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プロローグ

この物語が何をゴールに展開されていくのか?序盤の内容では分からないと思い、急遽ゴールを感じさせる物語の発端の話を掲載させていただきました。


序盤は霊力に目覚めた「年金じじ」のドタバタ修行劇が続きますが、それらが全て中盤以降の話に繋がっていきます。

どうか最後までお付き合いいただけますよう、お願いいたします。

今から千年前の天界。


ここは天界の外れにある『夢幻の塔』。

この世のあらゆる情報が揃い、女神アルティア様が創造された世界のすべてが保管されている場所である。


今日もまた、一人の天界役人がお供を連れて、過去の文献調査に訪れていた。


「あ〜……。なんで俺が、あんな下っ端役人のお供などさせられるのだ。こんなカビ臭い塔まで歩かされて、もうウンザリだ……」


お供の男が嘆いていると、目の前の空間に光が凝縮し始め、一冊の本が現れた。


「ん? なんだ? なぜ本が宙から……?」


怪訝そうに男が見守る中、本は中空に留まったまま、勝手にページを捲りだした。

そして、あるページで動きを止めると、あたかも『さあ、お読みなさい』とでも言いたげに、男の目の前まで静かに近づいてきた。


男が開かれたページに目を落とすと、そこには次のような文言が記されていた。


【女神の予言】


人間界の闇が深まりつつある。

天界で己の境遇を嘆く者は、人間界で狂気に憑りつかれた者と出会う。

嘆く者は狂気の者に手を差し伸べ、さらなる狂気へと誘い、悪魔を誕生させる。


長き時を経て、悪魔は嘆く者の支援を受け、大いなる悪魔の軍団を作り上げるであろう。

嘆く者もまた、蝕まれていく人間界を利用し、霊界人の心を惑わし、己の同志を募りつつ、悪魔が立ち上がる時を待つことになる。


人間界の自然が悲鳴を上げる時、自然を愛する者は、人類の横暴に対して警告を発し続ける。

そして、限界に達する前に、人類の秘められし力を開放するだろう。

すべては人類自身の手に委ねられる。


人類が封印されし能力に目覚めし時、悪魔の大王も動き出す。

やがて大王は悪魔の軍団を率いて人類に襲い掛かるであろう。

世界は悪魔の業火に焼き尽くされ、人類は支配を受け、滅亡の道を歩むことになる。


悪魔は人心を惑わし、虚言を広げ、力で全てを抑え込もうとするであろう。

人類は悪魔の家畜として生き、嘆く者は悪魔の支配する人間界の利権を得て、霊界においても覇権を手にする。


すべては、人類の愚かな行動が生み出した結末である。


人類が絶望の淵を覗く時、大いなる救世主が覚醒し、人類の心を一つにまとめんと立ち上がる。

だが救世主の声を塞ぎ、人類の心を惑わし、分断することで、人類は自ずと絶望への道を歩み続けることとなろう。


〜そのもの黒き衣を纏いて、乾いた大地に立つべし。人心を惑わし・引き裂き、怨嗟と嘆きの歌声で、ついに人々を地獄の門へと導かん〜


人類の救いの手は、唯一、人間自身の心と行動にかかっている。

人類が回心し、悪魔にすべてを賭けて戦いを挑むならば、暗雲を吹き払い、光ある未来を切り拓くであろう。


しかし、人類が悪魔に魂を売り渡し、戦いを放棄するならば、悪魔たちの支配は完成し、天界で嘆く者たちもまた天界を統べる力を得るであろう。


最後まで望みを捨てず、戦う心が求められている。


「こ、これは……『女神様の予言書』か? 本当に存在したのか!」


男は何度も文を読み返し、心の底へと刻み込んでいく。

そして、得心したようにニヤリと笑みを浮かべた。その途端、本はパタリと閉じ、ひときわ強い光を放つとともに消え去ってしまった。


「わっはっはっは! やったぞ! これで俺様も、うだつの上がらない小役人から抜け出せる。俺様の時代がやって来るのだ……!」


その後、霊界内には不吉な『予言』が、真実しやかに囁かれ始めた。

それは折しも、霊界内で起こっていた『失業者の増加』に伴う霊界人の不満を激しく焚き付けることとなった。


この男は、予言にある人類滅亡の危機を巧みに利用し、「霊界の危機を招いているのは現体制に問題があるからだ!」と説き、自分こそが救世主であると演説を繰り返した。

その結果、彼は見事に天界評議会議員へと当選し、天界エリートの仲間入りを果たしたのである。


同時に彼は、『影』と呼ばれる闇ギルドのハンターを雇い入れ、人間界の調査を命じた。

『影』は、魔界の忍びと言われる『魔界衆』を使い、人間界の隅々まで探索させた。


そして今から八百年前、ある人物を発見し、議員となった男に報告した。


その人物は、天才科学者であった。

だが、彼の『魂と肉体の蘇生術』という研究テーマは禁忌と見なされ、彼は異端者として学会から迫害、追放されてしまった。

さらに、彼を唯一理解し支えてくれた家族さえも、彼が留守の間に盗賊によって殺害されてしまう。


彼は悲嘆に暮れ、すべてを呪った。

そんな彼の前に『闇の者』と名乗る怪しい男が現れ、予言書の一部を披露して告げた。


「お前の無念を晴らさせてやろう。お前が人類の支配者になり、受けた苦痛のすべてを、全人類に返してやるが良い」


その言葉を聞くと、彼はひどく苦しみだした。

そして――ついに彼は「悪魔」へと生まれ変わった。


激しい怒りと飢えに襲われながらも、生まれたての悪魔は、その強い精神力ですべての欲望を抑え込み、『闇の者』の前に跪いた。


「良し。私に忠義を捧げるならば、必ずや望みは叶えてやろう」


男は一つの悪魔像を彼に手渡した。


「私と連絡をしたい時は、その像を拝むが良い。これからは我々は同志だ。心して忠義を尽くすのだぞ」


そう言って『闇の者』は、文字通り暗闇の中へと消えていった。


一人残された悪魔は、歪んだ笑みを浮かべる。

「グフフフフ……人類は俺様のものか……悪くない。悪くないぞ! ウハハハハハ!」


不気味な悪魔の笑い声が、闇夜に響き渡っていた。


そして、悪魔誕生から八百年の時を経て。

いま、女神の予言が現実へと動き出す。


……時を同じくして、「あまりにも間抜けな爺」の物語もまた、動き始めたのであった。


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