52=13+13+13+13
天秤の傾け方。
「……首尾は上々」
紫煙をくゆらせる。
「植え付けた罪の咎」
指で弾く、1枚のタロットカード。
「狂い咲くのは、もうまもなく」
めくられたアルカナはーーー
コンコンコンコン!
バン!
「デスゲ! デスゲ! まだ! まだ? ヒャッハー、デスゲーム! 開幕マダ〜?!」
ノックの返事も待たずに、上がり込んできた、1人の女。
「……何度も言っているが」
「デスゲーム! デスゲーム! 誰が死ぬかな、誰が死ぬかな? ねえねえ、説明役は? 生贄キャラは? ルールは? 早くしてよ待ちくたびれたよ〜ねぇ〜、もうアタシ我慢できない〜」
ラフなシャツに、Gパン、パンクロッカーのような紫とピンクが混じった髪型。
ジャラジャラしたギザギザのネックレスと蛇のピアス、小柄な身体からわめき続けるキンキン声は相変わらず。
「…………まだだ。まだ、駒は盤上には揃っておらん」
「はぁ? ……てかさ、勿体振り〜! 焦らしすぎ〜! ひょっとしてアンタ遅漏? 嫌われる〜」
女は勝手に戸棚を漁り始め、大事にしまっていたウイスキーのボトルとグラスを手に取り、勝手に封を切る。
「てかさー、進行遅すぎっしょ。グダグダ趣味じゃないから〜。客も帰り始めてるじゃん。感想も無いし〜、ブクマも無いし〜、残った客なんて、よっぽどの物好きなんじゃね?」
机に広げていた書類。
片瀬 水奈の写真付きのプロフィールを指でトントンと叩こうとした時、女の手が伸びる。
「……ぶっちゃけさぁ。このコ。生き残れると思ってんの? 無理っしょ?」
「ルールはねじ曲げられんよ。……全ては本人の生きる意思。本人のエゴ」
しばし、沈黙。
ウイスキーを注いだグラスから、氷がひとつ、カランと。落ちた。
グッと飲み干した女は、ため息、ひとつ。
「……草? あちゃー、そりゃあスパイか。違う違う。えっと、なんていったっけかなぁ〜」
ガリガリと、氷を噛み砕きながら。
「あちこち嗅ぎ回ってる奴がいる。そろそろ、やっちゃう? 消すならアタシが? アタシが?」
ウイスキーを注ぎながら。
「…………何もするな」
「へぇ? ……なんでぇ?」
女が注ごうとしたウイスキーを、奪い取る。
そして、そのままラッパ飲み。
「どうせ、何もできん」
荒い息をひとつ。
葉巻を咥え、ゆっくりと吸い込む。
「……必然なのだ。選ばれたのも、選んだのも」
「………ま、アンタがそう言うなら、任せるわ」
葉巻を吸い終え、灰皿に押し付けようとすると、女の手が伸びた。
そして、そのまま葉巻を握り、ゆっくりと包み込む。そして、グッと力を込める。
「けどね。ひとつ、いい?」
「…………なにをだ?」
女は、据わった目で、言の葉ひとつ。
「お客様は、待ちくたびれているわよ?」
手で握り潰した葉巻を机に置き、荒々しく部屋を出る女。
グーロ、グーロ、ルール、ルール、レッツ惨劇、レッツ惨劇、と、声が聞こえてくる。
それを聞き、ため息、ひとつ。
「…………全ては、アルカナの導きのままに」
部屋の主は消え、残るのは静寂のみ。
ただただ、静寂のみ。
天秤の崩し方。




