<本格的な能力修得へ>
霊気法による治癒効果の影響か、リピウスの体調は日増しに改善されていくようであった。ヨルダ爺の話を聞き、霊気によって具体的な回復効果を得られる可能性を確信してからは、気分もいっそう晴れやかになった。
その好循環のおかげか、体重も二キロほど減っていることに気づいた。
体が健康体へと近づいたことで、基礎代謝が回復してきたのかもしれない。
おまけに、脳細胞の活性化を試みたためか、思考速度や演算速度、さらには記憶力まで向上してきた感覚があった。
そして、二ヶ月近く霊力制御を続けてきた甲斐もあり、今では横になって集中せずとも、普通に行動しながら霊気循環を常時続けられるようになった。
いわゆる「全集中・常駐」の状態である。
歯を磨いている時も、お茶を淹れている時も、意識の裏側では霊気が川のようにサラサラと流れ続けている。
それが当然の習慣になると、今まで重たく感じていた自分の体が、まるで高性能な機械に乗り換えたかのように軽く、扱いやすくなっていることに気づいた。
「よし。単なる制御だけじゃなく、本格的に霊力を使った『能力』の修得にも取り組んでみるか」
元々、妄想の世界では様々な霊能力を想定していた。その中から、隠居生活の安全と利便性を高める「必須スキル」を選定することにした。
まずは、霊力探知能力。
これはデュークがいつも見せてくれていた「霊力探知機」の能力版である。
そもそも、探知機自体が霊能力を参考に再現されたデバイスなのだ。霊界でもポピュラーな能力の一つであり、ヨルダ爺が言っていた「霊力を使える他の五十人」を察知するためにも、早い段階でマスターしておきたかった。
次に、バリア能力。
慎重……というより臆病なリピウスにとって、これは最優先の能力だ。妄想の中では、あらゆる攻撃を弾く多層バリアを駆使する姿を何度も思い描いていた。
そして、外してはならないのが鑑定能力。
もっとも、この能力は相当に難易度が高そうだという認識もある。あくまで「可能であれば」という範疇だが、エンジニアとしては解析の魅力には抗えなかった。
これら以外にも、異世界ファンタジーにおける「三種の神器」とも言える能力がある。
デュークも頻繁に使っていた「ディメンション・ボックス(次元収納)」と「ワープ・ゲート(空間転移)」だ。
これらは時空間系の主要能力だろうとイメージしていた。リピウスに素養があれば、実現可能なはずだ。
さらに「霊気循環」も、新たなフェーズへと移行させる。
体内の修復が進み、違和感が減ってきたため、今度は「積極的な肉体改善」に取り組むことにした。
視力回復: 近視・乱視・老眼の「三重苦」を、細胞活性化によって正常化できないか。
筋力増強: EMS機器のように霊気で筋肉を刺激し、基礎代謝をさらに底上げする。
脂肪燃焼: ポッコリお腹の内臓脂肪を霊気で直接溶かし、排出を促すイメージを描く。
骨・関節ケア: 老化による骨密度の低下を防ぎ、関節痛対策として柔軟性を取り戻す。
「三ヶ月目からは、能力修得の検証と、霊気による健康管理の強化。……これで行こう」
リピウスは、まるで新しいシステムの開発仕様書をまとめた時のように、満足げに微笑んだ。




