<異世界ファンタジー来た~!>
ヨルダ爺の口からいきなり「第4人間界」なんて言葉が飛び出し、リピウスは驚いて聞き返してしまった。
「第4人間界って、俺のいる人間界と同じ神様が創った人間界なのか?」
「おや? リピウスの妄想でも人間界は複数有ると言っておらんかったかな?」
ヨルダ爺は少し頭を傾げてリピウスを見つめている。
「人間界がここだけだとは思ってなかったけど、それって別の神様が創った世界があるっていう意味でさ。この同じ世界の中に、他にも人間界があるとは思っていなかったんだよ」
淹れたてのコーヒーから湯気が立っているのも構わず、リピウスは身を乗り出した。
定年後の穏やかな午後、リビングで聞く話にしてはスケールが大きすぎるが、それがまたたまらなく男のロマンを刺激したのだ。
「ほぉ、そうじゃったか。これはちと、不味かったかもしれんのう」
少しとぼけた風を装うヨルダ爺であった。
「まあ、リピウスなら良いじゃろう。この世界には『第1』から『第4』までの四つの人間界が存在しておるんじゃよ。リピウスが居るここが『第1人間界』じゃ」
「ヨルダ爺、それって禁則事項なんじゃねえのか?」
珍しくデュークが心配そうに聞いてくる。
「禁則事項じゃよ。だが、リピウスなら良いじゃろう。……四つの人間界の違いじゃが、大きくは『霊力の開放度』と『マナや魔素の濃度』の違いじゃ。霊力は第1が0%、第2が30%、第3が60%、第4が80%。開放度が高いほど、マナなどの濃度も高く設定されておる」
「ふ〜ん。じゃあ第4は、霊界と同じような環境になっているってこと?」
「いや、霊界ほどマナ濃度は高くはないが、まあ霊力を発揮しやすい環境ではあるな」
このあとも、ヨルダ爺は第4人間界の概要を話してくれた。
それによると、第4人間界には知的生命体も多様で、人間族以外にもドワーフやエルフといった、ファンタジーでお馴染みの種族も実際に存在しているのだという。
「ドワーフやエルフのように比較的人族に近い者は第3人間界にもおるがの。第4では亜人と呼ばれるリザードマンや獣人族、トレントなどの樹人族等もおるんじゃ。もちろん、魔獣や魔族、魔物といった人間と敵対的な存在も多数おるがな」
「それって完全に『指輪物語』の世界じゃん! いや、それ以上か。異世界ファンタジーの世界が本当に存在するって話だよね!」
リピウスは興奮して早口で捲し立てた。
「そうじゃよ。まさに剣と魔法の世界が、第4人間界の実態なのじゃよ」
「じゃあ、第4人間界では回復魔法とか治癒魔法とかも存在している、と?」
「うむ、そうわしは聞いておる。じゃがわしも第4人間界に行ったのはほんの数回じゃし、実際にその魔法を見たわけではないからの。リピウスが思っているような魔法ではないかもしれんがな」
「でもファンタジーの世界同様であるなら、霊力にも治癒や回復の効果があり得るってことだよね」
「うむ。それは霊界でも一応研究はされておるよ。確か『光属性』の能力だという話じゃったな」
ヨルダ爺はそう言って、少し冷めたコーヒーを飲み干した。
「じゃが、リピウス。おぬしが自分の体で感じたその『心地よさ』。それは理屈を超えて、おぬしの中に光属性の芽があるということかもしれんぞ」
「光属性か……」
リピウスは自分の手を見つめた。リビングに差し込む陽光に透かした指先が、ほんの少しだけ、昨日よりも明るく輝いているような気がした。
「まあ、光属性自体が希少な属性じゃし、霊界では治癒と言えば物理的なものではなく、メンタル、精神的な治療になってしまうからのう。霊界での治癒はマインド系の能力が該当してしまうんじゃよ」




