表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/60

<次の段階>

「今日も元気だ、ご飯が美味い♪」


リピウスはご機嫌であった。昨日デュークに確認してもらった霊気量は、リピウスの予想を上回る好結果だったのだ。

「俺ってやっぱり、できる子じゃん」などと呟きながら、今日も霊力制御の訓練に取り組んでいた。


今日から再び、横になっての訓練を始めている。だが、あのクッションは使っていない。

床の上にヨガマットを敷き、その上に仰向けで寝ている状態だ。

床が硬いため、これなら眠気も起きにくいだろうという算段である。


横になったのには理由がある。今日からは霊気を体に沿わせるだけでなく、体内を含めて循環させようと考えていたのだ。

そのためには、やはり横になったほうがイメージしやすかった。


リピウスは霊気の流れを感じながら、その流れが体内へと染み込み、全身を巡るようにイメージしていく。

体中の血管から内臓、脳、手足の関節……すべてを意識しながら、霊気を循環させる。


しばらく続けると、全身がじんわりと温かくなってきた。


「おほぉー……! これはなんか、気持ちいいな」


目を閉じると、自分の体が一本の透き通った管になったような気がした。霊気が血の巡りと共鳴し、指先から脳の隅々までを、柔らかな光の帯が洗い流していく。

それは、冬の朝に熱い紅茶を飲んだ時のように、体の芯から『生』の充実感が静かに、じわじわと染み出してくるような至福のひとときだった。


さらに神経を研ぎ澄ませていくと、霊気が細胞の隅々まで行き渡る感覚が伝わってくる。

それとともに、心までもが深い充実感で満たされていく。


「あぁ……。霊力に目覚めて、良かったかもな」


リピウスは満足そうに、微かな微笑みを浮かべた。


こうして、さらに一週間の時が流れた。

既に「霊力循環」は習慣になり、リピウスは毎日、時間のある限り取り組み続けていた。

そして、いつもの午後三時。リビングの空間に穴が開き、デュークが姿を現した。


「おーい! リピウス、居るか〜」


呑気な声が響く。その後ろからは、ヨルダ爺も続いていた。

デュークはリピウスが最近座っていた椅子を見るが、そこに姿はない。リビングを見渡すと、窓際のヨガマットの上で寝ているリピウスを発見した。


「あー! お前、また寝てんのかよ!」


「寝てないぞ。ただ横になって訓練してるだけだ」


リピウスは少しムッとした表情で、寝たまま答えた。だがすぐに笑顔で起き上がると、いつものテーブルへと二人を招いた。


「ヨルダ爺、ちょいと久しぶりだね。忙しかったのかい?」


ヨルダ爺は都合が悪かったようで、二週間ぶりの訪問だった。


「おう、すまんな。ちょっと野暮用が増えてしまってのう。訓練の成果は気になっておったのじゃが、一応デュークからも報告は聞いておったぞ」


ヨルダ爺は椅子に座ると、以前よりも元気そうなリピウスの姿を見て、嬉しそうに目を細めた。

リピウスはいつものようにコーヒーとお菓子で二人を歓待する。

二人も当然のようにコーヒーを啜り、お菓子を口に運ぶ。

リピウスにとって、これは実に楽しいひと時だった。

一段落したところで、ヨルダ爺が切り出した。


「デュークの話では、だいぶ制御できるようになったと聞いておるが、その後も順調かの?」


「おう! 絶好調だぜ。今日あたりは、目標の50を切ってるんじゃないかな?」


「ほぉ〜。それは楽しみじゃ。デュークよ、ちょっと確認してくれるかの」


ヨルダ爺の指示で、デュークがすぐに霊力探知機を取り出し、チェックを始めた。


「おおーー! ヨルダ爺、これ見てくれよ!」


デュークが驚きの声を上げ、画面を差し出す。


「ほぉ……。これは、凄いな」


ヨルダ爺も感嘆の声を漏らした。

画面に映ったリピウスの霊気量は「32」だった。


「お前、凄すぎるだろ! 先週から半分以下になってるじゃないか!」


「ふっふっふ。見たかねデューク君。これが『次の段階』に進んだリピウスの実力ですよ」


胸を張るリピウスの手元では、コーヒーの琥珀色が揺れている。どれほど驚異的な力を操るようになっても、誇らしげに笑い、友人に美味しい菓子を勧める彼の人間らしさが、ヨルダには何よりも尊いものに感じられた。


「ほっほっほ。次の段階、かの。それは面白そうじゃのう」


「なあ、『次の段階』って何なんだよ。もう教えてくれてもいいじゃん!」


デュークが不満げに促すと、リピウスは楽しそうに説明を始めた。それを聞いて、ヨルダ爺もデュークも目を丸くした。


「なるほどのう。霊気を体内へ循環させるとは。なかなか面白いことを考えるものじゃ」


「ふ〜ん。おいらたちが義体の中で霊気を循環させて、再利用してるようなものかな?」


「あ! そうか。霊界人も義体の中でそうやってリサイクルしてるんだったな」


「そうだぞ。でも、それって慣れるまでは結構大変なんだぞ。それを独学で、これほど短期間に要領を掴んでしまうとは……。やっぱりリピウス、お前には驚かされるぜ」


その後も三人はお互いの成果を喜び合い、話は尽きることなく弾んだ。

あたたかな陽射しの中、時間はあっという間に過ぎていくのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ