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<おまえ! 何やってるんだよ>

昼食を食べてしばし食休みを取ったあと、リピウスは再び大きなクッションに横になると、霊力制御の訓練を再開した。

霊気の流れを意識して念じ続ける……。

そして、また深い眠りへと落ちていくのであった。


「おーっす! リピウス、来たぞー!」


リビングの空間に穴が開き、そこから呑気そうな顔をしてデュークが出てきた。


「あれ? 居ないのかな?」


リビング内を見渡すと、窓際の床にある大きなクッションの上で、リピウスが気持ちよさそうに眠っていた。


「ありゃ、お昼寝中かよ。あんなことがあったのに呑気な奴だな〜」


デュークは力なく肩を落とし、窓から差し込む午後の穏やかな光を見つめた。人間界の『快適さ』は、時に霊界の厳しい修行よりも恐ろしい誘惑であることを、彼は今、リピウスの幸せそうな寝顔を通じて痛感していた。


口を少し開けて呆けたような表情で眠るリピウス。デュークが近づいて顔を覗き込むと、パチッとリピウスが目を開いた。


「お!!!」

デュークのほうが驚いて、一歩後ろへ飛び退いた。


「はが……あ、デュークか」


半分寝ぼけたような顔をして、リピウスはクッションからクルッと回転するように降りた。

ゆっくり立ち上がると、大きく伸びをしながらテーブルの椅子に腰かけた。


「おいおい、まだ寝ぼけてるんじゃないか?」

デュークもそう言いながら、向かい側の椅子に座る。


「うん。なんか、よく眠れるんだよね。今コーヒー淹れるからね」


リピウスは電気ケトルに水を入れてセットし、テーブルにドリップ用の器具や豆、カップを運んでくる。

以前は豆のまま買って、淹れる直前にミルで挽いていたが、最近はドリップ用に挽いてあるものを買ってきている。それでもインスタントよりは遥かに香りも味もいい。ヨルダ爺もかなり気に入っていた様子だった。


お湯が沸くまで再びテーブルに着くと、デュークが話しかけてきた。


「で、少しは訓練もしているのか?」


「やってるよ。ほら、あのクッションに横になって、意識を集中させてさ」


「ちょ、ちょっと待てよ。お前、まさかクッションに寝そべって訓練してるんじゃないだろうな?」


「そうだよ。横になってやったほうが集中できるだろ」


「いやいやいや、そりゃダメだろう! っていうか、まさかさっき寝てたのも、訓練していて眠ったんじゃないだろうな?」


「そうだよ。なぜか訓練を始めてしばらくすると、意識が無くなるんだよね」


「そりゃ当たり前だろう! あのクッションがなんて言われているか知ってるのか?」


「知ってるよ。『人間をダメにするクッション』だろ」


「あちゃー!」

デュークは自分の額をパチンと叩いた。

「知ってるなら、クッションで横になったらダメだろう。そりゃすぐ眠っちまうよ!」


「そんじゃあ、デュークはどうやって訓練してたんだよ」


「おいらか? おいらたちは坐禅を組んで瞑想だな」


「で、寝なかったのか?」


デュークはしばし考え込んでいたが、

「……まあ、寝たな。毎回、教師にぶっ叩かれてたからな」


「じゃあ、俺と一緒じゃん」


「いや、違うって! お前のは最初から寝る気満々の姿勢じゃねえか。せめて坐禅くらいしろよ」


「うーん……。坐禅はダメだな。体が硬いから、無理に組もうとすると転がってしまうんだ」


「なら普通に椅子でもいいだろうよ。こう、背筋を伸ばして座ってやればさ」


「そりゃ疲れるだろ」


デュークは完全に呆れかえってしまった。

「お前な、修行をしてるんだぞ。もう少しまじめにやれよ。来週にはヨルダ爺もまた来るんだからな」


ヨルダ爺の名前を出されると、流石に「マズい」とリピウスも感じたようだ。

ちょうどそこで、ケトルのスイッチが切れる音がした。


「お、お湯が沸いたからコーヒーを淹れるな」


リピウスはゆっくりと立ち上がると、儀式を執り行うかのように丁寧な手つきで、お湯を注ぎ始めた。

トポトポという規則正しい音とともに、部屋いっぱいに満ちていく深い焙煎の香り。


「修行もいいけど、この香りを忘れるような生き方はしたくないんだよ」


その言葉に、デュークは「お前らしいな」と毒気を抜かれたように笑い、差し出されたカップを両手で包み込んだ。


その後、二人はコーヒーを飲みながらクッキーをつまんだりして、まったりとした時間を過ごした。

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