その日は遅くまでデュークが付き添い、便意が落ち着いた頃に、リピウスをベッドまで霊力でそっと運んで寝かせてから帰っていった。


そして翌日もまた様子を見に来てくれたが、その時にはリピウスも少しは自力で動けるようにはなっていた。


「デューク、ごめんな。でも、昨日よりはだいぶ痛みも治まったし、腹の具合も戻ったみたいだから、今日はもう大丈夫だよ。本当にすまなかった」


「いいけどよ、少しは自重しろよ。……死神に介護させる人間なんて、初めて見たぜ」


デュークは呆れ顔で帰っていった。


それ以降、リピウスの「人体改造」は大幅な仕様変更を余儀なくされた。

筋肉強化は部位を絞り、一回十分・三セットまで。

脂肪溶解も「極低速」に設定し、体調に影響が出ない範囲で慎重に継続されることになった。

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