団子より趣味
天秤の傾き。
新しいアニメが始まった時は。
新しい漫画の帯をめくった時は。
新しいラノベの表紙絵を見た時は。
難しい小説の挿絵に心を撃ち抜かれた時は。
手が、震えるんです。
ああ、これが目指していた私なんだって。
ああ、これがなりたいと願う私なんだって。
うん。もうなっちゃった。
そうにっこり笑えるのが、ワタシ。
初めて、コスプレを意識したのは……中学2年生の時ですね。
あれは、当時放送していた魔法少女モノでした。
今はちょっと、うろ覚えになっていますけど、たしか、アルバムには残しています。
そう、主人公たちの魔法少女ではなく、敵役。
悪の、女幹部でした。
ムチを……いや、笑わないでください。恥ずかしいです……そうですね。予想通りです……父の使い古したベルトをこっそり持ち出して、鏡の前でピシッと構えていました。
衣装は……恥ずかしいから言いたくないです。
それから、でしたね。
少しづつですが、勉強をし始めたのは。
生地を買う時、値段を気にして妥協したりしたことも数え切れないですよ。
だから、創意工夫したんです。
どうやったら、なりたいワタシに近づけるんだろうって。
沢山、頭を下げて。
もちろん、親切に教えてくれる先輩レイヤーさんばかりで私は本当に運がよかったんだって心からそう、思います。
あの小物は? ウィッグの作り方は?
え、どうやったら良いポーズが取れますか?
厚底靴? ミシン?
疑問点が多すぎて、凝れば凝るほど、先が見えなくなってしまう、恐ろしい世界。
それが、コスプレイヤーの世界なんだと気付くのは衝撃でした。
生活費を切り詰めて、少しでも自由が効く時間が取れる仕事で働いて……休日はコスプレイベントに参加する為に予定を空けて……その合間合間にミシンを走らせて……。
先輩レイヤーさん達の苦労話を絶句しながら聞いているんですが、でもどこか、嬉しそうな。恥ずかしそうな。
そして、少しだけ、誇らしげに。
衣装を見る目が優しく、暖かくなっていることに気付いたのは、少し先のことでした。
……今の私ですか?
…………はい。先輩方のように、とはおこがましいですが、コスプレの為に、苦労して、笑って、日々を過ごしています。
どちらに傾いた?




