4人目。
ここまで来ました4人目。
私の名前は片瀬 水奈。
とあるIT会社の派遣社員です。
とはいっても、やる事は一般的な事務業務。
退屈な作業を終え、いよいよ終業時間。
ショボショボになった目に目薬をさして。
家に帰って。
そして、目覚める。
もうひとりの、ワタシ。
ーーークローゼットを開けばーーー
ーー姿見を置いてーー
うん。今日も絶好調!
ワタシにピッタリとフィットした下着。
手入れを欠かさないウィッグ。
お胸は……元々ないから調整不要!
しっかりと眼帯を着けて。
黒の配色に拘った海賊帽を被り。
きちんとアイロンをかけたタイトなズボンを履いて。
上着とシャツは夜なべして作った小物の宝石、飾りをジャラジャラ着けて。
刀剣専門店で悩みに悩んで買ったサーベルを手に持って。
漆裏地は染物屋さんで厳選した裏地でキメた漆黒のロングコートを羽織れば。
よし、出来上がり!
「はっはっは! ここで会ったが100年目! 野郎共! 準備はいいか?!」
サーベルを掲げるワタシ。
それに応える部下の海賊達の喝采。
ふふふ。はっはっは!
ワタシは、いま、すごく、楽しい!
ーーーー姿見は映す。
彼女の姿を。
ーーーけれど、姿見は映す。
彼女の身長を。
鏡よ鏡。
目の前に映る小さな海賊の頭はだぁれ?
ーーー片瀬 水奈。
コスプレネームは、瀬川 みんと。
大人びた高身長、貫禄があるキャラクターに強い憧れを持つも、天から与えられた身長、142cm。
大きいおともだちが喜びそうなキャラ、魔法少女などのコスプレを要求される、24歳。
それが、私。
それが、ワタシ。
ズキリ。
心臓がノックされる。
…………ああ、やっぱり。
鏡は嫌い。
私の理想を。ワタシの夢を。
クローゼットに入っていた魔法少女の服を掴んで、鏡に投げようとして…………投げられない。そのまま、しっかりと抱きしめる。
なんで?
なんで、こんなにも世界は残酷なの?
ーーーー姿見は応えない。
ーーー映すのみ。
子供の姿にしか見えない、海賊の頭を。
追い求める儚さ。




